第15話 作戦

    4人は永野の執務室へ戻った。


岡本晃司「永野総長、4人ともただ今戻りました」


永野修身「戻ったか、話は終わったようだな」


晃司「はい、ところで総長、実は近々忠和が、任務に当たる予定で

   スパイが必要らしいのです。

   スパイと言えば、長田さんと加古川さんが思い浮かびますが、

   今回も、総長のお力で何とかならないでしょうか?」


永野「スパイか、長田大尉と加古川中尉なら、君らの正体も知って

   いるから、話がしやすいからな。

   ただどこかへ、任務中でなければいいが」


渋野忠和「中国語が流暢にじゃべれる人がいいです、総長」


永野「中野学校では何か国語か教えるはずだ、その辺は大丈夫だろう。

   ただいるかどうかが問題で、いなければ他のスパイを頼まないと

   だめだな。近々とはどれくらいなんだね?」


忠和「数日後に、広島港をたつ予定です」


永野「そんなに早くか、まあ今は陸軍と海軍の対立も、別に無いし、

   ワシの力でなんとかなるだろうが、数日は無理だと思うぞ」


忠和「そうですよね、あとスパイの人数分、現在の中国軍の将校の

   軍服を、スパイの人たちに用意しておいて下さい」


永野「分かった、今から手配しよう」


忠和「ありがとうございます」


   永野は陸軍の参謀本部に、軍用電話で話を通した。


永野「参謀本部へかけあったが、長田大尉と加古川中尉が

   2人とも来れるらしい。

   今近くに居るから、2人ともこちらへ来るらしい。

   ただ任務に関しては、中国軍の軍服がすぐには用意出来ないから、

   出来次第つくらしい」


晃司「長田さんと加古川さんが動けて、今からこちらに来れるんですか?」


園田一花「またあの二人と会えるんですね」


永野「そうだ、存分に話し合うといいぞ」


忠和「どういうつながりなんだ?晃司」


晃司「以前フーヴァー所長と交渉した時に、通訳をしてくれた人たちや」


忠和「よくそんな危険な役目、引き受けてくれたな、陸軍なのに」


晃司「永野総長のはからいで、成功すればそれだけで、

   一階級特進と言う、条件にしてもらったからな」


忠和「そういうことか、今回はそこまでないと思うけどな」


永野「今日の内に来ると思うから、2人が来るまで待っておこう」


忠和「それなら折角ですから、今日の内に作戦を伝えておきましょう。

   その前に総長、ニコバル諸島の基地等、詳しい地理を、教えて

   頂けますか?」


永野「ニコバル諸島か、インド洋の方面だな、そっちのほうか、いだろう」


   永野は忠和に、ニコバル諸島の詳しい現状と、地理について教えた。


忠和「よくわかりました、これで作戦が立てやすくなります。

   ありがとうございます。二人が来るまでのうちに、少なくとも

   二人の役目について、作戦を煮詰めておきます」


永野「岡本君と協議したらどうだ?」


忠和「失礼ですが、今回は山本長官が、私を試しているところも

   あるのです。

   だから今回は、晃司の知恵は借りず、自分で作戦を考えて

   みようと思います」


永野「そうかそういう事か。大体山本長官の腹の内は読めたわい。

   渋野君、君も負けず嫌いなとこがある様だな」


晃司「本当に相変わらず洞察力が鋭いですね、総長」


永野「まあ伊達に年は取っとらんよ」


忠和「総長、彼女たち二人が聞いてますんであまり」


永野「うむ、ワシに対する要件はそのくらいかな?」


忠和「そうですね、今の所このくらいですかね」


永野「そうか、では2人を待つとしよう。ワシが居ていいことなら

   4人とも話をしていたらどうだ」


晃司「そうですね、待っている間、5人で色々話をしましょう」


   そしてしばらく待っていると長田と加古川が到着した。


長田仁志「陸軍大尉長田仁志入ります」


加古川小成「同じく陸軍中尉加古川小成入ります」


永野「二人ともご苦労さん、今回も海軍の任務をお願いする。

   話した通り、岡本君と園田君が、ここにいるぞ」


