第3話 彼女の圧
そして、時は流れて放課後である。俺、由布鑑は既に校門前に陣取って小清水さんと武島の2人を待っていた。
武島と俺は同じクラスなので本当は一緒に来ればよかったのだが、アイツには人気者という設定が一応あるので、運動部の連中がだいたい暇になった今日なんかは、いろんな人からのお誘いが多い。捕まって時間がかかりそうだったので仕方なく置いてきた。この先の戦いについてこれそうにないし。
「あ、いた! 由布お前、置いていくのは酷くない!?」
「うるっさいな、人気者様。デス次元送りにするぞ」
「デス次元送り!?」
デス次元。爆〇バトルブローラーズ第一期における、闇のゲーム的なバトルのギミック。爆〇にとっての死を意味する何もない空間のこと。バトルで負けた爆〇が送られたりする。一応伝えておくがこの先デス次元についての知識は必要ないし別にデス次元について詳しく解説する必要もどこにもない。
「なんだよ、嫉妬かー? 心配するなって! 俺の親友は由布だって」
「親友じゃないし、今回の件はお前がついてきただけでしょうに。キモいこと言うな」
「そんなこと言うなよなー」
「陽キャの肩組みの奴!」
お。生産性のないくだらない話を武島としてると校舎の方から小清水さんがやってくるのが見えた。小清水さんがわかるように、軽く手をあげると、ちゃんと見えたらしい彼女はこっちに向かって走ってきた。
「ごめんねー、待った?」
「咲良ー! 全然待ってないよぉ、なあ?」
「まあな。っていうかお前が答えるんかい」
……全然態度ちがーう。いや、俺も流石に武島と小清水さんとでは態度が違うけどね。今回君らのデートじゃないからね? 武島、お前がおまけってことわかってる? 俺じゃないよ?
「設定上人気者の武島が人につかまって時間取られるぐらいだからな。そりゃあ小清水さんもそうだろ。時間もあるし問題ないよ」
「設定上!? っていうか由布はそこで待ってないよって言えないからモテないんだぞー!」
「やかましいわ。あと小清水さんが来てからテンション高くてキモいからちょっと離れてもらっていい?」
「今日、ずっと辛辣だよね!?」
「ふふっ、大丈夫だよー。ありがとう。……でも司くんもいるんだ?」
「小清水さんが他の男と二人なのが嫌なんだってさ。愛されてますねえ」
「えー、ほんとう? 嬉しいなあ」
「ちょっt、そういうのいわなくていいの! もう、ここいても目立つし、早く行こうぜ!」
……武島が照れてる。そういう需要ないサービスするのやめろよな。
ま、とはいえさっさと行くのは賛成だ。今もチラチラ見られてるし。
この2人目立つしなあ。……この2人が付き合ってるの、どうやって隠してるのか検討つかないんだけど、本当にバレてないんだろうか。
「ほら、由布も咲良も早く行こうぜ! 俺も明美さんに会いたいし」
「は?」
「えっ」
「えっ」
なんか今、小清水さんからすごい怖い声聞こえなかった? 武島と2人で鳩がガトリング食らったみたいな声出ちゃったんだけど。仲良しみたいじゃーん。……いやこれ現実逃避だな。小清水さんスッゴイ顔でこっち見てるもんな。見るっていうか凝視してるもんな、魔眼とか使える?
「……明美さんって誰?」
怖ー!! 文章で伝えきれない『圧』がやべーもん! 早く答えろよ武島!! お前の彼女だし、お前の台詞だろ!!??
「あ、えっと、その……」
ダメだァー!!! テンパってやがる、コイツこの土壇場でビビりやがった!! え、これ俺がどうにかするの? ヤダよ俺ここに介入するの! 武島、お前はこっちチラチラ見んな、助け求めてくるのやめろマジ!
「えっと、あの、明美さんっていうのは今回お世話になった人で、俺の情報提供者の一人なんだ。これからお礼しに行こうと思ってて。武島も初めて俺に依頼した時に小清水さんと同じで明美さんの情報が直接の手掛かりになって、お礼しに行ったんだ。だから知ってるんだよ」
言ったぞ! 感謝しろよマジで!
「そうそう、久々だからな! お世話になってるから挨拶しときたかったんだよ!」
「……ふーん」
……どうだ? ダメ(死)か? セーフ(生)か?
「そっか! 女の人の名前だから勘違いしちゃったよー」
セーーーフ! っていうか勘違いだけで命賭ける必要(誰もそうだとは言ってないけど)あるの!? 女の子と付き合うのって怖! それなら俺、彼女いらないんですけど!?
急に学年一の美少女が般若に変わるアハ体験をさせられて、現代日本でそう感じることのない命の危機を感じた俺は武島に小声で文句を言った。
(武島、お前の彼女怖いんだけど! 学年一の美少女じゃないのかよ!)
(バッカ、そこも良いんだろうが!)
(お前、ビビり倒してたじゃん!)
「2人とも、早く行こうよー。ワタシニモアケミサンショウカイシテ?」
「「ウィッス」」
まだ怖いです。
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