第7話 厄介な監視者

 

 依頼を受けた放課後。武島に小清水さんから稲生くんの写真が送られてきて、それを俺の方に転送してもらい武島が部活をしにグラウンドへ向かうのを見送った後、俺は手帳を確認しながら教室を出た、んだけれど。



「誰かに用事かな、三木後輩? 呼んでこようか?」

「その呼び方やめて下さいって言いませんでしたか? あと用事があるのはあなたです、先輩」


 なんで仁王立ちした三木さんが待ち構えてるんだろうか? 何故かとっても怖いんだけど、もしかして本物の仁王なのかな? コート上の詐欺師だったりする?


「何か失礼なことを考えてないですか?」

「いえ、全然」


 やっべ、読心も使えるのかよ、強キャラっすね……。



「で、用ってなんだろう? 三木さんだってもうすぐ部活が始まっちゃうんじゃないの?」

「部活には入ってないですね」

「あ、そうなんだ。小清水さんと城野さんが水泳部だからてっきり」

「2人とも中学が同じなんです。ってそれはいいんです。私は先輩を監視しに来ました」


「……はい?」

「監視、警戒して見張ること。また、その人。です」

「いや辞書的な意味は聞いてねえよ」


 何故監視などされなくてはならないのか? が論点だよ。


「だって先輩は、やはり怪し過ぎます。監視の目は必要でしょう」

「いやだなあ、俺の何処が怪しいって言うんだ。こんなに怪しくない人は何処を探しても中々見当たらないよ」

「高校生で自分のことを探偵とか言ってる所が怪しいです」

「前 提 条 件! そこを突いたら話が終わるから!」


 そこを突いたらタイトルが変わっちゃうだろ! そこ抜いたら俺に主人公張れる要素がかなり薄くなっちゃうんだよ! ただの落とし物探す男だと外聞が悪いの!


「いくら紹介を受けたとはいえセクハラの件もありますし、信用なりません。ですがここで断るのも問題ですし、私も七海ちゃんから500円を預かってきた以上それを渡さない訳にもいきません」


 ああ、前金の500円を預かって来たのが当初の理由な訳ね。そういえばさっき三木さんの乱入で有耶無耶になってたもんな。


「じゃあそれを早く渡してお帰り下さい」

「話を聞いていましたか? 先輩に不安感、あるいは保安官があるんです」

「急に語感だけで話すな、保安官は呼ばなくていい。じゃあどうしろと?」

「ですから最初に言いました。監視です。先輩の捜査に同行させてもらいます」

「もしかして君こういうの結構好き? 表現が調子乗ってるときの俺にそっくりなんだけど」


 捜査とか同行とかの言葉遣いがとっても似てるポイント高いね。


「先輩と一緒にしないでください。不快、あるいは深追いです」

「深追いされて困ってるじゃん」

「とにかく! これは既に決まりました。連れて行って下さい。可愛い後輩のお願いですよ」

「学年が下なだけで後輩って言われるのは違和感あるけどね? あと今までのド塩対応で可愛い後輩に表現繋げるの無理がない?」


 いや三木さんは可愛いとは思うけども。それとこれとは別ではないのだろうか。


 ……というか。皆さんはご存知かと思うのだけど、俺こと由布鑑は霊能探偵なので、情報収集の手段が霊への聞き込みなんだけど。これを一般の方の前でやった場合、展開される光景は虚空に話しかけてメモを取る男という通報待った無しの図なわけで。そういう条件を辛辣とはいえ、学校で一番長く喋った可愛い後輩(現在記録更新中)に見られるのはキツいというか。だからってそれ封印して捜査しても俺単体だと実力は、並ちょい上くらいだから、それも不信感を持たせる原因になるだろうし。


「なんでしょう、何か見られて困るようなことでもあるんですか」


 あります。


「……んー。まあいいか。今日は初動捜査だし、ついておいで。ただし、守秘義務を守ること。それと俺のやり方に口出ししないこと。守れる?」

「先輩がおかしなことをしないなら、私が何かするようなことはありません。それと守秘義務を守るのは当然の事です」

「やっぱ君そういうの好きだよね」

「うるさいです」


 俺、しーらね!  ケ・セラ・セラなんとかなるさ! 上手いことなるでしょ!


 考えることをやめた俺は、三木さんを引き連れて校内を捜査することにした。最初は女子トイレでも行くかぁ!

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