長田「これは岡本さん、お久しぶりです。

   園田さんも、お元気そうでなによりです」


加古川「岡本さん園田さん、ほんとお久ぶりです。

    今までどうされてたんですか?」


晃司「長田さん加古川さんお久しぶりです」


一花「お久しぶりです、長田さん加古川さん」


晃司「いやあこれには我々にも、はっきりとわからない事情が

   ありまして、二人して元の世界の、日本に戻っていたんです。

   それでまた、この世界に召喚されたんですが、よくわからない

   ですが、こっちではミッドウェーから、半年程経っている

   みたいですが、あっちでは一か月と経っていないんです」


加古川「それは不思議ですね。それは岡本さんたちでも、理由が

    わからないんですよね」


晃司「はい、それで今回こっちへ転移したのは、僕ら以外にも、少なくとも

   今ここにいる二人がそうです。ご紹介します。

   こちら今回の作戦の、全指揮をとる、渋野忠和です。それと

   井上胡桃さんです。

   忠和は、僕の未来での防衛大の同期生で、井上さんは防衛大で

   園田中尉の同期生です」


忠和「初めまして長田大尉、加古川中尉、渋野忠一と申します。

   今回、私の作戦に参加して頂くことになり、大変ありがたく

   思います。宜しくお願いします」


井上胡桃「お初にお目にかかります、井上胡桃と申します」


長田「お二方初めまして、陸軍と海軍でもありますし、階級で呼び合う

   のはやめましょう、渋野さん井上さん。

   岡本さんや園田さんともそうですし」


忠和「そうですか、それでは長田さん、加古川さん改めまして、

   今回の作戦宜しくお願いします」


長田「こちらこそ、宜しくお願い致します。その手腕に期待しますよ、

   渋野さん」


加古川「同じくです、渋野さん。井上さんも初めまして」


晃司「長田さん、加古川さん、彼は実戦経験こそ無いですが、

   防衛大の成績は僕よりよっぽど上です。

   普段も寮の同じ部屋で、僕とシミュレーションしてますので、

   そこはご心配なさらなく、ご自分たちの任務にあたって下さい」


長田「岡本さんがそうおっしゃるんなら、最低限私たちの命は、保証

   されたようなもんですね。

   おっしゃる通り自分たちの任務に専念して、あとは全面的に

   渋野さんの指示に、従います」


加古川「ほんと、確か岡本さんたちの日本では、軍隊が無いと言われて

    いましたが、その世界の日本でも、優秀な方は少なからず

    いるようですね」


晃司「いっぱいいますよ。ただ僕たちは国防にあたる養成学校の

   生徒ですからこうですが、防衛大以外も国防に関する人以外は

   かなりの人が、頭も運動能力もある人がいわゆる、平和ボケして

   いる人がいますけどね。

   とは言え日本人は、僕たちの世界でもあらゆる分野で、

   勤勉なんですよ」


長田「日本人は、あなた方の世界でも勤勉なんですね」


忠和「ええそれゆえに、私たちの世界の日本では、戦後焼野原になってから

   数十年で、世界でもトップクラスの技術力と経済力を持ちました」


永野「そうなのか?」


晃司「言ってませんでしたっけ?アメリカはともかくソ連、私たちの

   時代ではロシアですが、それらや中国等はあらゆる面で、

   ずさんと言っていいくらいです」


永野「多分、それは聞いてなかったように思うが」


晃司「そうだったですか、まあそこは日本人として、誇りに思って

   頂いて結構だと思います」

   これは山本長官たちにも、言っておかないといけないですね。


永野「そう聞くと確かに、日本人として誇りに思うな」


晃司「ええそうですよね。それはそうと忠和、例の作戦の件、

   今長田さん達と、話し合わなくていいんか?」


忠和「そうだったな。総長、失礼ながら私たしは、作戦の打ち合わせ

   のため、退室したいと思うのですが」


永野「いや今、帰って早々また外出と言うのも何だろう、

   私達が退室していいぞ」


忠和「宜しいんですか?」


永野「気にせんでいい。岡本君もこちら側か?」


忠和「いえ、一応晃司には、交代の可能性もありますし、聞いておいて

   ほしいのですが、失礼ですが、いくら永野総長とは言え、

   作戦実行前には、連合艦隊以外の方には、極力内密にしたい

   ともいますので、ご了承願えますか?」


永野「かまわんぞ、ただ作戦実行終了後は、その内容を詳細に、聞かせて

   もらってもいいかな?」


忠和「それはもちろんですとも。ということで井上さんと園田さんも、

   悪いけどそういうことでいいかな?」


胡桃「はい結構ですよ」


一花「もちろんかまいませんよ」


永野「じゃあ園田君、井上君一旦退出しよう。終わったら、呼んでくれ」


忠和「分かりました、総長」


    永野、一花、胡桃は退室したのであった。

    そして忠和は、長田と加古川に、今思いついている、

    作戦の内容を伝えた。


晃司「忠和、よくそんな短時間で、そこまで思いついたな」


忠和「これは最もうまく行った場合のケースだ。作戦は何段階も用意

   しとかないといけない、これからそれは考える。

   長田さん、加古川さん、今回はあなた方の命の問題も、

   より優先に考えますが、自分にも限度があります。

   こちら側からの要求も含めて、あとはお二方の

   裁量にお任せします、というより頼らせてもらいます」


長田「わかりました、全力を尽くします」


加古川「同じく最善を尽くします」


忠和「お二方、質問はございませんか?」


長田「今の所は特には」


加古川「私も特には」


長田「それにしてもさっき、具体的に戦場になる可能性のある所について

   聞かれたらしいのに、よくそこまで思いつきますね

   二宮さんクラスあるんじゃないですか?」


忠和「おぼろげですが、スパイの件は元々考えていたんで、

   それに晃司はむらこそあるものの、得手につくものは

   切れますからね。

   こいつは自分より、こういうのも上ですよ」


晃司「そんなに謙遜するなよ。お前に褒められたら、半分居心地が悪いぞ」


忠和「そういうところが素直な内だなあ、お前。それよりもう会議は

   済んだから、3人を呼んでこなければな」


晃司「俺が行ってくるわ」


    晃司は3人がどこに行ったのか、聞いていなかったが、

    永野たちは部屋から、少し離れた廊下で、3人で話をしていた。

    そして晃司は3人を部屋に呼び戻した。


永野「4人とも、もう話はいいのだな」


忠和「はい総長、ありがとうございました。山本長官に早く、戻って

   来いと言われてますんで、我々はこの辺で戻りたいと思います」


永野「そうか、なら軍用機を用意させよう、それで帰りたまえ。

   空港までは車を手配させる。

   園田君、井上君、君たちも空港まで、送っていきなさい」


忠和「そんなにお手数をおかけしてしまって、申し訳ありません、総長」


永野「なあに、岡本君とそれと同じような立場になる人間を、

   送るのだ、これくらいは、当たり前だよ」


忠和「ありがとうございます。それでは総長、我々は失礼したいと思います」


晃司「では失礼します、総長」


一花「私たちも行って参ります、総長」


胡桃「寄り道などせずに戻ってきます、総長」


    4人は軍令部を出て空港まで到着した。


胡桃「信用はしてますが、くれぐれも気をつけてください。

   無事の帰りをお待ちしています、渋野さん」


忠和「ありがとう。かならず成功して帰ってくるよ、井上さん」


胡桃「ご武運をお祈りしています」


一花「晃司さんも、今回も任に就くことがあったら、気をつけてください」


晃司「ありがと一花、でも多分忠和が、かたずけてしまうと思うけどね」


    こうして晃司と忠和は広島港に戻ったのであった。


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