第38話 ソロモン海戦

  アメリカは日米和平から新たに、5隻の正規空母を主体に、

  軍艦等を建造していた。

  5隻の空母は、以前撃沈された空母と同じ名前の、エンタープライズ、

  ホーネット、ヨークタウン、サラトガ、ワスプと、名付けられていた。 


  F・J・フレッチャー中将率いる第11任務群(旗艦:空母サラトガ)、

  T・C・キンケイド少将率いる第16任務群(旗艦:空母エンタープライズ)

  F・C・シャーマン少将、N・スコット少将率いる第18任務群

  (旗艦:空母ワスプ)であったであるが、このアメリカ艦隊の、

  ある程度の詳細な情報は、工作員により日本側に知らされていた。


  日本艦隊に近寄る潜水艇があった。

  海軍暗号によりフーヴァー旗下の工作員達であることが、判明した。


  山本を始め、晃司達は彼らと綿密に作戦を練り、海戦に備えた。

  そしてミッドウェイ作戦と同じく編隊を組み、南雲忠一中将率いる、

  第一航空艦隊を先頭に、山本五十六大将の主力部隊が続き、日本海軍

  連合艦隊は広島港から、ソロモン諸島の海域に侵攻したのである。


  日本艦隊はアメリカ艦隊の、およそ100浬北に展開した。

  (1浬およそ1.85Km)

   

  空母2隻を含む日本艦隊が、北300浬に居るとの報告を受けた、

  アメリカ艦隊第7任務部隊の F・J・フレッチャー中将は、

  航空機を発進させるにはまだ早いと判断して、

  各員待機の命を出した。

  しかしこの報は、事前に工作員によって、レーダーの照準を

  変えられた工作員直々の、観測員たちの偽の報であった。


  1943年8月27日午後、南雲忠一中将の、第一航空戦隊

  (赤城(あかぎ)、加賀(かが)、山口多聞少将の第二航空戦隊

  (蒼龍(そうりゅう)、飛龍(ひりゅう))田中頼三少将の

  第三航空戦隊(翔鶴(しょうかく)、瑞鶴(ずいかく))の

  第一航空艦隊は、頃合いをはかり以下の航空機を発進した。


    赤城:零戦17機、艦攻27機、艦爆18機

  

    加賀:零戦14機、艦攻28機  


    蒼龍:零戦10機、艦攻24機、艦爆24機


    飛龍:零戦19機、艦攻18機、艦爆18機


    翔鶴:    艦攻18機、艦爆3機


    瑞鶴:零戦26機、艦攻14機、艦爆27機


    零戦86機、艦攻102機、艦爆90機、合計実に278機に、

    及ぶものであった。

    (艦攻:艦上攻撃機、艦爆:艦上爆撃機)


  第一航空戦隊艦橋にいた健司、第二航空戦隊艦橋にいた誠一の

  指示にもより的確に、全機発進を終えた各戦隊は、残り12機の

  直掩(ちょくえん)機(零戦)を残すのみとなった。


  8月27日晩、第61任務部隊旗艦サラトガに、敵攻撃機発見、距離至近の

  報が流れた。

   

  予測外の敵機発見の報を受けた、フレッチャー中将は、叫んだ

  のであった。


フランク・J・フレッチャー 「またしてもはめられたのか、どういう

              ことだ!」

   

  そんなことを考える暇も無く、この日本軍機に対処しなければ

  ならなかった。

   

  フレッチャー中将は、全戦闘機を緊急発進させ直掩にあてた。

  しかしその発進時、全機の1/3程が甲板上で攻撃を受け、

  戦闘不能となった。

   

  そのとき第61任務部隊の観測員をはじめとする、フーヴァー旗下の

  工作員の姿は無く、すでに潜水艇により、アメリカ艦隊を脱出して、

  アメリカ本国に帰投して行っていたのであった。


  フレッチャー中将はすぐに悟った。


フレッチャー「そういうことか、事前に日本軍とフーヴァーは内通して

       工作員まで送り込んでいたのか。

       おのれフーヴァーの売国奴め、生きて帰ったら地獄の

       底に叩き落としてやる!」


  アメリカ艦隊は、かねてより晃司と打ち合わせていた、

  フーヴァー旗下の工作員による偽の情報により、日本軍が

  ソロモン諸島には、中国のにらみもあり、兵力を分散させ

  なければならないと考えていたため、この時期3隻の空母を

  含む第11,16、18任務群の第61任務部隊のみが、この海域に

  展開していたのである。

   

