目指せ女神コン優勝!

帝国妖異対策局

目指せ女神コン優勝! 全てを賭して駄女神を推せ!

 惑星ドラヴィルダには7つの大陸がある。


 竈と燻製の女神ラヴェンナが管轄する最大のゴンドワルナ大陸

 弓と純潔の女神エルフリンが管轄する森深きラミニスタ大陸

 秩序の女神ラーナリアが管轄する豊かなるフィルモサーナ大陸

 知識の女神トリージアが管轄する最先端文明があるトゥカラーク大陸

 闇の女神シャリンが管轄する暗黒のミコラシア大陸

 戦の女神ヴァルキリエが管轄する戦を貴ぶファフナール大陸

 融和の女神フランソルが管轄する八百万諸島


 男神たちは惑星ドラヴィルダが属する星系間を飛び回り、外宇宙から侵入してくる邪神との戦いに明け暮れている。

 

 そんな彼らにとっての癒しの一つが、4万年毎に開催される女神ユニバースだ。今回は惑星ドラヴィルダを舞台に7柱の女神たちが、その美を競うことになる。


 アザトースの落とし仔を外宇宙に撃退し終えて、ようやく有給休暇の消化が認められた男神デュランダルは、この女神コンを楽しみにしていた。運よくチケットをゲットすることができたため、直接ドラヴィルダの天上界で見ることができるのだ。


 男神の推しは女神フランソル。彼女は他の女神と比べると明らかに地味かつドジっ子女神だった。それが一番分かるのは、彼女の管轄である八百万諸島。彼女は大陸デザイン時に大きなミスをやらかしてしまい、大陸の大半を水没させてしまっていた。


 ただ幸運なことに、海上に残った数万とも言われる島々の人間たちは、高度な航海技術を持ち発展していった。豊かな海の恵みを得た人々は今でも女神フランソルに常に感謝を捧げている。


 女神コンでは最下位予想のフランソルだが、デュランダルは彼女こそドラヴィルダにおける最高女神に相応しいと信じている。


 その理由はデュランダルが神ホクホク弁当ショップで働いていたときの常連さんがフランソルだったからだ。デュランダルは神ジャージ姿でいつも神からあげ弁当を買ってかえるフランソルに一目惚れしていた。


 だからフランソルが惑星ドラヴィルダで大陸デビューすると知ったときは、陰に日向にフランソルのことを応援した。

 

 フランソルが神シングルCDを出したときには1万年の神給与をつぎ込み、神SNSではいくつもの裏神アカウントを作ってはフランソルを推し続けた。


 だからフランソルが大陸デザインに失敗したという話を聞いたとき、デュランダルは当のフランソル以上に衝撃を受けた。


 しかし、普通ならそこで惑星から退場になるところをフランソルは八百万諸島を盛り立てることで乗り越えたのだ。このときの踏ん張りを見たデュランダルは感動のあまり、自分の生涯をフランソルの推し活に捧げることを誓った。


 そして今、フランソルは彼女にとって人生の一大イベントとなる女神コンに参加する。それはデュランダルはとっても同じく、人生最大のイベントとなるだろう。


 彼はアザトースの落とし仔を撃退した報酬の全てを、今回の女神コンに投入した。コンテストの勝敗はひとえに信仰値の高さ、すなわち人々の信仰をどれだけ集めているのかに掛かっている。


 デュランダルは自分が最高神として管轄している惑星の人々に、今回購入したフランソル関連グッズを全て下賜し、フランソワに祈りを捧げるように全世界各地の聖人たちに預言した。


 やるべきことは全てやった。神事は尽くしたのだから、あとは神天命を待つだけだった。 


 そして女神コンの結果……


 フランソルは当初の神々による予想通り最下位となった。フランソルの落ち込みに反して、デュランダルは意気軒昂で外宇宙に飛び出していった。


 神生涯を女神フランソルの推し活に捧げると決めたデュランダルから見れば、この女神コンは長らく続く戦の中のたかだか1戦でしかなかったのだ。


 小さな敗北にいちいちめげている場合ではない。彼は外宇宙に飛び出すと、報酬目当てに外なる邪神を探して飛び回った。


 必ず邪神を撃退する。そして報酬を得る。その全てを女神フランソルを推すために使うのだ。


 やがて彼は邪神たちから「死神デュランダル」として恐れられるようになった。


~ おしまい ~

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