その綺麗な女の人はどうやらのはらのお母さんのようだった。

(のはらが「ただいま。お母さん」と言ったので、さなぎにはそれがわかった)

「うん。そうだよ。さっき友達になったばかりの子なの。名前はさなぎちゃん。年齢は私の一個下で、あっちの森の向こうに住んでいるお隣さんなんだって」

 とサンダルを脱いで、縁側に上がってから、のはらは言った。

「えっと、初めまして。木登さなぎと言います」

 緊張して、硬い声で、さなぎは深々と頭を下げながら、そう言った。そんなさなぎを見て、ふふっと笑うと、のはらのお母さんは「そんなに緊張しないで、さなぎちゃん。初めまして。のはらの母の木原のぞみです。のはらと友達になってくれてどうもありがとう。これからものはらのこと、よろしくね。さなぎちゃん」と言いながら、その右手をさなぎに差し出して、のぞみさんはそう言った。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 そう言いながら、頭をあげたさなぎは、真っ赤な顔をしながら、ぎこちない動きでのぞみさんの手をぎゅっと握った。

 その瞬間、とても温かいのぞみさんの手を握って、さなぎはなんだかとても不思議な気持ちになった。

 その自分の気持ちがどんなものなのか、自分でもよくわからなかったさなぎは、そのまま、じっと長い時間、自分の手と自分の握っているのぞみさんの手を見つめていた。

 その間、なにも言わないで、のぞみさんは(優しい目をして)さなぎの次の言葉を待ってくれていた。

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