第7話 行動 準主人公編1

    一花と胡桃は軍令部までいき、下士官に声を掛けた。


園田一花「お疲れ様です。私は海軍軍令部永野修身総長直属の、園田一花と言い

     ますが、永野総長がおられましたら、お取次ぎ願いたいのですが」


下士官「園田一花中尉ですか。軍服ではないようですが、その服装は

    どうしたのもでしょうか」


一花「訳あって今の服装で、軍服を着てないのですが、永野修身総長か、

   伊藤整一次長に園田一花が来た、と言って頂ければわかると思います」


下士官「わかりました、園田一花中尉ですね。少々お待ちください」


    下士官は中に入っていった。


一花「ああ流石に、どきどきするよ」


井上胡桃「私もそうだけど、もう後戻りは出来ないからね、

     なるようになるよ」


    しばらくして下士官が戻って来た。


下士官「園田中尉、今永野総長はおられなく、伊藤次長がお会いになる

    そうなので、ご案内します」


胡桃「どうやら問題なかったようね」


一花「まだはっきりしたわけじゃないけど」


下士官「こちらです。お入りください」


伊藤整一「久しぶりではないか、園田中尉」


一花「あ、伊藤次長、覚えてくださいましたか」


伊藤「もちろんだとも。しばらく姿を見せなかったようだが」


一花「ええまあ、色々とありまして」


伊藤「そうか、あまり詮索はしないでおこう。それでそちらは?」


一花「私の友人で井上胡桃と言います。今は詳細は控えさせてもらいますが、

   私と同じく、軍関係に通じております」


    胡桃は、伊藤整一には、一花達が未来人だということを、言って

    いないのだな、ということが分かった。


胡桃「初めまして、伊藤整一次長、井上胡桃と申します。

   園田一花とは以前からの、付き合いです」


伊藤「お初にお目にかかる井上胡桃君。軍関係に通じているということだが、

   前々から気になっていたんだが、特に園田中尉君も含めて、

   一体二人とも、どういう素性なんだ?」


一花「詳細については、永野総長を交えて、いずれ伊藤次長にも、お話し

   しなければならないと、思っておりましたので、出来ましたら

   私たちの詳しい素性については、永野総長が帰ってこられてから、

   お話しさせて頂きたいのですが」


伊藤「まあ、わかった。君たちの素性等については、やはり極力詮索

   しないでおこう。

   どうやら岡本少佐も、同じような感じに思えるがな、

   まあそれはいいか」


一花「ありがとうございます。閣下の広い心に、安心致しました。ところで、

   今はいないということですが、永野総長はどうなされたんですか?」


伊藤「永野総長は、今アメリカに滞在中だ。総長の席を担っているので、

   ちょくちょく帰国はされるがな」


一花「そうですか。では私たちの素性等は、永野総長が戻られてから、

   伊藤次長に話させて、頂きたいと思います。

   そのほうが説得力も、信用もありますので」


    ここで胡桃は軍令部内での、一花たちの素性についてや、

    立場等を大雑把に把握した。


伊藤「分かった、それまでその件は待とう。それと、ここを久しぶりながら、

   総長がおられないときに、訪ねてきたというのは、何か理由が

   あるのだろう。

   私で出来ることがあれば、なんとかするが」


一花「お心遣いありがとうございます。実は今私たち、事実上仕事が無くて、

   困っている状況なんです。

   次長から、何か私達に出来る仕事があれば、与えて頂ければ、と思い

   参った所存です。

   さっきも申しました通り、この井上胡桃は、軍関係において、私より

   優秀ですので、同じく使って頂けないでしょうか」


伊藤「分かった聞いておこう。なにか本当に事情が、よく飲め込めないのだが

   まあいい、君達に見合った仕事を考えておこう。

   井上君、君は園田中尉にも勝るほどの、軍関係の手腕の持ち主

   ということなのだな。その辺も信用して、考慮しておこう。

   中尉の園田君と、その友人に見合う君たちに、別室等を用意しておこう。

   それは同じ部屋でいいかな?」


一花「それで十分です、次長。色々ご配慮感謝致します」


