第25話 進展

    一花と胡桃の、寝室の外。


岡本晃司「一花、忠和の態度見て、気づかんか?」


園田一花「そういえばなんか、反応小さいですね」


晃司「俺の初陣が終わった時、思い出してみ」


一花「あっ、そういえば晃司さんの場合、フーヴァー所長との交渉の

   印象が強くて、初陣のことと、混乱して考えてました。

   そういうことですか」


晃司「そういうこと、ちょっとあのまま二人だけにしておこう。

   その為に連れて来たんよ」


一花「そういうことでしたか」

 

    寝室の中。


井上胡桃「あの二人、どこに行ったんでしょうね」


渋野忠和「どこかは分からないけど、恐らく晃司が気を利かせて、

     園田さんと一緒に出ていってくれたんだよ」


胡桃「といいますと?」


忠和「晃司には話したんだけどね、俺今、罪の意識でどうにか

   なりそうなんだよ」


胡桃「え、でももし敗北していたら味方の損害が増えてた訳ですし」


忠和「そうなんだけど、敵に対してもそう思ってしまうよ。俺たちの

   時代で考えれば当たり前のことだよね。

   俺もその時代で育ったんだし」


胡桃「なんとなくわかります。なんかこっちまで辛くなってきました」


忠和「いざ実戦を終えてみると、こんなに罪の意識で辛いのかと思うよ」


胡桃「でも岡本さんは実戦を何回も、くぐり抜けてきたんですよね」


忠和「晃司も初陣の時こうなったって、で、こういうのもなんなんだけど、

   そんなとき園田さんが、いてくれたって言ってたんだよ」


胡桃「そういうことでしたか。渋野さん、こんな年下の私ですけど、

   今日くらい私に甘えてください」


忠和「年下の女の子に甘えるなんて情けない男だけどね、俺も」


胡桃「そんなことありません。そこまで自分を責めるところを見ていると、

   可哀そうになってきましたから」


忠和「ごめん、俺も素直になるよ。俺ね人をいっぱい殺したんだよ、

   直接自分の手ではないけど、そうさせたんだよ」


胡桃「渋野さん・・」


忠和「俺軍人として生きていくのが、辛くなってしまって苦しいんだよ。

   でもこれしか能の無い人間なんだよね俺って、辛いよ」


胡桃「可哀そう」


忠和「俺このまま実戦やってると、罪の意識でどうにかなりそうなんだよ。

   今にも悲鳴をあげそうなんだよ」


胡桃「その苦しみ私が全部吸い取ってあげます」


忠和「伊藤さん、ありがとう」


胡桃「渋野さん!」


    胡桃は一方的に忠和にキスをしたのだった。


忠和「い、井上さん」


胡桃「渋野さん、いえ忠和さん、心配なさらないでください。

   苦しいときは私がいつでも飛んでいきます」


忠和「井上さん・・いや胡桃、ありがとう。やっと辛さがだいぶ消えたよ」


胡桃「よかった。私でもお役に立てたんですね。あの忠和さん」


忠和「ん」


胡桃「好きです」


忠和「うん、俺も好きだよ、胡桃」


  ・・忠和と胡桃は今度は二人合意の上で、口づけを交わしたのだった・・


忠和「ありがと、胡桃。君がいてくれて良かったよ」


胡桃「忠和さん、私最近眠れないって言ってたでしょ」


忠和「うん」


胡桃「あれ、忠和さんのことが気になって気になって眠れなかったんですよ」


忠和「そうだったのか、ごめんちゃんと気づいてあげれなくて」


胡桃「んーん、分かってくれたらいいんです」


忠和「俺たち、恋愛してるんだよね」


胡桃「はい、私はもちろんそのつもりです」


忠和「よかったよ、君のような彼女が出来て」


胡桃「嬉しい!」

   

  ・・胡桃はまた忠和に抱き着いた。

    忠和は胡桃のことをかわいいと思い、そっと抱きしめた・・


忠和「胡桃?」


胡桃「はい」


忠和「いつまでも一緒に居たいのはやまやまだけど、そろそろ

   晃司と園田さんを呼びに行こうよ」


胡桃「そうでしたね。待たせてたんですもんね」


    忠和と胡桃は部屋をでて、晃司と一花を探し回りようやく

    見つけて寝室へ連れてきた。


忠和「もう俺は大丈夫だぞ、胡桃のおかげだ。晃司、お前にも例を

   言っておかないとな、ありがとな」


胡桃「私からも礼を言わせて頂きます。忠和さんをここまで連れてきて

   頂いてありがとうございます、岡本さん」


晃司「二人ともなんか、進展があったようやなあ」


一花「そんな感じ」


忠和「まあ少しな」


胡桃「そうそう、少しよ」


忠和「俺たちも遅くなるとまずいから、そろそろ帰ろうか、晃司」


晃司「まあお前がそう言うんやったらもう帰ろか、ほんなら」


胡桃「岡本さん、なんのおかまいも出来ずにすみません」


晃司「ええよ、目的は果たせたようやし、俺からも逆に礼を言っとくよ、

   井上さん」


胡桃「いえいえ、そんな」


晃司「まあほんじゃ帰ろっか」


忠和「そうだな二人も疲れているだろうし、もう俺たちも帰らないと

   遅くなるしな」


晃司「そういうことで俺らは失礼するよ、一花、井上さん」


一花「はい、わかりました」


晃司「じゃあここで、じゃね二人とも」


忠和「じゃまた」


    晃司と忠和は部屋を出て、帰路についた。

    部屋の中。


一花「実際どうしたの?胡桃」


胡桃「先ず、私から強引にキスした。それで本当の気持ちも打ち分けて、

   彼も色々打ち分けてくれたから、その後は二人合意の上で、

   またキスした、そんなとこ」


一花「ほぇ、積極的、胡桃」


胡桃「あんたたちだってキスくらいはしてるよね、当然」


一花「まあそうだけど」


胡桃「それに忠和さんは出来る男と見た。あんないい男そうそういないよ。

   逃してたまるものですか」


一花「積極的だね、胡桃」


胡桃「男をものにするにはとにかく積極的にいかなくては。

   あんただって、なんだかんだでそうだったんでしょ、一花」


一花「うーん、胡桃ほど、そこまでなれなかったかもしれないけど。

   でも胡桃は、本当にしっかりしてるね」


胡桃「私は普通にまじめな人間なだけよ」


一花「確かに胡桃は要領いいとこあるけど、本当はまじめで努力家だもんね、

   きっと異性に関しても一途だと思うよ」


胡桃「本当は、はいらないよ」


    晃司と忠和たちは。


晃司「どうやった?」


忠和「ん、まあキスしたくらいだぞ」


晃司「ああまあそれもやけど、それよりお前の中での俺が心配してる

   問題のことや」


忠和「ああ、だいぶ楽になったぞ。多分これからも、もう今までよりかは、

   ずっと大丈夫だと思うぞ」


晃司「そうか、それやったらよかった」


    二人は色々今回の戦術的な事も含めて、話し合いながら大和へ

    帰るのであった。 


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