第38話 どうであれ、結論はひとつしかない

 どうしたらいいのか。正解のわからない幾通りもの答えがぐるぐると脳内を駆け巡る。……だが、まずはどうしてもはっきりさせておきたいことがあり私は口を開いた。というか、最重要案件だ。


「……うーん。とりあえず、私と殿下の婚約が成立したのなら、私は通りに聖女をイジメていいってことよね?でも魅了の力かぁ……。その力は魔族と契約して手に入れたってところかしら。でもかなりの代償が必要なはず……あぁ、色々と方法はあるわね。ーーーーまぁ、それはそれとして確かに魅了すれば簡単だけどそれじゃ真実の愛っぽくないから、婚約破棄までの間にその力なしで殿下と愛を育んでくれますか?の事はしょうがないとしても、やっぱり最後の世界のハッピーエンドは特別じゃないと!どのみち今までのテンプレとはだいぶ違ってきちゃってるから、それならいっそ完璧なハッピーエンドにしちゃいたいわよね!最初はちょっとショックだったけど逆にこれだけ悪いところだらけなら正当なイジメができるわ!は作法とか殿方にくっつきすぎとか……特に面白みのないイジメしか出来なかったからやっと私もイジメが出来るのね~っ!あぁっ……これで私も念願の本当の悪役令嬢になれるんだわ!殿下!婚約してくれて本当にありがとうございます!婚約破棄まで頑張って聖女と浮気してくださいね!


 そうだ!どうせだから聖女の魅了の力は使えなくするわね!うっかり使っちゃったらせっかくのこの世界のラストが台なしだし……。あ、体の中にあるその宝石が魔力の源かぁ。うんうん、大丈夫!出来るだけ痛くないように取り出すし……ちょっとくらい出血してもで聖女は絶対に死なないから!」


 未だ気絶しているヴィンセント殿下に笑顔を向けてーーーーなぜか顔を真っ青にしている聖女に視線を定めた。


「……え、な、なにあんた……。え?ど、どうして……」


 震える手で自身の胸元の服をぎゅっと掴む。ちょうど心臓の真横ーーーーには、魅了の力を放つ魔力塊である宝石が埋まっているのだ。


 指先も、声も、瞳すらもガクガクと激しく揺らした聖女がその揺れる指先で私を指差す。何をそんなに怯えているのだろうか。私は聖女と殿下の仲を応援しているだけなのに。んーーーー、確かにちょっとムカついてるかも?だけど。だって、魅了の力を使うなんてルール違反だもの。だって私は聖女の“真実の愛”を応援していて、その真実の愛の力によってヴィンセント殿下が幸せになれると信じて繰り返して来たのだから。


「え、嘘……。まさか……、あんたが、けn」


「ーーーー初めてあなたに会った時はお互い子供だったけれど……の顔、忘れちゃった?まぁ、それは別にいいけどの権力を笠に着たいなら、せめて私の願い通りに頑張ってね!ループしてようと魔族と通じてようと関係ないわ。ヴィンセント殿下を幸せに出来るならばーーーー」


 私は聖女に向けてにっこりと笑顔を向けてから……その胸に腕を突き立てたのだった。

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