45

 予定よりも帰る時間が少し遅い時間になったので、さなぎとみらいはのはらだけじゃなくて、のぞみさんにも森の外まで送ってもらうことになった。

 のぞみさんが一緒にいるので、妖精さんはずっとさなぎの洋服(今日はオーバーオールのお腹のところにある大きなポケットの中)に隠れていた。

 そこにいる妖精さんとこそこそとさなぎがおしゃべりをしていると、「さなぎちゃん。誰とお話しているの? なんだか小さな声が聞こえるような気がするんだけど」とのぞみさんがさなぎを見てそう言った。

 のぞみさんとさなぎは手をつないで歩いていた。(最初、さなぎはずっとみらいお姉ちゃんと手をつないでいたのだけど、途中でみらいは自分からさなぎの手を離してしまった。そんな風景を見て、寂しがっているさなぎの手を「今度は私と手をつなごうか、さなぎちゃん」と言って、のぞみさんが握ってくれたのだった)

「あ、えっと……」

 困ったような顔をしてさなぎは言う。

「妖精さんとお話ししてたんでしょ? さなぎ」

 二人の前をのはらと一緒に歩いていたみらいが後ろを振り返ってそう言った。

「えっと……」

 恥ずかしそうにして、その顔を真っ赤にしながらさなぎはいう。

「妖精さんって、誰?」

 みらいの隣を歩いているのはらがいう。

「私たちの目には見えないさなぎの秘密の友達だよ、のはら」にっこりと笑ってみらいはいう。

 そんな言葉を聞いて、さなぎは一人で下を向いてしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る