第37話 海戦直前

山本五十六「これからアメリカとの、戦いが始まる。お前たちは、園田中尉と

      井上少尉の所に、行ってこい」


岡本晃司「いいんですか?これからすぐにでもアメリカとの闘いが

     始まるというのに」


渋野忠和「そうですよ、いつ大和はここを出航するかわからないんでしょ」


山本「だからすぐ帰って来い、二人とも」


晃司「わかりました、午後になったらいつも通り、すぐ出ます」


忠和「情況をを伝えたら、すぐ戻ってきますので」


山本「分かった。では午後になったら、行ってこい」


    午後になってから晃司と忠和は、大和を出て、

    海軍兵学校へ向かった。

    そして海軍兵学校の一花と胡桃の寝室の中、4人は話をした。

    晃司と忠和は、一花と胡桃に、今の現状について話をした。

    

    忠和は今回の中国の内乱も、晃司が主に考案したものであり、

    これから、晃司と忠和は、トルーマン下のアメリカ海軍に、

    立ち向かうため、出立することも告げた。

    

    そして今回の件は、もっと深い思慮の上に立っている策略で

    あることも含めて。

    ただしこれは内密にと言って。

    

    しばらく4人は会話をしてから、またそれぞれ

    元の任に就くために戻った。


井上胡桃「一花、あんたの男すげえよ。政略的な策略、いやもう陰謀と言っても

     いいくらい、それを含めればこの類は私の彼でも歯が立たない」


園田一花「そんな和美、陰謀なんて言い方やめてよ」


    胡桃は少し間を空けたが、一花に正直に言った。


胡桃「ごめん、ちょっと悔しかったのよ」  


一花「胡桃も渋野さんのことが、本当に好きになったんだね。

   何だか、こっちまで嬉しいよ」


    胡桃はこれに対しても、一花の優しさに、少々嫉妬したのだった。

    実は一花も、胡桃の自分自身に、素直になり切れるところを、

    うらやましいとも思っていたのであった。


    晃司と忠和は大和に帰還した。


晃司「長官、ただいま戻りました」


忠和「いつもながら、遅くなりました」


山本「色々言ってきたのだな」


晃司「はい、長官、今回の中国の件も言ってきました」


忠和「我々の作戦である事は口外しない様に、言ってありますので

   大丈夫です」


山本「そうか、あの2人なら問題ないだろう。そうだ晃司、

   次の戦いに備えて、指していけ」


晃司「分かりました」


山本「今日も藤井が熱を出してこれないが、渡辺がいる。

   あいつも呼ぼう」


晃司「僕が渡辺中佐を、呼んできましょうか」


山本「うむ、それでは頼む」


    晃司は渡辺を見つけ、山本が待っているので、作戦室に一緒に

    行くよう言い、二人で作戦室に着替えて入った。


山本「来たな、明日晃司は赤城へ移る。だから今日の内に指しておくぞ、

   渡辺」


渡辺安次「そうなんですね。じゃあ長官、今日はまず、私と岡本少佐から

     指させてください」


山本「いいだろう、俺は見ておくぞ」


渡辺「よし行くぞ、岡本少佐!」


晃司「どうぞ渡辺中佐。それにしても私と指すとき、いつもの様に

   振り駒は、渡辺中佐の方が先手番になりますよね」


渡辺「俺に文句を言わないでくれ、岡本少佐。

   振り駒なんだから文句は無しだ」


晃司「とは言え私は渡辺中佐相手の時は、先手後手どっちもそんなに

   苦にしませんよ」


渡辺「先手番をとれなかった負け惜しみだな。それにしても憎たらしい

   言い訳だ」


晃司「いえいえ、ほんとですよ、渡辺中佐」


渡辺「今度こそ俺が勝ち越してやる!」


晃司「またこの一局も、分からなくなりましたね」


渡辺「うーん難しいなあ、しかし相変わらず強いじゃないか、岡本少佐」


晃司「そう言えば渡辺中佐、私がいない間、地元の祖父と指してきましたが、

   80過ぎた祖父に、負け越してしまいましたよ」


渡辺「ほんとにか?80過ぎて、そんなに強いのか。若い頃どれだけ

   鍛えたんだ、君の爺さんは」


山本「若い頃の晃司の爺さんと、藤井とやらせてみたいもんだぞ」


渡辺「ほんとだ、そんな対局一回見てみたいな。しまった、その手を

   見落としていた」


晃司「ちょっと不利でしたが、これでだいぶこっちが

   楽になりましたよ」


渡辺「くそぅ、俺の負けだ。もう一回だ、岡本少佐」


山本「俺にも指させろ、渡辺」


渡辺「もう一回指させてくださいよ、長官」


山本「後で指せるだろ、先に俺だ。お前はそこでよく見ておけ、渡辺」


晃司「じゃどうぞ駒をふって下さい、長官」


山本「うむ、お前の先手か、こい、晃司」


晃司「長官相手には、知ってる戦法しか指さないですよ。行きますよ」


山本「うーん、そこで外してきたか」


渡辺「外した?どういうことですよ?長官」


山本「いいじゃないか、お前と藤井が居ない時、序盤の研究を

   してるんだ、晃司とは」


渡辺「ほんとに山本長官と岡本少佐が指したら、なんか綺麗な独特な

   形になりますね」


山本「どうだ定跡みたいだろ、渡辺」


渡辺「ほんと、これ色々二人の感想戦聞いたら、プロに売れるんじゃ

   ないかって、思ってしまいますよ」


山本「それで金儲けもいいな。特許とっておこうか、晃司」


晃司「長官のお名前で、とって頂いて結構ですよ」


山本「そうはいかん、俺とお前の名前を付けてもらわないとな」


渡辺「ほんとに自信たっぷりですね。一体どこからこんな戦形

   作れるのかと思いますよ」


山本「まあいいではないか、渡辺、もし特許が通ったらお前にも

   細かい変化を教えてやる」


渡辺「楽しみにしてますよ」


山本「あそこで、かなり悪くしてしまったな」


晃司「こうなれば、こっちが結構有利になりましたね」


山本「くそぅ、負けてしまったか。よし次、渡辺行け」


渡辺「よっしゃ来たー」


    3人は深夜過ぎても、将棋を指していたのであった。


    翌日、晃司は赤城に移り、忠和は飛龍に移り、

    戦いの準備をした。

    1943年8月下旬、来る新たな海戦の為、夜に南雲忠一中将率いる

    第一艦隊が広島港を出航した。

    更に次の日、大和は主力部隊旗艦として、広島港を出航した

    のであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る