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「森の向こう側のお隣さんか。その辺りまでは引っ越しのご挨拶には行ってなかったね。失敗したかな?」
笑顔のままでノートパソコンを操作しながらお父さんは言う。
「仕方ないよ。のはらは小学校では見ない顔だし、たぶん違う小学校に通っているんだと思う。それくらい遠いところにいるお隣さんだもん」みらいは言う。
「お母さんは木原のぞみさんだよね。のぞみさんにも、ちゃんとあってお礼を言わないといけないね。さなぎはお世話になりましたって」
お父さんは話しながらもノートパソコンのキーボードを打つことをやめない。
「さなぎ。お風呂。はいろっか? 今日は一緒にはいようよ」
空っぽになった晩御飯のお皿を洗いながらみらいがいう。
「お姉ちゃんと一緒にお風呂? お父さんとじゃなくて?」
同じように洗いものを手伝っているさなぎがいう。
「うん。別にいいでしょ? それにさなぎ。さなぎはもう十歳なんだから、お父さんとお風呂に入るのはやめなさい」とみらいお姉ちゃんは言った。
「え?」
すると、ノートパソコンを打つのをやめて、お父さんがそう言ってみらいとさなぎのいるキッチンの洗い場のところを見る。
するとみらいはそんなお父さんのことを見返して、「当然です」とでも言いたげな顔をした。(お父さんはとても悲しそうな顔をしていた)
「わかった」とさなぎは言った。
「じゃあ、洗いものが終わったらお風呂に入ろう」とにっこりと笑ってみらいは言った。
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