  そして赤城にこの報がもたらされた。   


南雲忠一「どうやら敵はこちらの思惑にはまった様だな。

     岡本少佐、君の根回しが功を奏した様だな」


岡本晃司「うまく行ったようですね。後は、このまま敵艦隊を

     殲滅するだけですね」


  日本軍の零戦は息つく暇もなく、アメリカ軍戦闘機に襲い掛かった。

  これは多勢に無勢、ランチェスターの第二法則に乗っ取れば、

  その理屈は明白であった。

  瞬く間に、零戦はアメリカ軍戦闘機を殲滅した。


    ランチェスターの第二法則、別名、兵力二乗の法則:

    戦闘終了時における生存人数

    自軍が勝つとした場合、戦闘終了の敵の生存人数をcとして、

    自軍をaとおき敵軍をbと置いた場合に

    c=√a^2-b^2で表される。

    一次法則における戦闘終了時における、生存人数は戦闘開始時の

    両軍の人数の差により決まるのに対し、二次法則の場合の

    生存人数は、戦闘開始時の両軍の人数の、自乗の差によって

    決まることになる。

    二次法則では戦闘開始時の人数が自乗で効いてくるため、

    一次法則に比べ、人数の多いほうが大幅に有利になる。

    例えば、仮に白兵戦において、10人対8人が正面衝突して、

    戦闘を行った場合、少ない方の8人が全滅した時、多い方の10人

    だったのが生き残る人数は、√10^2-8^2=√100-64=√36=6で、

    6人が生き残る。


  そして、日本軍の各航空戦隊の艦攻、艦爆隊はまず3隻の空母に

  襲いかかった。特に司令官フレッチャーの乗る、サラトガに

  攻撃は集中した。

  日本軍艦爆の急降下爆撃により一発がサラトガの艦橋に直撃し、

  艦橋は吹っ飛んだ。

  更に甲板に四発の爆弾が命中しサラトガはVの字に折れついに、

  沈没した。

  フレッチャー中将は、移乗する暇もなく戦死したのであった。


  エンタープライズ、ワスプ両空母は、アメリカ航空隊による

  日本艦隊への攻撃のための、雷装、爆装は、艦内等で誘爆を

  起こし炎上した。

  エンタープライズとワスプはこれにより抵抗力を全く失った。  


  エンタープライズは艦攻により左側面に大きく穴を明けられ、

  浸水して大きく左へ傾き沈没確実となった。


  ワスプも艦攻により右側面に大きな穴が明き、そこから浸水して、

  船体は大きく右へ傾き、逆の左側面へ急降下爆撃により側面が

  陥没し両方から浸水して沈没した。


  キンケイド少将、シャーマン少将、スコット少将は、

  戦艦ノース・カロライナ、重巡サンフランシスコ、

  ソルト・レイク・シティに、移乗したがこれもあえなく撃沈。

  

  キンケイド少将は、駆逐艦ベンハム、シャーマン少将、

  スコット少将は、軽巡洋艦サン・フアンに移乗した。

  

  日本軍航空戦隊は攻撃の手を緩めず、結局空母サラトガ、

  エンタープライズ、ワスプ、戦艦ノース・カロライナ

  重巡ポートランド、サンフランシスコ、ソルト・レイク・シティ、

  軽巡アトランタ、駆逐艦バルチ、グウィンを撃沈、

  駆逐艦グレイソン大破、モーリィ中破したのであった。

  生き残った三少将は戦死したフレッチャー中将に、敬礼した。


  損害はアメリカ側;空母3隻撃沈、戦艦1隻撃沈、重巡洋艦3隻撃沈、

           軽巡洋艦1隻撃沈、駆逐艦2隻撃沈、

           駆逐艦1隻大破、駆逐艦1隻中破

       日本側:航空機損害軽微であった。

  

    晃司は、中国の内戦の件から、ここまでの思案を、

    一花と胡桃に話していたのであった。  


南雲「岡本少佐、今回も我々の完勝だったな。ムッソリーニの件から

   始まって、今回の、フーヴァーの工作員との提携がここまで

   計算づく、だったとはな」


晃司「今回も、日本に限らず、アメリカの人々と色々な人の助けがあって

   出来たことです、南雲長官」


南雲「しかし、君の作戦いやもう策略だな、ここまで読んでいたとはな、

   これはもう史実ではないんだろ?」


晃司「ええ、確かに史実とは全く違いますが」


南雲「恐れ入ったよ、君には」


晃司「恐縮です、南雲長官」


南雲「これは山本長官や永野総長を通して、海軍省に行く詳細な書面を

   私から書かなければならないな」


晃司「ありがとうございます」


南雲「今後も君の、いや渋野大尉も含めて、君たちの手腕に期待している」


晃司「全力を尽くします」


  こうしてソロモン海戦は日本側の一方的な勝利で終わったのであった。

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