9
「二人とも、見つめあって、どうかしたの?」
不思議な顔をしながら、のはらは言った。
さなぎはいつの間にか、その視線を二人の握っている手と手から、自分を見つめている優しいのぞみさんの目にうつしていた。
「あ、え、えっと、あの、ご、ごめんなさい!」
なぜかわからないけれど、さなぎはそう言って、のぞみさんにあやまった。
「ふふ。別にあやまることではないわ。さなぎちゃんはなにも悪いことしてないもんね」とにっこりと笑って、さなぎの頭を麦わら帽子の上から、もう一つの手で優しく撫でながら、のぞみさんはそう言った。
それからのぞみさんは「少しやらなくちゃいけないことがあるから、ごめんね」と言って、家の奥に戻っていった。
「わかった」とのはらはいう。
さなぎはそんな去っていくのぞみさんの後ろ姿をただ、黙ったままじっと眺めていた。
「はい。どうぞ」
そう言ってのはらは冷たい麦茶をさなぎに出してくれた。(麦茶の入っているコップは透明な竹の模様が描かれているコップだった)
森の中を歩き回っていたさなぎは(全身に)汗をびっしょりかいていた。
「どうもありがとう」
そう言ってさなぎは麦茶をごくごくと(両手で透明なコップを持って)飲み干した。
「あら、ずいぶんと喉が乾いていたのね」と笑いながらのはらはいう。
「美味しい」とのはらを見て、目を大きく見開いて驚いた顔をしているさなぎはそう言った。(本当に美味しかった。この麦茶には、喉が渇いている以外の理由があるような気がした)
「水が違うのよ」と(自慢げな顔をして)のはらはいう。
「この麦茶。もしかしてさっきの井戸の水を使っているんですか?」とさなぎは言う。
「そうよ。この家で使っている水は全部、井戸から汲み上げた地下水を使っているの」とのはらはいう。
のはらは自分のために用意した透明なコップ(のはらのコップには笹の模様が描かれていた)の中に入っている麦茶を一口飲んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます