第14話 過去にて2
4人は人気の無い場所に到着した。
園田一花「晃司さん!」
一花はいきなり、晃司に抱き着いた。
岡本晃司「一花、ほんま君らも、こっちの世界にきてたとはね」
一花「こんなこと言っちゃなんですけど、晃司さんがこの世界に来ていて、
嬉しかったです。やっぱり不安だったので」
晃司「実は俺も、君がこっちに来てるって、知って嬉しかったよ」
一花「そうなんですか?私、夕べなんか待ち遠しかったのかなんだか、
よくわからないですけど、眠れなかったですよ。
私、目の下にクマができてないですか?せっかく会えたのに、
そんなんだったら、恥ずかしいですよ」
晃司「大丈夫よ、クマなんかできてないよ。いつも通りかわいいよ、一花」
忠和と胡桃は一瞬、目を合わせたが、お互い恥ずかしさでつい、
目をそらしあってしまった。
そして胡桃が切り出した。
井上胡桃「あの2人、完全に自分たちの世界に入ってますね」
渋野忠和「あはは、そんな感じかな」
胡桃「それにしても、渋野さんが、こっちの世界に来てるって知った時、
正直うれしかったですよ。なんか安心してしまったというか、
なんというか」
忠和「実は俺も、井上さんがこっちの世界に来てるなんて
聞いて、嬉しかったよ」
胡桃「ほんとに?なんか運命かもしれないですね。それと私、最近
眠れなくて、夕べも寝付けなかったんです」
忠和「最近ずっとなの?それは体にも、精神的にも悪いよ。
どうしたの?なにかあったの?」
馬鹿、鈍感、と胡桃は言いたくなった。
胡桃「まあ何となく、ただ今はひょっとすると、私の提案した内容が
採用されて、新たな仕事が出来そうで、そっちの方に気が
向いているのかもしれないですけどね」
忠和「伊藤さんの提案したことが、なにか軍に採用されるの?
それすごいことじゃない?」
胡桃「いやまあ採用されれば、それなりにってとこですけどね」
忠和「その辺についても、4人で色々話し合う必要ありそうだね」
胡桃「そうですね、っていってもあの2人まだイチャイチャ
してるんじゃないですか?」
忠和「ちょっと呼んで見るよ。おおい2人とももういいか?
これからの事とか、4人で話さないといけないぞ」
晃司「そうやったな、再会を喜ぶのは、この辺にして、4人で
必要な話しせんとあかんかったな。じゃあ集まろう」
忠和「4人集合したところで、俺から話すけど、特に井上さん、
俺、今度出兵するよ。これが初陣になるけどね」
胡桃「そうなんですか?まだ私たち、正式な軍属ですらないですよね、
それなのにいきなりですね」
忠和「うん、晃司の仲介で、山本五十六長官に任務があれば、こちらに
回して頂けるように、進言したのよ。
これに決定的に成功すれば、中尉待遇として山本長官の
事実上、参謀の一人として、迎えてくれると言う条件なんだよ」
胡桃「中尉待遇ですか、私は渋野さんを信じます。きっと成功して
その通りになると思いますよ」
忠和「ありがとう井上さん。この作戦にあたっては、全力を尽くすつもりだよ」
一花「中尉待遇だったら、山本長官の腹心の一人として、とり上げられると
思いますよ。
晃司さんは最初、山本長官の腹心の座を獲得するために、
成功すれば中尉待遇という条件で、ハーバード・フーヴァー所長を
味方につけることに成功しました」
忠和「晃司、お前あのフーヴァーを味方につけたのか?、やるなあ、お前」
晃司「アメリカ西海岸にのりこんだけど、まあ賭けの要素もあったし、
通訳の人たちの機転や、山本長官の配慮が無かったら、とっくに
おだぶつやったけどな」
忠和「お前は、ほんとのんびりしてるようで、度胸あるよな。
俺もそこまでできるかどうか、自信ないぞ」
晃司「あんまり褒めんとってくれ、さっき言うた様に、色んな人の
助けや、運が良くなかったら、出来てなかったことやし」
忠和「まあ交渉の内容とか、どんな方法をとったか、ある程度
