第11話 行動 主人公編2

山本五十六「早速だが渋野君、君に任務を与える」


渋野忠和「はい山本長官、承りたく思います。背景を含めてその内容を

     伺えますか?」


山本「うむ。では説明しよう、晃司も聞いておいてくれ。

   現在の世界情勢と日本の立場は、草鹿学校長から聞いていようが、

   今日本は新しくできた、毛沢東率いる枢軸国の、中華人民共和国と

   事実上対峙する局面にある。

   あの国は、先ほども話したように、かつての大日本帝国の首相で、

   政権の支配者であった、近衛文麿が裏に居るとされているのだが、

   彼がより実権を握っているなら、またこれからそうなるなら、

   この日本に復讐してくることが、十分考えられる。

   それで今日本は、吉田茂首相を筆頭として、連合国に属したのだが、

   これでいっそう中国との関係が悪化して、戦争状態に突入したんだ。

   日本は連合国に属しているため、まずイギリスとの提携が欠かせない。

   そこでインド洋方面の防衛が必要となる。

   その方面の防衛に渋野君、今回君を俺の直属として、当該方面の

   司令官の参謀に、全指揮権を与えて、派遣しようと思う。

   中国が攻撃してくるとしたら、恐らくニコバル諸島あたりと

   考えられる。

   その方面には、細萱戊子郎中将の第五艦隊が、現在展開している。

   細萱戊子郎中将に、書面で命令書を書く故、君自身から

   手渡してくれ。

   おおよそ二か月経って攻めてこなければ、晃司と交互に交代で

   任に就いてもらう。

   その際君の素性を明かすが、細萱戊子郎中将と彼の旗下の

   角田覚治少将には、ミッドウェー作戦の時、晃司と園田中尉の

   正体を永野総長より伝えてあるから、話が早いはずだ。

   今回は防衛が主任務だ、細かい事は細萱中将と角田少将と

   相談して決めてくれ。

   君は実戦は初めての様だが、能力についてはさっき晃司から

   大雑把だが聞いた。

   責任は現地司令官と、最終的には俺がとる。

   後は、君の思う様にやってくれればいい。

   確実に成功すれば、中尉の待遇で、俺の直属に迎える。

   正式な辞令も、俺から軍令部へ、嘆願するつもりだ。

   以上だ」


忠和「了解致しました、ありがとうございます。山本長官始め

   細萱中将、角田少将の責任と名誉を傷つけない様、

   心がけながら、全力で今回の任務にあたります」


山本「うむ。任せたぞ。ああそうだ、君を紹介したい人物が、

   この艦にも二人いる。

   宇垣参謀長と黒島首席参謀だ。

   連合艦隊には、その二人と、あと幾人か晃司と園田中尉の

   正体や、君らの世界の日本のことについて話してある。

   とりあえずこの艦の二人を、君に紹介したい。

   晃司も久しぶりだろ。

   お前からしたら少しの間だったが、彼らにとってはざっと

   半年ぶりになるからな」


忠和「はい、是非とも、山本長官」


岡本晃司「そうですね、僕にとってはこの間ですが、あの二人に

     とっては確かに、半年ぶりになるんですもんね」


山本「二人ともそこで待っとれ、今呼び出す」


    山本は宇垣と黒島を、作戦室に呼んだ。

    先に宇垣が艦橋に居たので、すぐに来た。


宇垣纏「長官ただいま参りましたが、岡本大尉じゃないか、

    失礼あの後少佐に昇進したんだね、久しぶりではないか。

    山本長官から君と園田少尉、中尉になったんだったね、

    彼女が、二人して永野総長の前から突然消えたと、

    聞いていたがどうなっていたんだね?」


晃司「お久しぶりです、宇垣参謀長。こちらは積もる話は、殊更ない

   ので黒島首席参謀が、こられてから分かる範囲でお話しします。

   とりあえずこちら、私の未来での防衛大の同期生の渋野忠和です」


忠和「始めまして宇垣参謀長、岡本晃司の同期生の渋野忠和と申します。

   まだ正式な軍属じゃありませんが、こちらにお邪魔させてもらい

   ました」


宇垣「岡本少佐の同期の、始めまして、参謀長の宇垣纒だ、宜しく。

   岡本少佐、この度は園田中尉は一緒じゃないのかね?」


晃司「ええ、今こちらの世界にいるか、確認されているのは、

   私と彼だけです」


山本「まあ俺もさっき、彼らと会ったとこだし、黒島が来てから

   まとめて話をしよう」


    しばらくして黒島が姿を現した。


黒島亀人「黒島亀人入ります。何か作戦ですか?山本長官」


山本「いや、そちらを見て見ろ、黒島」


黒島「あ、岡本大尉、いやあの後少佐に昇進したんだったな、

