第17話 ニコバル諸島の戦い 準備編

    忠和は空母龍驤(りゅうじょう)を経由して旗艦那智へ向かい、

    艦橋へ上がった。


渋野忠和「お初にお目にかかります細萱中将、連合艦隊旗艦大和所属

     渋野忠和と申します」


細萱戊子郎「君か、連絡のあった、山本長官の遣いというのは」


忠和「まず細萱中将に、読んでもらいたいものがあります。山本長官からの

   命令書ですので、今手渡します。

   宜しければ作戦室に、一緒に行ってもらえないでしょうか」


細萱「作戦室に?まあいいだろう」


    細萱と忠和は誰もいない、作戦室へ入った。


忠和「これが、山本長官からの書面です。お読みください」


    細萱は山本からの命令書をじっくり読んだ。


細萱「な、きみは未来人なのか。そしてあの、岡本少佐と園田中尉と、

   知り合いなのか。それも岡本少佐とは未来の大学校で同期生だって。

   ここには作戦の全指揮権を君に与えろと書いてある。

   山本長官の命令だし、実戦は初めてということらしいが、

   能力は岡本少佐のお墨付きと書いてある。

   ここは君に任せるしかないな渋野・・、ああ階級は」


忠和「今は階級は正式にはなく、この作戦が決定的に成功すれば、

   と言う条件付きで、中尉待遇を約束されています、細萱中将」


細萱「そうか渋野次期中尉。してその作戦というのは、どういうものだね」


忠和「それについては、角田少将も交えてお話しさせて頂きたいと、

   思いますので、少将を及び頂きますか?」


細萱「分かった、ちょっと待っていたまえ。すぐに呼び出す」


    細萱が部屋を出て行き、角田を呼びに行った。

    そしてしばらくして細萱が戻って来た。


細萱「角田少将を呼び出した、しばらくしたら来る。

   それまで作戦以外の話をしようか」


忠和「ええ、問題ありませんよ」


細萱「そうか、渋野次期中尉、君は岡本少佐とは未来において同期生

   らしいが、岡本少佐とは君から見て、どんな人物かね」


忠和「そうですね、一見自由人で、色々と好き嫌いが、はっきりしているよう

   ですが、確かにそうかもしれませんが、知的で、責任感があり、

   それに、肝の据わった奴ですよ、細萱中将。

   あいつは初対面の人には、ちょっと違う印象を持たれるかも

   しれませんが」


細萱「そうか自由人だが、責任感があり度胸もあるのか。ちょっととらえ

   辛いところあるが、分からんでもない。

   なんせ彼の正体を知ってる人間の間では、日本を救った英雄みたいな

   もんだからな」


忠和「確かにあいつ自身は、歴史をしっていたから出来ただけだと、

   言っていますが、切れるところは切れますからね。

   得意分野に関しては、我々防衛大でも首席並みかもしれません。

   言い過ぎとしても、それにかなり近いと思います。

   ただし、学業で言うと、嫌いで苦手な分野に関しては、毎年及第点

   ぎりぎりなんですよ。

   私は、彼とは寮で同じ部屋なんで、そこらへんは、良く知っている

   つもりです」


細萱「変わった人間なのかもしれんな」


忠和「そうですね、一言で言うとそれが、適当かもしれません」


細萱「しかし信頼のおける人間であることは、確かなようだな」


忠和「そうですね、それは間違いないと思います」


細萱「園田中尉の事は、良く知っているのかね?」


忠和「彼女とは同じ学校ではありますが、一つ下でつい最近しりあった

   ばかりなので、ほとんどわからないんですよ」


細萱「そうか、私は園田中尉とは面識があってね、あまりしらないんだが

   愛嬌のある女性だと思ったな。

   しかしどことなく、しっかりした感じを受けたよ」


忠和「そうですか、確かにそんな感じかもしれないですね」


細萱「あの若い二人が結局、日本を敗戦から、救ったんだもんな」


忠和「みたいですね」


    話しているうちに、角田が姿を現した。


角田覚治「失礼します。どうされました?細萱中将」


細萱「来たか角田少将、まず紹介したい人物がいる。ここにいる渋野忠和

   次期中尉だ。彼は山本長官の直属だ」


角田「山本長官の、直属ですか」


