第18話 ニコバル諸島の戦い 前編

    作戦室に下士官が入ってきた。


下士官「失礼します。細萱司令長官、軍令部より長田大尉、加古川中尉と

    言う士官がこられましたが」


渋野忠和「細萱中将、第一の作戦のために準備した、密偵の方々です」


細萱戊子郎「ここへ通していいのか?」


忠和「ええ、第一の作戦だけなら、知っておいてもらわないといけない

   ですから」


細萱「分かった、ここへ通せ。角田少将、第一の作戦以外は今から来る

   密偵二人には、もらさないように」


角田覚治「了解しました」


    下士官が出て行き、長田と加古川が入ってきた。


長田仁志「はじめまして細萱中将、海軍軍令部よりこちらに派遣された、

     陸軍大尉長田仁志であります。

     こちらは角田少将ですか、お初にお目にかかります」


加古川小成「同じく加古川小成中尉です。お初にお目にかかります、

      細萱中将、角田少将」


細萱「第五艦隊司令長官の細萱戊子郎中将だ。

   宜しく長田大尉、加古川中尉」


角田「同じく第四航空戦隊司令官角田覚治少将だ。

   宜しくな長田大尉、加古川中尉」


忠和「待っていました長田さん、加古川さん」


長田「中国軍将校の軍服が届いてからすぐかけつけましたが、

   今になってしまいました、渋野さん」


加古川「ちょっと遅かったですか?」


忠和「いえ、今細萱中将と角田少将に作戦を説明していましたので、

   丁度いい頃でした」

   

長田「そうですか、それならよかったです」


忠和「以前お話しした内容に、更に加えて、作戦全容を説明しますので、

   ここにいる5人で打合せしましょう」


    忠和は第一の作戦全容を、説明して5人で、協議した。


細萱「よしそれで行こう」


角田「この作戦はほぼ、長田大尉と加古川中尉にかかっていると言っても、

   言い過ぎではないな」


忠和「長田さん、加古川さん、自分は晃司が全面的に信用したあなた方を、

   同じく全面的に信用します」


長田「必ず成功させて帰ってきます。それまで安心してご自分の仕事を

   果たしてください」


忠和「危険な任務で申し訳ないですが、宜しくお願いします」


加古川「我々はこれが仕事なんで、当然のことをしているつもりです。

    全力を尽くしますのでどうぞご心配なく」


忠和「どうやら前回も健司が相当危険な目にあわせて、今回等は自分が

   一階級特進等もなく、こんな任務を頼んでしまって」


長田「もともと一階級特進なんてのが、異例なんですよ」


加古川「我々はこのような任務が、むしろ性に合っていますので、

    喜びを感じているくらいですよ、渋野さん」


忠和「そう言ってくれると心強いですよ、加古川さん。長田さんも

   そうですよね」


長田「そうですね、こういう任務を与えられることがむしろ、嬉しい

   くらいですよ、渋野さん」


忠和「そう言って頂けるとほんと心強いですよ、長田さん」


細萱「そうか君たち二人は、以前岡本少佐と共に、任に当たったのか」


長田「ええまあ、あの時は学生なのに、肝が据わっている岡本さんに、

   驚かされましたよ」


加古川「あの時は、元アメリカ大統領相手に、はったりをかます知恵と

    度胸に感心しましたよ」


角田「そんなにすごかったのか?岡本少佐は」


加古川「ええあの時は、今の渋野さんと同じく成功すれば中尉待遇で、

    山本長官に迎えられると言う状況でした、確か」


細萱「まあ岡本少佐のことは、君たちが今回の任務を果たしたら、

   ゆっくり聞かせてもらおう、聞ける範囲だけでも。

   2人とも、早速任務についてもらいたい、宜しく頼む」


長田「はっ、すぐに任に就きますので、行って参ります」


加古川「それでは、行って参ります」


  長田と加古川は、重要な任務を与えられ、旗艦那智を後にし

  潜水艦に乗ってビルマに上陸し、そこから中国との国境から、

  中国軍将校の軍服に着替え、陸路首都北京に向かった。

  またその数日後、更に手配した、老朽化した軍艦が第五艦隊に届いた。

  

