第8話 行動 準主人公編2

井上胡桃「ね、一花、心配することは、なかったでしょ。以前いた、

     あんたたちの世界と、同じだったでしょ」


園田一花「確かに、今回は結果オーライだったけど、これからは、こんな

     無茶なことは、したらだめだよ、胡桃。

     私たちはこの世界にいる限り軍人として生きていくんだし」


胡桃「わかったわかった、こんなむちゃは、今回だけにしときますよ。

   それと大体の事情は、伊藤次長とのやり取りの中でわかったけど、

   私たちや、岡本さんの素性や事情を知っているのは、

   具体的に誰誰なの?」


一花「えっと、軍令部では永野総長だけよ、そのうちに伊藤次長にも、

   話さなくてはならないけどね。

   それと、連合艦隊では、山本五十六司令長官と、宇垣参謀長と、

   黒島首席参謀は少なくとも知っておられて、その三人とは、

   私もお会いしたことあるよ」


胡桃「へぇすごいね。永野修身総長に山本五十六司令長官か。

   会うだけでも私、緊張してしまいそうなのに、あんたたち

   その直属で、功績も立てたんでしょ」


一花「それもこれも、晃司さんの手腕が、すごかったからなのよ」


胡桃「はいはい、のろけ話は、こちらの世界に来てから、何回も聞いたよ」


一花「のろけって、本当の事だけど、まあそうなっちゃうかあ。

   それにしても、女性下士官と、女性将校の育成と、

   その養成学校の設立だなんて、私はおもいつかなかったよ。

   こう言っちゃなんだけど、自分は女性将校でありながら」


胡桃「あんたしっかりしなさいよ。元々私達、自衛官の幹部候補生

   なんだから、昔の軍隊でいう、将校になる身でしょ」


一花「そうだったね。それにしてもそんな話、永野総長を通さずに、

   直接伊藤次長に持ちかけるなんて、ひやひやしながらきいてたよ。

   伊藤次長が寛大な人で、良かったよ」


胡桃「一花が女性でありながら中尉だし、それを色々と利用させてもらった

   訳なんだけどね」


一花「私は、だしにされたってことだよね、ほんと」


胡桃「あんたが自分で考えつかないから、私が考えついただけよ。

   それにしても、これで私のいわゆる、特許は申請できたようなものね」


一花「ほんと胡桃、あんたって人はもう、如才(じょさい)ないんだから」


胡桃「後は一花、あんたの中尉の権限で後押ししてね。あんたの働き口も

   作ってやるんだから、文句ないでしょ?貸し借り無しね。

   そうだ、あんたの立場と経験で、永野総長に、この提案が通ったら、

   私を、少尉待遇で扱ってくれると、進言してよね」


一花「ほんと和美にはかなわないよ」


胡桃「まあ後は永野総長次第ね。あの人なら、なんとかしてくれる

   でしょう。永野総長の、人となりは、私もよく文献なんかで

   知っているつもりよ、有名だもんね」


一花「確かに私も実際に、永野総長には、お仕えさせてもらったけど、

   永野総長なら、そういう奇抜な発想受け入れてくれて、学校の

   一つくらい作ってくれそうだけど、女性下士官や、女性将校の

   養成学校っていうのは、大丈夫かな。

   それに、ほぼ軍令部の仕事は、総長は伊藤次長に任せてるし」


胡桃「やっぱりそれも、史実通りだったのね」


一花「そうよ、山本長官が独自の行動をとるっていうのもそうだけど、

   晃司さんと私の斡旋で、なんとか最小限に抑えたけどね」


胡桃「あんたたち、大変なことをしてきたのね」


一花「まあ半年程しか、以前もこの世界にいなかったけどね」


    二人が会話していると、そこへ下士官が訪れた。


下士官「失礼します。園田中尉、今しがた、伊藤次長から連絡が入り、

    永野総長が帰国されて、こちらへ来られたと言うことです。

    伊藤次長から、永野総長は園田中尉の事を、お聞きされ是非とも、

    お会いしたいとのことですので、伝言をたまわりました。

    永野総長は、ただ今ご自分の執務室へ、いらっしゃるとのことで、

    お訪ねして頂きたいとのことです」


一花「永野総長が?こんなに丁度いい時に、帰ってこられたのですね」


下士官「はい。宜しければご案内しましょうか」


一花「いえ、執務室なら分かりますので、私たちだけで訪ねてみます。

   ありがとうございます」


下士官「はっ、では私はこれで失礼させて頂きます」


一花「胡桃、聞いての通りよ、こんなにいいタイミングで、永野総長が

   帰ってこられたわよ」


胡桃「まさにグッドタイミングね。じゃあ一花、執務室へ案内して」


