33

「はい。さなぎ。あーん」

 そう言って、みらいは自分で作ったオムライスをスプーンですくうと、さなぎの口の前に笑顔で差し出してくれた。

「えっと、ありがとう。お姉ちゃん」

 そう言いながらさなぎはそのオムライスをきちんと一口で食べた。

「どう? おいしい?」

 にっこりと笑ってみらいは言う。

「うん。いつも通り、すごくおいしい」さなぎはいう。(その言葉は嘘ではなかった。さなぎは(お父さんもだけど)みらいお姉ちゃんの作ってくれるご飯が本当に大好きだった)

「よかった」とみらいは言った。

 それからみらいは今度は自分の分のオムライスをスプーンですくって一口食べる。

「うん。おいしい」

 みらいは言った。

「二人とも。今日はすごく仲がいいね。なにかいいことでもあったの?」とお仕事から帰ってきたお父さんがオムライスを食べながら二人に言う。

『本当ですね。なんというか、微笑ましい、いつまでも見ていられるような風景ですね』とふふっと笑いながら妖精さんが言った。

 さなぎは今、いつものようにお父さんみらいお姉ちゃんと一緒に木登家のキッチンにいる。

 そこにあるテーブルに座って、みらいお姉ちゃん(とお父さん)が作ってくれた晩御飯を食べていた。

 今日の献立はオムライスとサラダ。それにコーヒー(さなぎとみらいはミルクで割ったもの)だった。

 みんなの晩御飯はあっという間になくなった。

 お父さんはお仕事で疲れていたようだし、さなぎも森でいっぱい遊んで疲れていたのか、すごくお腹が空いていた。

「いいことはあったよ。お友達ができたの」とさなぎは言った。

「ああ、確か木原さんのところの、のはらちゃんだったよね。そうなんだ。よかったね、さなぎ」とにっこりと笑ってお父さんは言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る