  そして日本艦隊は、その老朽化した軍艦四隻と、通常の軍艦数隻を

  大ニコバル島に配置し200浬以内の、大ニコバル島から、通常の軍艦を

  全てそれ以上ずっと東で、ビルマ南方のアンダマン・ニコバル諸島に

  集結した。

  

  尚、大ニコバル島には、もともとのニコバル諸島の零戦を配置した。

  この当時バングラディシュは中国の手に落ち属国となっていた。

  そして中国は日本とイギリスの連携を、海路による連絡を絶つために、

  ニコバル諸島は、喉から手が出るほど、欲しかったのである。

  そしてニコバル諸島の、最大の軍事拠点が、大ニコバル島だったのである。

    

    それからビルマ経由で、二週間ほどして加古川が、

    那智に帰還したのであった。


加古川「ただ今戻りました、細萱中将、渋野さん」


細萱「おおもどったか、加古川中尉。で首尾はどうだ?」


加古川「中国海軍はニコバル諸島の大ニコバル島を攻撃、各ニコバル諸島の

    上陸を目指してきます。

    その後ニコバル諸島を攻め、占領していく段取りですが、

    その詳しい日時は、まだ私の方ではわからなかったです。

    それと日本海軍は、大ニコバル島に集結しているが手薄で、

    他の艦艇はバングラディシュのチッタゴンを攻撃しそこから

    上陸するとの、情報を流しました。

    もう数日もすると、この情報は近衛文麿中国陸軍大将や、

    毛沢東国家主席に、伝わると思われます。

    中国海軍は恐らく、あと二週間もせずチッタゴンを出航すると

    思われ、長田大尉ですが、後一週間もしないうちに、

    より詳細な情報を得て帰還すると思われます」


細萱「分かった、良くやってくれた、加古川中尉、

   今日はゆっくりやすんでくれ」


忠和「おかえりなさい加古川さん、ご無事でよかったです。

   その情報だけでも大きな戦果です。

   あとは長田さんが、無事に帰ってくることを、祈るばかりです」


加古川「はい、ありがとうございます、細萱中将。

    渋野さん流石に二週間で、私ではこれが限界でした。

    中国海軍の、ニコバル諸島に攻めてくる、具体的戦力や、具体的日時

    などは長田大尉に任せるしかありません」


忠和「十分ですよ、加古川さん、これだけでも十分戦えます。

   ほんとに、あと長田さんが、無事ならいいんですが」


加古川「長田大尉なら、私より情報元になる人物に、接触してますし、

    十分な情報を持って帰ってくると思います」


忠和「そうですね、長田さんと加古川さんは、得る情報の内容が違うで

   あろう人物と、接触しているんですもんね。

   長田さんも、必ず更なる情報をもってきて、無事に帰還して

   くれますよね」


    その後、更に一週間ほどして、長田が那智に帰還した。


長田「細萱中将、渋野さん、ただ今戻りました」


細萱「良く戻った、お疲れ様だったな」


忠和「長田さん、ご無事で何よりです」


    長田は加古川の持ってきた情報を、細萱に聞いた。


長田「細萱中将、加古川中尉の情報以外には、中国海軍のチッタゴン

   出立日時ですが、今から約一週間後の、3月5日の午前に

   出立します。

   規模ですが、正規空母2隻、戦艦1隻、重巡1隻、軽巡3隻、

   駆逐艦9隻、輸送船10隻以上です。

   日本海軍は3月7日の午後に、チッタゴンを攻撃すると流したら、

   中国海軍の、この正確な日時が明らかになりました」


細萱「よくそこまで情報を得てくれた、二人して本当にいい情報だよ」


忠和「ここまで分かれば、なんとかなりそうです、ほんとに

   お疲れさまでした」


長田「ここまでは、お役に立てたようです。あとは私たちは何もできません」


細萱「あとは私たちに任せてゆっくりしていってくれ」


長田「分かりました、今日はとりあえず休ませてもらいます」


忠和「さてこれで一応布石は打ったわけですが、あとは、相手がこちらの

   思惑通り、動いてくれるかどうかですね」


細萱「まあ根本的にうまく行かなかったら、それなりに別段階の

   作戦があるではないか」


忠和「そうですね、それで致命的には負けないとは思いますが」


細萱「君の中尉というのが、一気には出来ないな」


忠和「それは仕方ないですね」


    これより、いよいよ両軍のぶつかり合いに突入していくのであった。


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