59

「まあ、私から教えても良かったんだけど、せっかく今日は家にお母さんがいるし、お母さんから教えてもらったほうがいいかなって、そう思ってさ」

 いつもののはらに戻ったのはらが笑顔で言う。

「うん。別にいいよ」

 のぞみさんが言う。

「よろしくお願いします」ちょこんと頭を下げてさなぎが言う。

「そんなにかしこまらないでよ、さなぎちゃん。そんなに大したお話じゃないんだからさ」

 笑顔のままでのぞみさんが言う。

「えっと、じゃあ、お話するね。私たちが幸せになる方法についてのお話」

 そう言いながら、のぞみさんは真っ白なソファのさなぎとのはらのいる真ん中のところに強引に「ちょっとどいてね」と言いながら座ってきた。

 それからのぞみさんはさなぎを見ながら「まずはその一、あんまり怒らないこと」とにっこりと笑いながら言った。

「あんまり怒らないこと」

 さなぎは言う。

『ふんふん。怒らないこと。なるほど』

 さなぎのポケットの中で妖精さんが小さな声でいう。

「そう。怒らないこと。普段、生活をしていて、日常の生活の中で、ああ、私はなんて不幸なんだろう? とか、どうしてこの人はこんなことを私にしたり、言ったりするのだろう? とか、どうして私はこんな(求めているものとは違う)生活をしているのだろう? とか、まあ、いろいろとあると思うんだけど、とりあえずは怒らないこと。これが幸せになるためにまずは基本になる生きかた。あるいは方法だね」とのぞみさんは言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る