一花「うん、じゃあいこ」


    一花と胡桃は、永野の執務室を訪れた。


一花「園田一花中尉はいります」


胡桃「失礼致します」


永野修身「おお久しぶりだなあ、園田君。君らが私の前からいきなり

     姿を消してから半年ぶりくらいか」


一花「ええその様ですね。一旦元の世界に、戻っていました。あちらでは

   一か月と経っていないのですが。

   また転移して、この世界に戻って参りました」


永野「元の世界に戻っていたのか、であちらでは一か月も経っていないのか。

   では、君からしたら、そんなに久しぶりではないな」


一花「そうですね。あ紹介が遅れましたが、こちら私と未来で、防衛大の

   同期生で井上胡桃です」


胡桃「初めまして永野修身総長閣下。園田一花の防衛大の3年の同期生で、

   寮の同じ部屋の、井上胡桃と申します。

   お会い出来て光栄です」


永野「おお君が、井上胡桃君か。伊藤次長から園田君の友人と、

   聞いていたが、未来で園田君と防衛大で同期の女性だったのか。

   君の提案も伊藤次長から聞いているよ、大胆な発想だけど

   未来ではそうでもないのかな?」


胡桃「はい総長。私たちの世界の日本では、軍隊こそないですが、

   お聞きされているかもしれませんが、国防にあたる組織、

   自衛隊には女性幹部、この時代の軍で言う所の、

   将校が、少なからずいます」


永野「そうか。この時代でもアメリカでは、年齢や性別の区別こそ

   つけるものの、その分け隔てはあまりしないものだが、君らの

   日本でもそのようだな。この世界の日本でもそうなるのかな」


胡桃「そういう世の中を作るべきだと思います。私たちの日本や、

   世界では、企業の幹部や、トップから、政治家まで、色んな

   分野で、女性が社会的地位を得ています。

   他の国では女性の首相や、大統領もいるくらいです」


永野「そこまで女性が社会進出しているのか、未来の日本に限らず、

   世界では」


胡桃「はい総長、私たちの日本では軍隊は、ありませんが、防衛にあたる、

   自衛隊は存在する訳で、身体能力は特に、全ての、軍事的な事柄に

   ついて、男性に劣らないとは言いません。

   しかし、女性でも自衛隊幹部はいくらでもいる訳で、軍隊でも十分、

   将校をも務められる女性の人材は、この国にも少なからず、

   いると思います」


永野「うーん、まあそれはわからんでもないが、こと実際に学校を設立して、

   候補生をつのるとなると、伊藤次長以下の賛成だけではなく、政府の

   認可や、陸軍の賛成もいるからなあ、簡単ではないかもしれんぞ」


胡桃「伊藤次長のお考えはどうでしたか?」


永野「次長はどちらかと言うと、肯定的だったが」


胡桃「次長には私たちが、教育の任にあたるとまで、言いましたので」


永野「それも聞いているよ」


一花「総長、この件を政府にまで、認可させるには、少なくとも、伊藤次長

   には、私達の素性を明かす必要が、あると思います。

   岡本少佐の素性も含めて、私たちの正体を、伊藤次長には、今からでも

   明かしましょう」


永野「そうだな、その必要は最低限ありそうだな。ああ少佐かそういえば、

   二人とも昇進してから辞令を渡していなかったな。

   岡本君は、今回は、こっちには来ていないのかな?」


一花「私もそれで思い出しましたが、今回は岡本少佐は、この世界へ来て

   いるか、わかりません。

   少なくとも軍令部には来ていない様なので、連合艦隊の山本長官へ、

   確認の連絡を、取って頂けませんでしょうか」


永野「分かった確認してみよう。それと遅くなったが、君の正式な辞令を、

   渡すから待っていなさい」


一花「それと永野総長、今回の女性下士官及び女性将校養成学校の件が

   通りましたら、発案者で、一緒にその養成にあたる、井上胡桃を、

   少尉待遇で迎えて下さるよう、お願い致します」


永野「うむ、そうだな、将校を養成する任にあたるとなると、最低その

   地位は必要になってくるな」


一花「では総長、私達は一旦、自分達の部屋に戻って待機しておきます」


永野「分かった、要件が済み次第また呼び出すから、そうしてくれたまえ」


    一花と胡桃は自室で待機して、永野は山本に連絡をとり、辞令の

    件や、晃司の件について、指示、確認した。

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