15 ねえ、私たち、友達になろうよ。

 ねえ、私たち、友達になろうよ。


「起きて、起きて、さなぎちゃん」

 ゆっくりと揺さぶられる体と、そんな優しい声を聞いて、さなぎはうっすらとその目を開けた。

「……お母さん?」とさなぎは言った。

「お母さん? 違うよ。私。のはら。木原のはらだよ。さなぎちゃん」

 見ると、そこにはのはらがいた。

「あれ? のはらさん? どうしてのはらさんが私の家にいるの?」

 寝ぼけたまま、さなぎは言う。

「ここは私の家だからだよ。さなぎちゃん」

 くすっと笑いながら、そんなことをのはらは言った。

 だんだんとさなぎの意識が(はっきりと)眠りの中から、覚醒していく。なんだかとても幸せな夢を見ていた気がする。

 でも、その夢はもう消えてしまった。どんな夢を見ていたのか、その夢のことを、今のさなぎは、ほとんどなにも、もう覚えてはいなかった。

 それから次第に今の自分の現実を思い出して、さなぎはその顔をだんだんと真っ赤に色に染めていった。

「ご、ごめんなさい! のはらさん!」

 とすぐに正座の姿勢になったさなぎはそう言って、頭を下げてのはらにあやまった。

「ちょっと、さなぎちゃん。なんでそんなにあらたまって私にあやまるの?」とくすくすと笑いながらのはらは言う。

「えっと、あの、ちょっと勘違いをしてしまって」とさなぎは言う。

「私とさなぎのお母さんのことを?」のはらは言う。

 のはらにそうはっきりと言われて、さなぎはその顔を本当に(のはらの切ってくれたスイカの色みたいに)真っ赤な色に染めた。

 それからとても小さな声で「……はい」とさなぎはのはらにいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る