44

 みらいがのぞみさんとのはらとお花のお話をしている間、さなぎは妖精さんと一緒にお花畑の中を探索しながら遊んでいた。

 妖精さんはさなぎに『さなぎちゃん。あっちにいってみましょう』とか、『今度はあっち。ほら、あそこにとても綺麗な花が咲いていますよ。なんていう名前のお花なんでしょうね? 気になります』とか言いながら、とても楽しそうにさなぎの頭の上でぴょんぴょんと跳ねていた。

 そうしてさなぎがお花畑の中で遊んでいると遠くから「さなぎー! 帰るよ!!」というみらいお姉ちゃんの声が聞こえてきた。

 さなぎが頭を上げて声のしたほうを見ると、そこにはみらいお姉ちゃんとのぞみさんとのはらさんが三人で一緒に立って、さなぎのことをじっと見ている風景があった。

「うん。わかった」そう言って、さなぎはそんな三人のところまで駆け足で戻っていった。

 時刻は夕方。

 もう、世界はいつの間にか、夕焼けの色に染まり始めている時刻だった。

『夕日が綺麗ですね』と妖精さんが言った。

 さなぎはそのまま、走ってみらいお姉ちゃんの胸に飛び込むようにして抱きついた。

「ちょっと、どうしたの? さなぎ」とみらいは言う。

「あらあら」ふふっと笑ってのぞみさんは言った。

 さなぎは黙ったまま、みらいお姉ちゃんに甘えるようにして、その体を離さなかった。

「さなぎ。寂しかったの?」さなぎの頭を撫でながら、みらいがいう。(妖精さんはのぞみさんがいるので、さなぎの服の中に隠れていた)

 でも、さなぎはいつものようになにも言わずに無言だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る