第36話 よくわからないまま話が進むんですけど?!

「おっと、セクハラは禁止だよ!」


「ぐぇっ?!」


 急に私を抱きしめてきたヴィンセント殿下だったが、ユーキさんに首根っこを掴まれてぶん投げられた後は目を回して気絶してしまった。……それにしても、一体何だったのかしら?


「あ、あの……ユーキさん?なんで私の婚約届を?それに、殿下はどうしたんですか?」


「ん?まぁ、入手経路は企業秘密ってことで。そんで、そこの王子は……ちょっと悪どい呪いにかかってたからさ。エターナとの婚約を成立させれば、エターナの呪いの方が強いからなんとかなるだろうと思ったんだよ」


「の、呪い?!いえ、別に私は殿下を呪ったりは……いやまぁ、確かにあの婚約届に呪い的っぽいのは仕込みましたけど、決して聖女との恋愛を邪魔するような事はしてませんよ?!」


 指を顎にあててニヤッと決めポーズをとったユーさんの言葉に思わず反論する。私は殿下の幸せを応援しているのであって本当のお邪魔虫になる気はないのだ。そう、あくまでも当て馬!私は殿下と聖女の恋のスパイス的な悪役令嬢になりたいのだから!


「ふはははは!そんな事情はボクには関係ないよ。まぁ、いいじゃないか。これでエターナは王子と婚約が成立したし、王子は聖女の魅力の呪いから解放されたんだから。あの聖女とやら、王子どころかボク達にまで魅力の呪いをかけてきてたから鬱陶しかったんだよね。というか、異性限定の呪いをボクにかけてくるなんてとんだ節穴だと思わないかい?」


「み、魅力の呪い?まさか、聖女が……?!」


 とんでもない事を聞いてしまい戸惑う私に対してユーキさん以外の2人は「やっぱりね」と肩を竦めた。


「そう言えば、なんだかチクチクした攻撃を受けていたような気がします……。ちょっと痒くなってしまいましたよ。あれが魅力の力なんですか?不快でしかありませんでたが」


「あー、確かにチクチクしてたな。なんかこう、アレルギー反応みたいなやつ。しかし師匠にまで仕掛けていたなんて……なんて命知らずな」


「しかも抵抗し続けると生命力を削られる強力なやつだよ。ボクには効かないけど。そんな呪いをかけてくるなんて聖女とやらも性悪だね。まぁそんなんわけで抵抗に抵抗を重ね続けていた王子は寿命を削ってまで魅力に抵抗してたんだよ。体調不良に運気低迷……あのままだったら確実に早死にしてたよね。そんでもって、そんな魅力の呪いを跳ね除けるエターナの呪いもまたすごいよねって話だよ」


 まさかの話に呆然としていると、さらに3人は盛り上がっていく。ユーキさんはなぜそんなに楽しそうなのか。ちなみに殿下はまだ気絶したままである。


 そんな中、聖女は殿下に振り払われたのがショックだったのか座り込んだままだった。そんなうつむいたまま微かに震えている聖女にユーキさんが口を開いたのだが……。





「と、いうわけでーーーー呪いを弾かれた気分はどうだい?せ・い・じょ・さ・ま」




 なんかこう、ユーキさんの方が悪役みたいに見えるのはなんでかしら?





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