伊藤「うむ、まあすぐに部屋の手配をするから、仕事が決まるまで、

   そちらで待機しておきてくれ」


一花「分かりました、ご指示に従います」


胡桃「伊藤次長、永野総長が戻ってこられるのが、いつになるかわから

   ないのであれば、待っている余裕がありません。

   私に提案がありますので、お聞き願えませんか?」


伊藤「なにかね?」


胡桃「今の所、具体的な理由はまだ述べられませんが、園田中尉を始め、

   私たちは軍関係の知識等がございます。それも将来的には将校として」


伊藤「ほう、園田中尉が言うだけあって君も、女性ながらにして、

   将校としての、自信があるのか」


胡桃「自信というほどのものではありませんが。でお尋ねしたいのですが、

   今現在、その女性として軍属はおられますか?それも将校も含めて。

   更にはそれらの、養成学校についても」


伊藤「いやそういったものは、一切ない」


胡桃「ではそこで、提案というか、僭越ながら具申したいのですが、

   これからは、女性の軍属も必要になってくる、時代だと思います。

   もちろん将校も含めて。

   私はその女性下士官、更に女性将校を育てる養成学校を、

   設立することを提案します」


    下士官とは、上から、曹長、軍曹、伍長のことであり、将校とは

    上から将官、左官、尉官であり、おもに尉官を、士官と言い、

    曹長の上が、准尉を挟んで少尉、つまり士官である。

    ちなみに兵とは下士官の下であり、上から兵長、上等兵、一等兵、

    二等兵を言う。


伊藤「なんとまあ奇抜な。女性下士官と、女性将校を目安にした、養成学校の

   設立とは」


胡桃「女性でも、少々体力面等は、男性に劣ったりもしますが、十分将校も

   務まると思います。現にここに、園田中尉が居ます。

   彼女が模範となって女性の下士官、更には将校の育成を考えたいと

   思います。

   それに従事するなら、私も階級こそ今はありませんが、指導に

   当たろうと思っています」


一花「やりたいことがあるって、そのことだったのね、胡桃」


胡桃「まあそういう事。一花、あんたの権限と地位を利用させてもらうようで

   悪いけど、どの道仕事が見つかりにくいんだったらこれが

   丁度いいんじゃない?」


一花「まあそれが出来ればだけど」


伊藤「女性下士官と、女性将校の養成学校の設立に、更にその教育に当たる

   というのか。大きく出たもんだな。

   確かに今は園田中尉がいるが、そんなに女性が男性と同じ様に、

   働けるかな?」


胡桃「確かに、色々と差はあるとわかりますが、女性でも十分出来る人は、

   少なからず、いると思います」


伊藤「そう言い切れる根拠は何かと問うと?」


胡桃「それについても、永野総長を交えて、お話し出来たらと思いますので、

   ここでは具体的には、控えさせてもらいます」


伊藤「うーん、女性下士官に女性将校か。その養成学校設立の話などは、

   私の一存ではどうにもならん。

   これは永野総長が帰国してから、君たちのことも含めて、色々と検討も

   含めて、話をしようではないか。

   総長が帰国するまでの間だけでも、君たちに仕事を与える様、

   手配しておこう」


胡桃「お聞き届け頂いて、ありがとうございます。また永野総長にも、

   お話しさせて頂きますが、大体以上が大雑把な、私の提案です」


伊藤「井上君、君の主張は大体わかった。まあこの件は、永野総長が

   帰国されるまで、私のほうで確認して、保留とさせてもらっておこう。

   二人とも以上かな?」


胡桃「私の方はこの様な所です、次長」


一花「私も彼女から、ここでいきなり、この提案を聞かされましたが、

   自分でも積極的に考えておきます。

   私も今の所それくらいです、次長」


伊藤「そうか、では二人ともすぐに部屋を手配させるから、そちらで

   控えてくれていたまえ」


一花「はい、では失礼致します」


胡桃「失礼致します」


    一花と胡桃は用意された別室へ通され、そこで待機した。

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