第7話 ライナー・バルディア
リッドが出て行ったあと、ライナーは長いため息を吐いていた。
「はぁー……リッドはまだ6歳だったはずだ。なぜ、あんなにしっかりした受け答えが出来るのだ? 人が変わったようだ」
ライナーは行政の為に帝都に行くことも多い。
その為、屋敷での子供達の様子などは帰って来た時にガルンやメイド達から報告をもらっている。
今までのリッドであれば、荒れている、手が付けられない、等だった。
今回の報告書には庭で倒れた後から、目覚めると人が変わったように大人びたというのだ。
「私も驚きましたが、何かをきっかけに人が変わるというのはあるものです。リッド様の場合、ナナリー様が魔力枯渇症を発症された時。そして、今回の庭で倒れられたことが何かのきっかけになったのかもしれません」
ガルンの言葉にライナーは目を瞑り考えに耽った。
リッドは聡明な子供だった。
絵本などの内容はすぐに理解出来ていたし、人の感情にも敏感で察しも良かった。
将来を期待された子供だった。
だが、ナナリーが魔力枯渇症を発症してから間もなく、リッドの聡明さは消えた。
粗暴で荒れた性格となりライナー、ガルンともに手を焼いていた。
今後、どうしていくべきかと悩んでいたところだったので、リッドの性格が落ち着いたのは良い方向に考えるべきだろう。
だが、もっと大きな問題がある。
ライナーは目を開くとおもむろに言った。
「……メルディをメルと呼ぶか。よいな。私もメルと呼びたい……」
「呼べばいいではないですか。恐らくお喜びになると思いますよ。」
「馬鹿を言うな。私の顔でメルと呼ぼうものなら、メルディが泣いてしまうではないか……」
実はライナーはとても家族思いである。
ただ、それを前面に出してしまうと侮られてしまうほか、弱点として家族が標的になる確率が高くなってしまう。
その為、普段から出来る限り厳格に努めている。
特に辺境という立地は、隣国と接している国境が多い。
弱点が狙われるのはままあることだ。
「……リッドの言う通り、確かに朝食と夕食ぐらいは共にしても問題はないか…… よし、明日より朝食と夕食は子供達と食べるぞ」
「はい、そのように周知しておきます」
ライナーはガルンの返事を聞くと、手を止めていた書類作業を再開するのであった。
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