【WEB版】やり込んだ乙女ゲームの悪役モブですが、断罪は嫌なので真っ当に生きます【書籍&コミカライズ大好評発売中】
MIZUNA
第一章
第1話 プロローグ
「神田先輩、仕事終わりました~?」
座り続けてずっとパソコン作業をしていた俺は、聞きなれた声で呼ばれたのと同時に「うー……ん」と体を伸ばしてから笑みを浮かべて答えた。
「ちょうど終わったところだよ」
明るい笑顔で声を掛けてきた彼女は職場の後輩で、俺同様にゲームやアニメが好きでよく一緒に雑談をする仲である。
ちなみに、俺の名前は「
「お疲れ様です、神田先輩。そう言えばずっと聞きたかったんですけど、お勧めしたゲームやりました? クリアできましたか?」
「あぁ、この間のやつだな。乙女ゲーだけどシステムが結構面白くて、すぐにやり込んで全クリしたよ」
少し自慢するように俺が話すと、彼女は驚きつつもおどけた様子で答えた。
「おお~、さすが神田先輩。あのゲーム、乙女ゲーなのに戦闘とか領地開発とかの評価がやたら高いんですよねぇ。ストーリーがおまけって感じですから、神田先輩が好きだと思ったんですよ」
「はは……乙女ゲーなのにストーリーがおまけっていうのはどうかと思ったけどな」
彼女から紹介されたゲームは『ときめくシンデレラ!』略して『ときレラ!』と呼ばれるゲームだ。
だけど当初は、「俺が好きなゲームは地道にコツコツとレベルを上げるやつとかだから、乙女ゲームには興味がない」と一旦断った。
しかし、彼女はめげずに『ときレラ!』を推してきたのだ。
「このゲーム、ストーリーがおまけで他の要素が本編って言われているゲームだから、神田先輩に絶対お勧めですよ。一回、騙されたと思ってやってみて下さい!」
なんて言われたので、一度くらい乙女ゲームもしてみるかと思ってやってみることにしたのだ。
だけど彼女の言う通り、想像以上にゲームシステムが面白かった。
結果、俺は悔しくもはまってしまう。
ストーリーはタイトル通り、こてこての『シンデレラストーリー』だったのだが、途中に挟まるキャラ育成や領地開発の要素が楽しい。
頑張って全クリ(フルコンプ)すると、育成、領地開発、領土拡張、領土戦、ダンジョンなど様々な要素が楽しめるフリーモードが解放される。
おまけにそのフリーモードをやり込まないと倒せない隠しボスまで出てくるのだ。
「確かに、君の言う通りシステムは俺好みだったよ。男キャラを攻略するのはなかなか大変だったけどね……」
「ふふ、それも楽しみの一つですよ。そういえば隠し要素のフリーモードをやり込まないと倒せない隠しボスいましたよね。私は諦めたんですけど、あれも倒したんですか?」
「はは、勿論倒したけどかなり大変だったよ。乙女ゲーであの難易度は拘るところが違うよね」
俺は苦笑しながら後輩とゲームの話を続けた。
「ときレラ!」でフリーモードが本編と言われる所以はこの隠しボスにある。
乙女ゲーらしく全体的な難易度は低いのでサクサク進められるのだが、何故か隠しボスだけは異常に強くて普通にプレイするだけではまず倒せない。
何せボスと対峙した際、一定以上の強さが味方にないと戦闘開始直後に問答無用で戦闘不能にさせられるのだ。
しかも、その時に使う敵の技名には『貴様達は私の前に立つ資格はない』と表示。
プレイヤーを挑発してくる仕様となっており、インパクトが絶大だ。
今でも思い出すだけで、初見殺しされた時の驚きで笑いがこみ上げてくる。
「そうですよね。私としてはもう少し本編の主人公たちに光を当てて欲しかったかなぁ。悪役のルートがあっても良かったと思いますしね」
彼女は腕を組みながら「うんうん」と俺が言った言葉に同意するように頷いている。
「俺はおまけ要素ばっかりやったから本編は流す程度だし、その辺はあんまり気にならないかな」
その後も色々なゲームの話で盛り上がっていたけど、退社時間をとっくに過ぎていることに気が付いた。
「あ、そろそろ退社しないと怒られるな」
「本当ですね。じゃあ、続きはまた明日にでも話しましょうか」
「そうだな。じゃあ、明日は俺のお勧めを紹介するよ」
「え、本当ですか。ふふ、楽しみにしていますね」
そう言うと俺と彼女は、楽しい雰囲気を惜しみつつ話を切り上げて帰ることにした。
「じゃあ、先輩お疲れ様でした~」
「ああ、お疲れ様~」
彼女と会社の前で別れてから、帰り道の信号が青になるのを待っていると『ドクン!』といきなり胸に凄まじい違和感が走った。
「なんだ……?」と思ったその時、また強い衝撃が胸の中から『ドクン!』と響く。
同時に息が苦しくなっていき、胸に締め付けられるような痛みが走る。
痛みに耐えかね、服の上から胸の部分を手で掴むがどうにもならない。
俺は気づくとその場で膝から崩れ落ちて倒れてしまう。
周りからは、誰かの悲鳴や声が聞こえる気がするけどわからない。
やがて胸から衝撃が収まったが、比例するようにどんどん目の前が暗闇に染まっていく。
これって、死ぬ感じなのでは? と思うと同時に俺の意識はなくなった。
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