わからんでもないがな」
一花「晃司さんは、何か任務を与えられたんですか?」
晃司「今回は、俺はまだ特になんも任務は受けてないよ。ただ左官にも
なったし、実際、連合艦隊全体の作戦に、意見せんとあかんよう
なると思う。君らの方はどうなんよ、一花」
一花「私たちは今回、胡桃の提案で女性下士官、女性将校の養成学校の
設立を具申して、二人ともその教官の道を目指す方針でいます。
そのために、伊藤次長に私たちの正体を明かさないといけないと思い、
そうしました。
そしたら次長、今までより心を開いてくれて、これを最優先で
進めてくれています」
忠和「井上さん、君の提案ってそういう事だったのか、それがかなえば
すごいことだよね。
君たちのこれからの仕事も出来るし」
胡桃「あくまでもさっき言ったように、出来ればの話ですけどね。
どうやら今、国会で議論中のようですよ」
一花「これが出来れば胡桃は、少尉待遇で軍属に迎えられます」
忠和「そうか少尉か、内閣までいったのかあ、それならもうすぐだね。
可決されるといいんだけどね。
お互い成功して、軍属になれればいいんだけどね」
胡桃「きっとお互い成功しますよ、そう信じましょ」
忠和「そうだね、そう考えないとやってられないしね。
前向きだね、君は」
胡桃「そんな、それで、よかったら大体の渋野さんの、任務の概要を
伺えれば、嬉しいいんですが」
忠和「まあ永野総長くらいには、言っていいかとは思うけど、
あまり口外しないでね」
胡桃「分かりました、その辺は大丈夫です。いいわね、一花」
一花「私も大丈夫よ」
忠和「今回はイギリスとの提携を守備するために、インド洋方面の
防衛の任を受けたんだよ。
中国が攻めてこなければ、二か月ごとに晃司と交代なんだけどね」
一花「晃司さんも出陣ということになるんですか?」
晃司「まあもしそうなったとしても、今回は忠和の作戦を
俺も採用しようと思ってるんよ。
それなら忠和の功績にもなるからね」
胡桃「私が言うのも出しゃばりすぎかもしれませんが、岡本さん、
渋野さんの事を考えて頂いて、ありがとうございます」
晃司「ええよええよ、こっちも誠一に将校になってもらわんと、
やりにくいからね。
まあ俺らの方は今の所そんなとこかな、君らの方は他にないかな?」
一花「今の所はそんな感じです。他に特には」
忠和「ああ晃司、今おぼろげに作戦を一段落、考えてみたんだけど、
お前スパイについて何かないか?」
晃司「スパイか、今こちらで動いてもらえるかわからんけど、
それやったら面識ある人が2人おるぞ」
忠和「その2人に今回の作戦に、参加してもらいたいんだが、
なんとかならないか?」
晃司「それなら前回と同じように永野総長に相談してみよう。
どうにかなるかもしれん」
忠和「ほんとに、お前がいてくれて何かと助かるよ、晃司」
晃司「いやいや、お安い御用やこのくらい。まだなんかしらんけど
結局お前が赴任中、中国が攻めてこんかったら、俺に
交代せんとあかんしな」
忠和「ああそれもあったか。なんだかんだで、ちゃっかりしてるな、
お前は」
晃司「まあ、あの2人が動けるかどうかわからんけど、そん時は
スパイが必要なら、永野総長か伊藤次長に相談してみよう」
忠和「そうだな、それでなんとかなるかな。2人ともこれは
口外しないでね」
晃司「じゃあお互いの健闘を祈って頑張ろう。
今日の所はこの辺しとこう」
一花「そうですね。これから色々あると思いますが今後も、4人で
話し合う機会を設けましょう」
晃司「そうやね、じゃあ皆、総長の所へ戻ろう」
一花「はい、それと晃司さん、もう少佐の辞令は受け取られましたか?」
晃司「君らのいない間に、受け取ったよ。じゃあ行こう」
こうして4人は話を終え、軍令部へ戻ったのであった。
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