第27話 辞令

    晃司と忠和は、海軍兵学校から、大和艦橋へ戻った。


岡本晃司「長官、ただいま戻りました」


山本五十六「戻ったか二人とも、気分転換は出来たか?忠和」


渋野忠和「はい、長官」


山本「もう大丈夫だな」


忠和「えっ」


    晃司はあちゃと思ったが


忠和「晃司、お前しゃべったな」


晃司「まあ仕方ないやないか、こうするしかなかったんや、

   分かってくれ」


山本「ああそうか。まあいいではないか、健司と園田中尉のことは

   知っているな、忠和」


忠和「ええまあ」


山本「晃司たちのことは、宇垣と黒島には黙っている。お前たちのことも

   あの二人には伏せておく」


晃司「実際、長官には知ってもらってた方が何かとやりやすいぞ、忠和」


忠和「まあそうだな、今回のことは晃司お前にはもちろん、

   山本長官にも感謝してますし助かりました、長官」


山本「うむ、あと遅くなったが、細萱中将からの書面を軍令部へも

   持って行って、お前の中尉昇格の辞令ももらわねばならん、忠和。

   軍令部へ行ってこい。もう辞令はすぐ渡せるようだしな」


忠和「はい、長官」


山本「晃司、お前も行くか?」


晃司「僕は殊更用事は無いので。忠和ももう大丈夫そうですし」


山本「そうかでは行ってこい、忠和」


忠和「はい、では早速行って参ります」


山本「うむ」


    忠和はその場を離れ艦橋を、出ようとした。


宇垣纒「やあ渋野中尉、もう中尉と言っていいだろう。細萱中将の

    書面見せてもらったよ。ほんとに君も相当なものではないか」


忠和「ああ、宇垣参謀長。まあ結果的にうまく行ってくれましたので。

   それと晃司のおかげで、密偵の長田大尉と加古川中尉を全面的に

   信頼できましたし、それが大きいです」


宇垣「見事な手腕だよ、君たち防衛大というのも大したものだね」


忠和「私より上なんか、いくらでもいますよ」


宇垣「本当に頼もしいよ、我々の子孫も。それで、どこかいくのかね」


忠和「軍令部へ行ってきます、参謀長」


宇垣「ああ辞令のこともあるしね、じゃあこれからのことも頼んだよ、

   君たちには」


忠和「はい、微力を尽くします。では行って参ります」


    忠和はその場を離れ、また声をかけられた。


黒島亀人「よう渋野中尉、細萱中将の書面を作戦室でみせてもらったぞ、

     お前さんもかなりのやり手じゃないか」


忠和「あ、黒島首席参謀。さっき宇垣参謀長にも言いましたが、

   あれは結果的にうまい事、向こうが思惑通り動いてくれたから

   成功したんですよ。

   それに晃司のおかげで密偵の長田大尉と加古川中尉のことを、

   完全に信用出来ましたし」


黒島「まあ謙遜も入っているだろうけど、本当の事の様だしな。

   しかし、全作戦案を見せてもらったけど、お前さんかなり綿密だな」


忠和「今回防衛でしたからね。もし領土を奪われたら最悪ですし、手段も

   いっぱいありますからね」


黒島「なかなかどうして、またライバルが増えたぞ、俺も精進しないとな」


忠和「恐れ入りますよ、黒島首席参謀」


黒島「辞令はもらったのかい?」


忠和「今からもらいに行きますよ」


黒島「そうか、じゃ気をつけてな」


忠和「ありがとうございます」


    そして忠和は大和を後にして、軍令部へ到着した。

    まず永野の執務室へ入った。


忠和「渋野忠和です、失礼します、永野総長」


永野修身「おお渋野君、聞いておるぞ、大勝利だったそうじゃないか」


忠和「まあうまい事いきました。それでまず総長に、細萱中将からの

   書面をお渡しします、お読みください」


永野「うむ」


    永野は書面の内容をじっくり読んだ。


永野「ほんとに良く練られた作戦じゃないか、ここまでとはな」


忠和「今回は防衛が任務でしたので、いっぱい作戦が用意出来る

   余地がありました」


永野「ワシからでもいいが、伊藤次長に見せるといいよ」


忠和「はい、総長、では早速次長のところへ行って参ります。

   またご挨拶に来ますので」


永野「分かった、行ってきなさい」


忠和「失礼します」


    忠和は永野の執務室を出て、伊藤の執務室に入った。


忠和「失礼します、ただ今参りました、渋野忠和です」


伊藤整一「やあ、渋野中尉。もう一応大雑把には聞いたが、今回の作戦、

     大勝利だったみたいだな」


忠和「なんとかうまい事いきました。つきましては、細萱中将からの詳細な

   内容を、書面にて軍令部の方へ渡すよう、預かって来ておりますので、

   手渡させてもらいます」


伊藤「うむ。読ませてもらおう」


    伊藤は書面をじっくり読んだ。


伊藤「実に綿密な作戦内容だ、結局最上の策で勝利したわけだしな」


忠和「岡本少佐のおかげで、密偵の長田大尉と加古川中尉に完全な

   信用をおけましたので」


伊藤「岡本少佐、渋野中尉、園田中尉、井上少尉。

   防衛大学校か、なかなかどうして大したものだ」


忠和「ありがとうございます。今回は成功しましたが、次はどうなるか、

   わからないですがね」


伊藤「まあ全部が全部、勝利するというのも、返っておかしな事だろうしな、

   そこまで気負わなくいい。

   これは岡本少佐にも言っておいてくれ」


忠和「はい、次長」


伊藤「辞令だったな、用意出来ている。ここにある、これだ」


忠和「ありがとうございます」


伊藤「それからどうだ、今回は史実ではない様なことを聞いたが、

   もうこの世界で君たちの知識は使えないか?」


忠和「ひょっとするとまだ世界には、史実とかぶっている箇所が、

   残っているかもしれませんがよくわかりません」


伊藤「そうか、まあこれからも君と岡本少佐には期待している。

   もちろん、園田中尉と井上少尉にもだけどな」


忠和「恐縮です。では次長、こちらは要件は済みましたので、

   この辺で失礼させて頂きたいと思います」


伊藤「うむ、ほんとにこれからも宜しくな。

   ではまた会おう、渋野中尉」


忠和「はい、失礼致します」


    忠和は伊藤の執務室を出て再び、永野の執務室に入った。


忠和「戻って参りました、総長」


永野「伊藤次長に、書面を見せて辞令をもらったのだな」


忠和「はい」


永野「君は今回が初陣だっただろ、でその後気持ちは大丈夫かね」


忠和「ええまあ」


永野「どういう事か大体わかるよ」


忠和「ひょっとして総長、感づかれていたのですか?」


永野「まあ岡本君の時も、そうだったからな」


忠和「そういう事ですか」


永野「まあ大丈夫なら安心したよ」


忠和「ありがとうございます。でも総長、このことは一応、

   伊藤次長には黙っておいてください」


永野「承知しておるよ」


忠和「そうでしたか。とりあえず総長、私はこの辺で失礼させて頂きたいと

   思いますので」


永野「そうか、じゃあまた軍用機を手配しよう」


忠和「いつもお世話になります」


永野「気にせんでいいよ」


忠和「ありがとうございます、では失礼したいと思います」


    忠和は軍令部を離れ一路、大和に向かったのであった。 


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