忠和「お初にお目にかかります、角田少将。大和所属の渋野忠一と申します」


角田「お初にお目にかかる、角田覚治だ。第四航空戦隊の司令官を

   させてもらっている。

   細萱中将、彼が山本長官の直属ということは、中国軍に何か、動きが

   あるのですか?」


細萱「角田少将、まずはこの私宛の、山本長官の命令書に目を通してくれ」


角田「命令書ですか、わかりました」


    角田は山本の細萱宛ての、命令書を読んだ。


角田「おお、君はあの岡本少佐の、未来での同期生なのか。しかもこの

   命令書には、作戦についての、全権を君に預けるとある。

   ここには岡本少佐の、お墨付きと書いてあるが、既に山本長官の

   信用を得ているようだな。

   ということは、中国軍に動く気配があると、山本長官は、踏んだわけか」


細萱「角田少将、渋野次期中尉は、岡本少佐と寮で同室で、

   色々と語っているらしい」


角田「それなら、この命令書もうなずけます、で次期というのは?」


細萱「彼はこの作戦が決定的に成功すれば、正式に中尉になるらしい。

   いまはまだ階級は、ないそうなのだ。恐らく山本長官は、この作戦が

   うまくいけば、彼を腹心の一人と、するつもりなんだろう」


角田「そうかあ、私達は岡本少佐とは、直接あった事は無いのだが同じく

   未来から来た園田中尉とは、私は空母隼鷹で同乗したんだ。

   渋野次期中尉、君は園田中尉とは、面識はあるかね?」


忠和「ありますが、彼女とは最近知り合ったばかりで、あんまり

   知らないんですよ」


角田「そうか、彼女も同じく未来人で防衛大といったか、そこの学生だが、

   愛嬌がある女性だが、どこか真が通っている人だった気がする」


忠和「さっき細萱中将もおなじようなことを、おっしゃっておいででした」


角田「そうか、渋野次期中尉、君も防衛大だし、私自身それだけで

   信頼できるよ」


忠和「ありがとうございます。防衛大学校長始め、関係者、生徒全員に

   聞かせたいものです」


角田「いやいやそこまで言われると、こっちが褒められているようだよ」


細萱「さて3人になったが、早速君の作戦を伺おうか」


忠和「では私が一通り場合ごとに、練ってきた作戦を、提案いたしますので、

   この艦隊や、ここの現地の地理や、情勢に通じておられるお二方に、

   修正や、別案を述べて頂きたいと、思います。

   出来るだけ多くの事を、盛り込んで行きたいと思います」


細萱「それなら、私たちだけでいいのか?ほかの参謀連中も呼ぼうか?」


忠和「いえ、それなら私の正体も明かさなくならなくなると思いますし、

   今の世界情勢下では、まだ私どもの正体を、あまり多くの人たちに

   知られない方が宜しいかと思いますので」


細萱「そうかそれなら、我々二人だけでも協力しよう」


    忠和は二人に練ってきた作戦の、全てと準備したことを、全て述べた。


細萱「なんと、これまた大胆な事を用意してきたもんだ、それにその

   準備もしてあるのか」


角田「大胆さゆえに用意の周到さを感じますね。それに状況に応じて、

   対応出来るように、各段階に分けられた作戦です。

   理にかなった内容ですね、細萱中将 」


細萱「流石はいつも、岡本少佐と語りあいながら、渡り合っていると

   言うべきか。私にも既に修正の余地は、ないのだが」


角田「私にも、その余地は、さしてみあたりません。それどころか自分が

   慣れっこになってしまったかと、逆に教えられるくらいです」


忠和「しかしまだ実行の初期段階にすらはいってませんよ。学生の分際で

   言わせていただくなら、私どもは常々、実戦の現場では、予期せぬ

   ことは起きるものと、伺っております。

   特に先端が開いた後の、お二方の助言を期待しております」


細萱「しかし大胆かつ、慎重な人物だ。もしこの最上の策が、成功する様な

   ことがあれば、この作戦の内容全てを、山本長官に知らさなければ

   ならないな」


    そうこうしているうちに先に準備していた、長田と加古川が

    那智に到着した。


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