11 ……私、まだ頑張れるかな?

 ……私、まだ頑張れるかな?


 春がきて、古風先生は海沿いの町の高校に転勤をした。

 乙女は高校三年生になり、今まで以上に本格的に受験に向けて勉強を始めた。 

 纏と誉くんは高校最後の夏の大会で全国大会に出場する夢を叶えた。

 二人は共に地元にある同じ大学に進学する予定だった。

 乙女はもともと成績も良かったのだけど、古風先生に告白してから(そして、思いっきり振られてから)なにかふっきりたかのように、今まで以上に勉強に集中することができた。

 そのおかげで、目標の東京にある難関の大学の受験に合格することができた。(本当によかった。久しぶりに泣いてしまった)

「いた」

 包丁で指を切ってしまい、乙女は言った。

「ちょっと、大丈夫? 大学に合格して、気が緩んでいるんじゃないの?」もう、という顔をしながら、隣に立っていたお母さんが言った。

「そんなことで本当に一人暮らしできるの?」

「大丈夫だよ。大丈夫。ちょっと指切っただけだよ」と(小指をおさえながら)乙女はいう。

 それから乙女は小指の手当てをして、その指に(久しぶりに)包帯を巻いた。

「これでよし、っと」

 しっかりとまかれた小指の包帯を見て、乙女は言った。

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