第10話 行動 主人公編1

    草鹿任一、晃司、忠和の三人は、大和に向かう途上にあった。


渋野忠和「草鹿校長の前だが、言わせてもらう、晃司」


岡本晃司「どうしたんや?」


忠和「山本長官に会ったら、俺に任務を与える様、進言ってくれないか?

   そしてそれが成功した折りには、その内容にもよるが、

   中尉待遇で俺を旗艦、出来れば艦橋に置くよう、お前の地位と

   面識で、山本長官に言ってくれないか?」


晃司「ああ分かった、その方が俺にとっても都合がええわ。他にもなんか

   あったら俺に言うてくれ、しばらくはなんとか協力するわ」


忠和「すまんな、晃司、助かるぞ」


晃司「かまわんかまわん」


草鹿任一「ほほう」


晃司「校長、山本長官は今日は、大和にいますよね?」


草鹿「何もない限り、旗艦大和に居るはずじゃよ」


晃司「ですよね、まあ居なかったら、その辺で時間つぶせばいいですしね」


草鹿「そうじゃの」


    そして三人は広島港に停泊中の大和に着いた。


忠和「これが大和かあ、でかいし、やっぱ戦艦ってかっこいいよな」


晃司「まあ俺らの時代は、戦艦なんかもうないからな」


草鹿「そうなのか?君らの時代は戦艦が無いのか?」


晃司「ええ主力は空母で、この時代と変わらないというより、いっそう

   空母が主力になりますが、戦艦は全くなくなります」


草鹿「ふむう、そうなのか。まあとにかく艦橋へ上がろう」


    艦橋の前で士官が、3人に声を掛けてきた。


士官「ここから先は艦橋です。許可が無いと入れませんが、ってあれ、

   岡本大尉いや少佐に昇進したんだったっけ」


晃司「ご無沙汰しています。山本五十六長官に会いに来たんですが、

   おられますでしょうか?」


草鹿「草鹿任一と、岡本少佐と、少佐の同僚が来たと、言って

   くれればいい」


士官「これは、草鹿任一兵学校校長でいらっしゃいましたね、ただいま

   伝えて参りますので、少々お待ちください」


   士官が艦橋に入っていき山本に伝えに行った。

   しばらくして一人の将官が出てきた、山本五十六大将であった。


山本五十六「おお晃司ではないか、久しぶりだな、草鹿学校長も元気そうだな」


晃司「お久しぶりです、山本長官」


草鹿「ご無沙汰しております、山本長官」


山本「詳しい話は作戦室でしよう。晃司、彼はお前の同僚と聞いているが、

   作戦室に通して、話をして問題ないのか?」


晃司「ええ長官、詳しい紹介は、作戦室でしますので、行きましょう」


山本「そうか、では行こう」


    4人は他に誰もいない作戦室に入った。


山本「晃司、永野総長からお前と園田少尉いや中尉になったのか、

   彼女とが、一緒に二人で、目の前から消えたと聞いていたぞ、

   どういうことなんだ?」


晃司「はっきりした事情は、未だに謎なんですが、元の世界の日本に

   戻っていました」


山本「元の日本に?そうだったのか」


晃司「ええ、ただこちらでは、あれから半年程経っているみたいですが、

   向こうでは、一か月と経ってませんでしたが」


山本「そうなのか?それはまた奇妙なことだな」


晃司「まあ、あそれと紹介します長官、こちら僕の防衛大の同期生で、

   同じ寮の部屋の渋野忠和です」


忠和「お初にお目にかかります山本五十六長官、渋野忠一と申します。

   岡本晃司とは、防衛大の同期生の同じ4年です。

   お会い出来て光栄です」


山本「おおそうか、渋野忠一君か、晃司と同期生で、英語で言う

   ルームメイトなのだな」


忠和「そうですね、確か山本長官はアメリカへ留学された経験が

   ございますよね、だから英語は良くご存知なのですよね」


山本「まあそうだな、多少の読み書きなら問題ないぞ。それと晃司、

   あとお前、ミッドウェーの後、少佐に昇進したんだったな」


晃司「ええまあ。それはそうと山本長官、草鹿校長から二人して現在の

   世界情勢と日本の立場を伺いましたが、日本もまた戦争状態に、

   入った様ですね」


山本「うむ、中国では毛沢東が蒋介石を事実上追い出し、中華人民共和国を

   樹立して枢軸国に入った」


晃司「そして日本は戦争の危機に際して、連合国に属したんですよね、

   それでこの様な状況になったと、伺っていますが」


山本「そうだ、どうやら裏では中国に追放した近衛文麿元首相が、

   糸を引いている様なのだ」


晃司「らしいですね」


忠和「大切なお話し中すみません山本長官、晃司トイレどこかわかるか?

   ちょっと急に行きたくなった」


晃司「近くのトイレならこの下の階にあるぞ、俺は山本長官と話しが

   あるから、辺りの人にきいてくれんか?」


忠和「わかった、ではちょっと失礼します、山本長官、草鹿校長」


    忠和はそそくさと作戦室を出て行った。


晃司「長官、もし何か任務があれば、忠和に与えてやってくれませんか?

   彼は防衛大での成績は、僕よりよっぽど上です、能力は僕が

   保障しますので。

   出来ましたら、成功すれば中尉待遇で、大和艦橋に迎えられる様な、

   任務がいいのですが」


山本「中尉待遇か、わかった目ぼしい任務があるが、本当に実戦も

   大丈夫だろうな晃司、彼は」


晃司「実戦経験はないはずですが、寮の部屋でもいつも僕と実戦形式で

   口頭で戦略面でも、シミュレーションしてますので、

   大丈夫だと思います」


山本「まあお前がそういうんなら大丈夫だろうな、任せてみよう。

   内容は、彼が帰ってきてから直接伝える」


草鹿「そういう事なら私は席をはずしましょうか、長官」


山本「ああそうだな、すまんがそうしてくれるか、草鹿校長」


草鹿「それなら長官、私は一応ついてきた来ただけなんで、お役目

   御免だと思います。

   渋野君が帰って来たら、彼に挨拶だけして、兵学校へもどります」


山本「なんだ来て早々か、俺も任務中だし何か仕事を用意できれば、

   よかったんだが」


草鹿「まあ私も、兵学校の方もあまり放っておくのもなんですし、

   近いので問題ないですから」


山本「そうか、ではその辺は任せた。それと晃司、今回の任務の件、

   お前ではなく渋野君自身からの提案だろう?」


晃司「まあその、そういう事です長官、流石ですね」


    山本は、忠和が晃司に競争心を持っていることを見抜き、

    同時に、二人を競争させ二人を、引いては黒島を始め

    参謀全体の、更なる向上と活性化を狙ったのである。

    そこに忠和が戻って来た。


忠和「失礼しました皆さん、ただいま戻りました」


草鹿「渋野君、二人には話したが、私はここで失礼するとするよ。

   後は山本長官に任させてもらったのでな」


忠和「お早いですね、今日もお手数をおかけしました。

   また機会があれば宜しくお願いします。」


草鹿「うむ、岡本君、渋野君を宜しく頼むね、では山本長官、

   私はこれで失礼させて頂きます」


山本「うむ、近いとは言え、わざわざご苦労だったな」


草鹿「いえいえ、それではまた」


    草鹿任一は敬礼して作戦室を後にして、兵学校への帰路に

    ついたのであった。


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