悪事を暴け! 風説研究会登場
「それはですね。聡くんは足から座られ両手をそれぞれ脚の付け根に置かれました。コレは武道で共通する着座の作法です。それにボクと握手をしたでしょう、中指と薬指と小指の付け根にタコが出来ていました。これは剣道で竹刀を握っているとできるものです。加えて本で不安定な床の上で座っていても背筋が伸びている」
「シャーロックホームズかよ……」
「ボクは本来行動型のホームズより、安楽椅子探偵のミス・マープルの方が好みです。ホームズも好きですが、どちらかと言うとボクはモリアーティー教授の方が好きです。彼には悪役の美学がある。ああ……ライヘンバッハの滝に飛び込みたい。冗談はさておき、ここ最近風説ポストへ投げ込まれた手紙のいくつかに、黒いサンタの噂がありました」
「アビリティーシーフか!?」
「おそらく。黒いサンタの噂は恰幅の良い大きな袋を担いだ大男で、金、人、動物と何でも盗む神出鬼没の強盗で、体格に似合わない身軽な動きをすると言われています」
黒いサンタの情報はアビリティシーフの特徴と合致していた。
「南雲市再開発に入札している
聡はそれぞれの事件に共通点が見いだせない。
「これらの奪われたものはすべて何らかの悪事に関与しているんですよ。小角建設は談合によって不正な入札で大金を得ています。井伊剛宣は反社の構成員なのでいわずもがな。ジョージは狂犬病の予防接種を受けていません」
「なんでそんなことわかるんだよ」
「風説研究会員は官民、老若男女を問わず広く市井に根ざす草の根組織ですから、情報はいくらでも集まるんですよ。小角の件は行政から、井伊の件は警察から、ジョージの件はSNSから裏どりをしています」
慧の言っている事は信じ難い。しかし聡は魔法少女の彼女が怪人攫われたと意味不明の相談している手前、何も言い返せなかった。
「魔法少女フローズンリリィもこれらに該当すると思われます」
「葵のどこが悪党なんだよ!」
聡は言い返さずにはいられなかった。
「流石、元少年剣士、腹から声が出ていますね。耳がキーンとなりました。ビジランテという言葉をご存知ですか、本来自警団という意味ですが、加えてアメコミのヒーローなんかもビジランテと呼びます。バットマンであったり、スパイダーマンであったり彼らは自警、つまり逮捕権の有さない市井の人が暴力によって犯罪者を制圧しているんですよ。落ち着いて考えてみてくださいよ聡くん。彼らは法律を基準に考えれば立派な傷害罪を犯している。アニメや漫画ならいざ知れず現実に魔法少女が、犯罪者や怪人を叩きのめしている訳ですよね。第三者のボクからすれば、結果はどうあれ魔法少女と怪人に明確な差は無いように思えます」
「クソッ!」
聡は振り上げた拳を本に叩き込んだ。本の山がばたたと雪崩れる。
「気分を害してしまい申し訳ない。しかしここに状況を進展させるヒントがある」
「——どうするんだよ?」
「ボクらは今から悪事を働きます」
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