54 のはらを探して
のはらを探して
ピアノの演奏が終わると、のぞみさんはにっこりと笑った。
さなぎは小さな拍手をした。
「どうもありがとう」
のぞみさんは言った。
それからのぞみさんはピアノの椅子から立ち上がると、部屋の窓を開けて、外の風を部屋の中に入れる。(それはとても気持ちのいい風だった)
「とても素敵な演奏でした」
さなぎは言った。
「そんなこと言ってくれるのはさなぎちゃんだけだよ。のはらは私のピアノの音、褒めてくれたりしないもんね。もっと小さいころは、ちゃんと褒めてくれたのに」
さなぎの隣にいるのはらを見てのぞみさんはいう。(のぞみさんはさなぎの頭を優しく撫でてくれた)
「だって、子供のころから聞いているんだよ。今さらすごいとか別に言わないよ」のはらは言う。
「今の曲はなんていう題名の曲なんですか?」さなぎはいう。
のぞみさんが弾いていた曲はとても大きな感動を(先ほどの贅沢で素敵な時間と風景と一緒に)さなぎの中に残していた。
さなぎはその曲の題名を聞いて、あとでお父さんにお願いしていつでも自分の家の中でも聞けるようにしたい、と思った。
「今の曲は『のはらを探して』と言う題名の曲なの」
とのぞみさんは言った。
「のはらを探して?」
さなぎは自分の隣に座っているのはらの顔を見る。(のはらはいつの間にか、その両足をソファーの椅子の上に乗せて、体育座りのような座りかたをしていた)
さなぎのことを見返しているのはらの顔は、なぜか真っ赤な色に染まっている。
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