私的人間学

Tukisayuru

私的人間学

 私は人間だ。

 それは客観的にも主体的にみても私のことを人間だと思い、人間に見えるだろう――。朝に起きて、ご飯を食べ、昼を過ごし、夜には帰り、娯楽に塗れ、そして眠る。それぞれの生活が若干異なるだろうが、大抵こんな感じだろう。そして私はこのような生活を毎日行っている。一日だけでは無い、こういう日が特別じゃない。今日もそうだし、明日もそう、明後日も昨日も行事が無い日常的な生活は、ほとんど同じである。

 さらに私は日常を過ごす中で一々、思考し考えて行動してる訳では無い。歩く時や扉を開けるなどの時はほとんど無意識で行われているような気がする――。しかし周りからは、私の行動は余り疑問視しない。これが普通の生活なのだろう。

 しかし私は動物だ――。

 悪魔でも動物なんだ。犬、猫、鳥、虎、魚と同じ種類の中にいる。同じ動物ですが私は金を稼ぎ、一目を気にして行動して、夜には不安や孤独を感じて、遂には泣いてしまい、泣きつかれて寝てしまう。そんな毎日だ。やりたいこと、やるべきこと、やらなければならないことを日々、更新してしまい最善策の選択をいつも取っている。 この繰り返しで一日、一週間、一カ月、一年という時間が過ぎている。別に苦じゃない。痛い思いもしないし、安定した生活を送れてる。だけど時々、この状況に慣れてしまう私がいた――。

 だけど自然界に生きている、彼らは違う。食欲を満たすときは、目標を定め、狙い、走り、捕らえ、貪る――。睡眠欲を満たす時は、自分の陣地に戻り、明日に備え堂々と眠る――。自分の縄張りに入ってきたら、躊躇無く追い払い。生きる為に度々、死闘もする事がある。

 これらの行動には、私は尊敬し脱帽さえしてしまう。

 彼らには金という概念が無い。私のように服を着る必要が無いし家は自分で設定出来る。私たちはそれを満たしてないと、軽蔑な目で見られたりするが、彼らは、その条件を満たしていないのに、むしろ堂々としている。自然に住み、家族を持ち、生きている。何も恐れず、怖がらず、その姿は『強さ』を象徴してる――。

 その証に私はひどく心を惹かれてしまう。自分がこの世界にいる理由、この世界での目的、自分が何者か。迷いが無い、それは知性などという概念はない。本能のままに従い行動してる。

 今の私にはこれが足りないものだと痛感する。しかし、ここまでの大きな差がある。

 同じ生物の動物として私は酷く赤面をした。

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