   久しぶりじゃないか。

   ミッドウェーの後、永野総長の目の前で園田少尉、今は中尉か

   彼女と一緒に、いきなり消えたらしいじゃないか、それから

   どうしてたんだ?」


晃司「お久しぶりです、黒島首席参謀。宇垣参謀長にも同じ質問を

   されたのでお2人にお答えします。

   あの後、私の元の世界に戻っていたんです。

   それから、向こうでは1か月としないうちに、またこの時代の

   日本へ、転移したんです」


宇垣「1か月以内?こちらでは君たちが居なくなってから、半年程

   経っているが、どうなっているのかね?」


晃司「ですよね。でもそこは私にも謎ですが、最初と同じ様な現象が、

   起きたのは覚えています」


黒島「そこら辺は不思議だが、お前さんそのうち、自由に時を行ったり

   来たり出来るような、人間になるんじゃないか」


晃司「黒島首席参謀らしい発想ですね、出来るならそうなりたい

   ものですよ」


黒島「そうなったら、俺にもその能力くれよ」


晃司「んー、だめです、そうなったら独占させてもらいます」


黒島「お前さん、けちくさくなったんじゃないか?」


晃司「冗談ですよ、まあもしそう出来るなら、黒島首席参謀だけとは言わず、

   私の知っている皆さんを、我々の世界へお連れして、

   色んな方と、交流を深めてもらいたいものですよ」


黒島「ほんとに、こんなことが頻繁に起こったら、そんな空想の

   一つや二つしてしまうよな」


晃司「あ遅くなりましたが黒島首席参謀、こちら未来での、

   私の防衛大の同期生の渋野忠和です。

   宇垣参謀長には先ほど、紹介させて頂きました」


忠和「初めまして黒島首席参謀、岡本晃司の防衛大の同期生で4年の、

   渋野忠和と申します。

   山本長官はもちろん、宇垣参謀長と黒島首席参謀のことも、

   自分なりに、よく存じているつもりです」


黒島「初めまして、黒島亀人だ。山本長官直属の首席参謀をさせて

   もらっている。君も未来人なんだな、そりゃ光栄なことだ、

   宜しくな渋野・・、ええと階級は」


山本「ああその件についても、二人に話さなければならんな。

   彼には先ほど任務を言い渡した。

   全作戦権を与えることにした。

   簡単に言えば防衛の任だ。

   この作戦が決定的に成功すれば中尉に昇格させるつもりだ。

   それで俺の直属の、参謀扱いにしようと考えている。

   彼は実戦経験はまだないようだが、能力は晃司のお墨付きだ。

   彼らの事を知らない連中には、彼は晃司の海軍兵学校の

   同期生と言う事にしておく」


黒島「そうか宜しくな渋野次期中尉」


宇垣「私もだ、改めて宜しく、渋野次期中尉」


忠和「お二方、次期って言っても成功すればの話ですよ。

   それも決定的にと言う事で。

   初陣でこんな重責、敗北しないだけでもこたえますよ。

   まあそれが、最終手段としたらいいわけですが、今回は」


山本「忠和君、最終手段ということは、何か考えているな」


忠和「と言っても、あまり欲張らない様にします、山本長官。

   返って致命傷を受けるようなことがあっては、本末転倒なので」


宇垣「大丈夫だろう、君は味方の将兵の命を預かる責任を

   分かっているようだし、簡単には負けないと思うよ」


黒島「問題ない。一回失敗しても二回成功すれば大成功だ」


忠和「お二方励まして頂いて、ありがとうございます。黒島首席参謀、

   それなら一つの作戦で、それが出来れば、その作戦は大成功と

   言う事ですね」


黒島「渋野次期中尉、どうやら君も、二宮少佐に負けないくらい、

   面白い発想が出来るようだな」


忠和「お褒め頂き光栄です、黒島首席参謀。今回それを取り入れるか

   どうかはともかく、とりあえず今回の作戦が、成功すれば、

   及第点を付けて頂いたものと、解釈させて頂きます」


宇垣「慎重なタイプの様だね」


黒島「確かに慎重ですね、ただ積極性も伺えますよ」


山本「あまり実戦前に、色々と目の前で評価するのも何だろう。

   特に彼は今回が初陣だ。

   未来では今でいう、将校の養成学校にあたる大学で卒業まじかだ。

   とにかく実戦で経験を積んでもらおう。

   まあ宇垣参謀長と黒島首席参謀には、言っておこうと思うが

   忠和君には、今回はインド洋方面の、防衛にあたってもらう。

   以上で皆、他に話すことはないか?無ければこれで解散とする。

   皆持ち場に戻ってくれ」


    ここで5人は解散したのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る