第32話 大西洋の情勢と前哨戦

    晃司と忠和が帰還して、更に一週間ちょっとが過ぎた頃、

    イギリスから作戦の準備が出来たため、日本が準備が出来

    次第、海軍を派遣するように、申し出があった。

    

山本五十六「俺は日本の防衛にあたらなければならない。この作戦には

      南雲忠一中将を日本海軍司令長官とし、高橋伊望中将、

      岩村清一中将を差し向ける。

      晃司、忠和、お前達も、もちろん今回は選出するわけだが、

      お前達は南雲中将の旗下にはいり、旗艦赤城(あかぎ)へ

      搭乗しろ」


岡本晃司「わかりました」


渋野忠和「了解しました」


晃司「やはり今回は、山本長官は参加されないんですね」


山本「俺も行きたいのはやまやまだが、やはり危険が薄くなったとは

   言え、中国の動きもあるし、更にはオーストラリアからも、

   目を離せないから、日本を離れる訳にはいかん。

   緊急の事態にも対処せねば、ならんからな」


忠和「自分たちは、赤城へ搭乗すればいいんですね」


山本「そうだ。南雲中将は、お前たちの作戦をとりやすい様に、

   動いてくれるはずだ」


晃司「そうですよね」


忠和「期待させてもらいます」


山本「こっちこそ、お前たちの活躍を期待して待っているぞ。

   ではお前たちを、南雲中将の所へやる」


    山本は晃司と忠和を、南雲の旗艦赤城へと派遣した。


南雲忠一「やあ岡本少佐、今回も期待しているぞ。それに渋野中尉、

     君の手腕も既に聞いている、ニコバルの手並み拝見と

     行こうではないか」


晃司「今回もヨーロッパにおいて、史実通りのことが起きているか、

   先ず確認してみたいと、思います」


忠和「前回は密偵の方々が、以前晃司の任務に活躍したことを聞いて

   いたので、全信頼を寄せられた結果です。

   今回もうまく行くといいのですが」


  南雲率いる日本艦隊は、ヨーロッパの大西洋に展開した。  


  イギリス、ソ連、それに日本、更にはカナダやオーストラリア等の

  連合軍は、フランス国内のノルマンディーの攻略に

  あたったのだった。

     

   元々史実では、ノルマンディー上陸作戦は、この次の年の

   1944年6月に開始されており、それにはアメリカ軍も加わっていた。

   それ以前にドーバー海峡を渡っての作戦は、1942年中に、

   ブレストかシェルブールへの(本格的反攻ではない)限定的

   上陸の、スレッジハンマー作戦、1943年以降の北フランス上陸の

   ラウンドアップ作戦が立案、また周囲からの攻撃では

   北西アフリカ上陸のジムナスト作戦、ノルウェー上陸の

   ジュピター作戦が立案されていた。

     

  ただ連合国側は、現状では時期的にもこの作戦をとるには早く、

  更に今回、アメリカは参加できず、連合国側も困っていたのだが、

  日本軍が参加するため、この作戦を用いようとしたのである。


  スレッジハンマー作戦は準備期間が短すぎ、上陸しても半島に

  閉じ込められるだけで、吸引できるドイツ軍兵力が小さいこと

  から早々に放棄された。

  またジュピター作戦も放棄された。

    

  しかしノルマンディーはドイツ軍の布陣が薄く、上陸は予想

  されなかった地点であったが、戦略的にはドイツの防御を

  混乱させ、分散させる可能性を持つ、攻撃地点であった。

     

  ドイツ側としては、「大西洋の壁」と呼ばれた大西洋沿岸の

  防衛状態は、ヒトラーが計画を強力に推進したにも関わらず

  進行していなかった。

  ヒトラーが連合軍が上陸する地点だと固執したため、最も構築が

  進んでいたカレー方面でも60%前後、ノルマンディーに至っては

  計画の20%前後の進行率でしかなかった。

  元々、ノルウェー沿岸からスペインにまで達する、

  3000マイル以上の、大西洋沿岸すべてを要塞化することが、

  不可能なのは明白だった。

  この時期のドイツは明らかに、西部戦線よりも東部戦線の方に

  力を注がなければならない状況であった。


  ドイツ海軍総司令官のカール・デーニッツ元帥は大西洋の

  防壁を支援するためUボートを、敵上陸に備え配備した。

  ただ、ドイツ海軍には開戦以前から大型艦は乏しく、

  しかもフランスにおいて激しい英軍の空襲からの損耗を

  避けるため北海へと移動し、フランスには小艦艇のみが、

  残存するだけであった。


忠和「南雲長官、ヨーロッパ世界は史実の色合いが濃いです。

   考えてあった作戦通り、私を高橋伊望中将の元に、遣わせてください

   戦闘には万全を、期したいと思います」


晃司「南雲長官、高橋中将は私の正体をご存知ですので、忠和の正体も

   同じように言って頂ければ、信じて頂きやすいと思います」


南雲「うむ、ここまでは、世界は君たちの世界と同じ様に、史実通り

   行っている様なのだな。

   わかった渋野中尉を高橋中将の元に派遣しよう。

   岡本少佐、高橋中将には、どこまで渋野中尉のことを

   言えばいいのかな」


晃司「必要最小限の事で十分と思いますよ。あとニコバルの戦果に

   ついても、山本長官からお聞きされた様に、書いておいて

   もらったら、使ってもらい易くなると思います」


南雲「そうか、ではそうしよう」


    南雲は高橋に忠和の正体と、必要最小限の事を、書面で書き

    忠和に直接手渡した。


忠和「ありがとうございます南雲長官。では私はこれにて高橋中将の

   元に行って参ります」


  忠和は赤城を離れ、第三艦隊旗艦羽黒(はぐろ)に移った。


  大西洋において日本海軍とドイツ海軍海戦が始まった。

    

  南雲率いる第一航空艦隊と第三艦隊は、

  晃司と忠和の考案した作戦どおり、零戦の挟撃による、ドイツ軍

  戦闘機掃討作戦を、行い、元々少数だったドイツ戦闘機がほぼ

  殲滅出来た後、これも元々少数だった、ドイツ艦隊を挟撃し、

  かなりの、ドイツ艦隊に損害を与えて、ドイツ海軍力を、

  更に削いだのであった。

  そして忠和は赤城にもどってきたのであった。


南雲「いやあ君たちの作戦は、今回でも十分よくわかったよ」


晃司「世界はまだ史実が残っていたから、ここまでできたんですよ、

   南雲長官」


忠和「この史実も、詳細を事前に、私たちは園田中尉に伺っておりますので、

   後は私たちで作戦を、考案しやすかったんです」


南雲「ここでも園田中尉の歴史の知識が、役にたったようだな。

   しかし、君たちの考えた作戦も、やってのけたわけなんだな」


晃司「まだまだこれからですよ、南雲長官」


南雲「そうか」


    日本軍はこれから先も、戦闘に備えるのであった。


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