第35話 団欒(だんらん)

    晃司と忠和は、海軍兵学校へ到着して、時間を合わせて、

    一花と胡桃の寝室へ向かった。


岡本晃司「トントン・・」


園田一花「はーい」


    晃司と忠和は一花と胡桃の寝室に入った。


晃司「戻ったよ、一花」


渋野忠和「帰ったよ、胡桃」


井上胡桃「忠和さん!」


    胡桃は忠和にいきなり抱き着いた。

    一花も晃司にそうしたかったが、胡桃に先を越されてしまったため、

    同じ様にするわけにもいかなかった。


一花「お疲れ様です、晃司さん。ご無事で何よりです」


晃司「心配いらんよその辺は、一花。4人集まって、色々話そう」


一花「そうですね。胡桃、集まって話そ」


胡桃「そうね、団欒(だんらん)しましょ、忠和さん」


忠和「そうだね、色々話そう」


    4人は部屋へ集まり団欒した。


晃司「今回も結構史実通りやったよ、また一花の知識が役立ったよ。

   永野総長や伊藤次長にはそのことを言っといたけどそれを

   公然と一花の昇進の理由にする事はできんもんねえ」


一花「いいんです。どの道今の所女性将校は士官までしか許されてないんで。

   でもそうだったんですね、お役に立てて良かったです」


忠和「違う所と言えば、特には幽閉されたムッソリーニを、イギリス本国に

   送ったくらいかな」


胡桃「やっぱりムッソリーニを、拘束したんですね」


晃司「そうやね、ドイツ軍は名目が無いまま、イタリア北部を占領

   していたけど、ドイツ国内や軍部内でもこれ以上戦いを

   続ける意味があるのか、疑問に思う者も増えて、軍、国民とも

   その士気は、次第に低下していったんやけど、

   これを俺らは狙ってたんよ」


一花「それをお考えだったんですか、勉強になります」


胡桃「女性士官の教育に、使えますよ」


忠和「具体的な作戦なんかは、言わないでね、秘密裡にね」


一花「そうですね、晃司さんと渋野さんの事も、なかなか言う訳には、

   いかないですしね」


胡桃「でもどうせなら、私たちも実戦に出たいですよ。お二人の権限で

   私たちを、現場へ連れて行ってもらう様、進言していただけませんか?」


晃司「現在の女性士官の、主な赴任先は補給部隊となっているから、

   殊更女性将校が実戦に出る必要はないよ」


胡桃「そうですか。ちょっと残念ですが、我慢します」


一花「出来れば、お二人がどういった作戦をとったのかと、

   今の現状を、お聞きしたいのですが」


晃司「ええよ、それは」


    晃司と忠和は、一花と胡桃に、二人の考えた作戦と、現在の詳細な

    世界情勢について語った。


一花「ほんと色々勉強になりますよ」


胡桃「お二人の昇進に関してはどうなったんですか?」


晃司「忠和は正式に、大尉に昇進したよ。俺は海軍省からの

   連絡待ちやけどね」


胡桃「そうなんですか!おめでとうございます、忠和さん」


忠和「ありがとう、胡桃。ただ園田さん、今回は晃司自身、甘くないと

   言ってるけど、俺からも軍令部には、二人して考えた作戦だって

   強くおしてるから、海軍省の方でも、もし見送られたとしても、

   かなりの実績になると思うよ」


一花「そうなんですね、ありがとうございます、渋野さん」


晃司「まあ海大に行けと言われるんも面倒やし、これ以上

   あんまり出世するんもなあ」


一花「海大に行かずに、将官までなった人物は、いっぱいいますから

   大丈夫かもしれませんよ」


胡桃「そうですよ、岡本さん」


忠和「そうだぞ、晃司。山本長官に晃司は必要だから、手放すわけには

   いかない様に、俺からも言っておくぞ」


晃司「ありがと、でもあんまり偉くなるのもなんやしなあ」


忠和「お前がそんなだったら、俺も張り合いが無くなるじゃないか、晃司」


胡桃「そうです、忠和さんのためにも出世して下さい、岡本さん」


一花「もう胡桃ったらあ、ごめんなさいね、晃司さん」


晃司「ええよ、まあ自分なりに頑張るわ」


一花「決して無理はしないでくださいね。これからは史実と違う事が、

   多くなってくるんですよね」


晃司「ムッソリーニをイギリスに送ったことで、結構史実とは

   違ってくるやろうね」


胡桃「そうなりますよね、これからの世界はどうなって

   いくんでしょうか」


忠和「それはまだ、はっきりわからないけど、俺たちはドイツを

   降伏させるまでは、史実がそれなりに使えるんじゃないかって、

   見ているんだよ」


一花「そうなんですか、でもそれも少しずつずれていって、ドイツが

   降伏したら、その後は史実が全く使えなくなるんですよね?」


晃司「まあそうやね、それでもやらんことにはだめなんよ。

   なんせ今回の事で、山本長官に俺ら、奇想天外常勝の岡本晃司、

   堅牢堅実不敗の渋野忠和なんて、異名をつけられてもたからなあ」


一花「奇想天外常勝の岡本晃司、堅牢堅実不敗の渋野忠和ですか」


胡桃「奇想天外常勝に、堅牢堅実不敗なんて、かっこいい!」


晃司「つける、長官も長官やなあ」


忠和「あれで流石の黒島首席参謀にも、少しねたまれた感じだったよ」


一花「黒島首席参謀がねたむなんて、流石に困りますね」


晃司「そうなんよなあ、まあ黒島首席参謀のことやから、すぐ

   忘れてくれると信じてるけどね」


胡桃「黒島首席参謀って、史実では何考えてるか分からない様な、不気味な

   雰囲気に伝えられてますけど、実際は明るい感じですよね」


忠和「会った事あるの?胡桃」


胡桃「一度、一花と大和には、行って山本長官と宇垣参謀長と黒島首席参謀

   には、挨拶してきましたよ」


忠和「そうだったのかあ、それは聞いてなかったよ」


一花「私も連合艦隊の方では、その3人にしかお会いしてませんけどね」


晃司「いずれ他の人たちにも会えればいいけどね。で君らの方はどうなん?」


一花「養成の方は順調に行ってますよ。牛尾実験所のほうはマイクロ波の

   評価が高くて、いずれ実戦投入したいと言う事です」


胡桃「特許もちゃんと通ったし、印税の方もその権利が二人に

   発生しましたよ」


忠和「それはよかった。早く実戦投入出来ればいいんだけどね」


晃司「女性士官、下士官の養成の方は順調なんやね。それももう

   心配なさそうやなあ」


一花「これからどんどん、人数が増えていくと思いますけどね」


胡桃「望む所よ、これからはこの世界も女の時代よ。まず女性教官の

   数から、増やしてもらわないとね」


忠和「そうだね、この世界も女性の社会進出が必要で、また顕著に

   なっていくだろうね」


晃司「いずれにしても喜ばしい事や、まあ俺らは今日はこれで失礼するわ」


忠和「そうだな、そろそろ行こうか」


一花「おかえりなんですね。なんのおかまいも出来ず、すみません」


晃司「いいよ、またくるわ。んじゃ今日はこの辺で」


忠和「それじゃ、二人とも」


    晃司と忠和は、海軍兵学校を後にして、大和への

    帰路についたのであった。


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