第3話 記者会見

皆さま、御静かにお願い致します。まもなくしたら総理がいらっしゃいますのでしばしお待ち下さい。

政府関係者が何か言っているみたいだが、こんな状況で落ち着けと言われる方が難しい。俺達だって、こんな日本いや世界中が大注目する今回の騒動に対してどんな記事にしようか周りの記者も考えているだろう。もちろん、俺も本社で直々に社長と面会して

「今回の緊急記者会見には君に行ってもらおうと思う。」

「え?、私でよろしいのですか?もっと適任がいるかと、」

「真面目で公正でさらに人々を魅了するような記事を書ける君だからこそ任せたいのだ。」

(マジかよ。いや、まさか本社の社長からそんなことを言われるなんて。無理やり面白い所だけを切り取ったり、出待ちしたり、何回も芸能人に突撃しまくったお陰だな。まぁそのせいで色んな人からの罵声や悪口なんて当たり前でなんなら特定までされた、、がようやく俺の頑張りを認めてくれた。)

「分かりました。このスクープを使って今まで見たことのないほどの記事を書いて参ります。」

「うむ、任せたぞ。当たり前だが今回は日本全国を揺るがすほどのビックニュースだ。そのため号外として出すから記者会見後すぐに本社に戻ってくれ。」

「わかりました。では、記者会見に行って参ります。」

そのまま俺は本社から出たのだが記者をやってきて35年の大ベテランになるのだが、こんなに緊張、、、いや胸の鼓動が高まるのは初めてだ。なにせ、今回の緊急記者会見が最後になるかもしれないから、この世紀の瞬間を自分の目で見るかもしれないと思うと今までこの仕事を続けてきてよかったと強く思うわ。

そして、私は近くのタクシーを捕まえて

「首相官邸前まで」

「官邸ですか?今、あそこは通行止めされていますが、、、」

「私は記者だ。だから、早くしてくれ。」

というと、一礼され車は急発進した。


にしても、未だにここが東京なのか勘違いしてしまう。俺が東京に来てから40年、ずーと変わらず栄え、賑わい続けてきたとは思えない光景が広がっていた。あたり一面瓦礫だらけで大量のコンクリート片があちこちにあり撤去作業も未だに始まっていない。向かい側の窓を覗いてみると消防団員や自衛隊が懸命に捜索活動をしていた。隣の女性は涙を流していた。その近くには仮設テントもあり多くの人々が生活を余儀なくしている。そのまま走り続けると一気に多くの人々が現れ道路を封鎖しているようだった。そして、私は彼らと目が合ってしまい直ぐにそらした。昨日のように感じる。一時期あいつらに包囲された時には死んだと思っていたが機動部隊のおかげでなんとか撃退できたのは幸運だったと今更にして感じていた。何せ、うちらの会社は相当ヘイトが溜まっていたからみんな死に物狂いで抵抗した。

そんな思い出したくない記憶を遡っていると


皆さま大変長らくお待たせ致しました。只今より総理による緊急記者会見を始めさせてもらいます。では、総理こちらへ


そういうとい一気にフラッシュとシャッター音が歓迎し始め、私も息を飲むような感じでキーボードに手を置いた。


「、、、日本の国民の皆さん。先月起こった東京大規模デモ闘争についてわたくし首相が政府の代表として公表したああと思います。今回の騒動に対し我ら政府は秘密裏にそのデモの主犯格と会談しそれにより決定したことを話そうと思います。」


「、、、それは、我が日本政府は度重なる災害や少子高齢化による人口減少そして財政破綻間近の事を深く憂慮し、これ以上の領土の管理が難しいと判断したため、ただいまより政府の主権は東京に留め、それ以外の46の都道府県は政府の管理の下自治領として独立することを決定し、」


「以下の事項により我が政府は

"日本"の"解体"を決定致しました。」

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