第25話

 現在、俺達が住んでいるアパートには金髪の美女、名前はサツキ、男の方はナツキらしい。

 流石に4人ともなるとこのアパートは正直小さい。

 戸籍はあるだろうが、職業が無いのでアパートが契約出来るかが怪しい所だ。

 仕方ない。無駄に余っている黒魔石を売るか?

 黒魔石は1個20万で今は15個持っている。

 合計で300万である。

 これを売ればこの2人の生活の最初方は問題ないだろう。


 それに、この2人は回復魔法が専門だ。

 なので、ハンターでは無く医師として働けば良い。

 個人経営なら場所も自分の住む場所で問題ないし。

 魔法なので、資格とかも何も要らない。

 逆に言えば、ライバルが多いので本当に稼ぎが安定するかが心配と言う事だ。


 俺が勝手に召喚してしまったのだ。

 この責任からは逃れるつもりは毛頭ない。

 ふむ。

 この2人の力をどうやって世間に示すか⋯⋯悩み物だ。

 今どき障害者なんて居ないし。

 いやまぁ、少しは居るけどさ。


「ねぇ、2人は欠損した部分の回復は出来るよね?」


「はい。普通に出来ますよ」


「他には?」


「後は⋯⋯先天性のモノでも、その本人が嫌だと思う部分は回復させてやれる」


「そっか。そっかー⋯⋯マスター」


「なんだ?」


「流石はシークレットだね」


「だな」


 この2人なら絶対に安定させてやれる事が出来る。

 何故なら、先天性の病、産まれてから足が無かったり目が見えなかったり⋯⋯そのようなモノは回復出来ないのだ。

 しかし、2人は出来ると言う。

 後は最初の客をどうやって集めるかだ。


「マスター。結構痛いと思うけど、我慢してくれる?」


 上目遣いでお願いして来るシェロ。

 シェロの考え、そして俺が痛い目に合う。

 正直、めっちゃ嫌だ。嫌だ嫌だ。

 しかし、召喚した俺の責任が⋯⋯仕方ない。

 ここは歯を食いしばるとしよう!


 まずは2人のアパートを契約、役所に企業やその他諸々の書類提出。

 戸籍は何故か俺達が住んでいる場所に成ったいた。

 普通にありがたい。

 それが終わったら最後に宣伝だ。

 今どきはハンター配信者とかも普通に居る時代だ。

 俺達もその例に違わず、行う事にしよう。


 俺は目を瞑り、腕を細い紐とかでグルグル巻にして強く締める。

 腕が紫く成った所でシェロが切断。

 俺は意識しないようにする。

 斬られた時は痛みは無かった。だけど、どんどんと激痛が走って来る。


「ヒール」


 サツキが回復魔法を唱えると、手の感覚が一瞬で戻って来た。

 地面に残された可哀想な俺の手。

 地面に埋めるのは良くないので、うん。ダンジョンに捨てとこ。

 そしたらいずれ消える。


「序盤の回復魔法でそんなすぐに欠損部分が回復するとは。なんか倍速編集とか言われそう」


「はは。俺はなんか大事な何かを失った気がするよ」


「回復させましょうか?」


「サツキ、マスターの傷は回復出来ないよ」


「いえ。私達に掛からばどんな呪いや病だろうと癒してみせます!」


 サツキのその考えや意気込みは評価するけど、逆に危ない目に会う可能性もある。

 きちんと注意しておこないと。

 そして、開店したのはミスリア回復店と言う名前の店だった。

 初回は無料だ。


 最初の方は誰も客は来なかった。

 最初は見守る為に俺達は違う部屋で待機中だ。

 待つことすぐに数時間、インターホンが鳴る。

 サツキが出て、中に入って来たのは2人の人だった。

 片方は若い女性。もう1人は赤ちゃんだった。


「炎上でバズった動画で来ました。本当に先天性のモノでも治せるんですよね?」


「はい。任せてください」


「僕達は嘘は付きません」


 炎上。そう、炎上した。

 まず、先天性の回復が治せると言う事がデマ扱いされた。

 次にヒールでの高速回復もデマとされて叩かれた。

 最後にあんな意図的にやったモノは信用出来ないと言われた。

 最後の最後に、実験台のアイツならもっと切っても問題ないと言われた。

 俺は密かに泣いた。


 2人が赤ちゃんを大事に抱えて、ミスリアに祈りを捧げる。

 あれが2人の回復魔法の詠唱らしい。


「キュア、ヒーリング」


 サツキがそう唱えると、優しい緑色の光が赤ちゃんを包み込み、その光が両目に集中する。


「サスザヒール」


 いきなり光を見ると目にも悪い。

 最初は馴れる必要があるのだが、赤ちゃんにその調整は出来ないだろう。

 そこでサスザヒール、名前の意味はいまいち分からんが、これで元々目が見えているような状態に成るらしい。


 赤ちゃんがゆっくりと目を開ける。

 そして、自分の母の姿を見た瞬間に、少しだけ、それでいてハッキリと、にっこりと笑った。

 その笑顔に、その瞳に、涙を流すお母さん。

 その姿に喜びを露わにする金髪双子兄妹。


「本当に、出来たんですね。ありがとうございます。ありがとうございます」


「いえいえ」


「役に立てたのなら」


 先天性の奴を治せと言われても、初回無料は変わらない。

 本当なら一体幾らの値が付くのかも想像が出来ない。

 しかし、あの二人は金よりも患者の笑顔の方が最高の報酬なんだろうな。


「当面はダンジョンには行かず、この2人の護衛で良いよな?」


「そうね。マスターの責任もあるし、ただ、ランダム召喚は毎日やるよ!」


「当然だ。どうせ、黒魔石と7回目に1個上のランクの装備が出るだけだと思うが」


「夢がないなぁ。事実か」


「そこは少しでも励まして」


 そんな事を和気藹々と話す。

 しかし、この時予想もして居なかった。

 まさかクリスマスの日に、あんな特大なプレゼントが来るなんて。

 誰も、予想なんて出来なかった。

 出来るはずが無かったのだ。


 2日後、あの母親がここの真実性をリークしたお掛けか、様々な人がやって来た。

 足が無い人、事故で足が使えなく成ってしまった者。

 アンチにライバル潰しやにサツキを狙ったキモイ奴ら。

 そんな奴らはシェロの鉄拳制裁の一撃で沈んだ。


 俺? 俺よりもシェロの方が効果的だ。

 強いし、幼女なんかに(一撃で)負けたの言う心の傷も出来る。

 アンチや邪魔する奴は徹底的に潰す。


 しかし、1番の問題は当然のように政府だった。

 こんな絶大な力を持つ2人を当然国は管理したいと思うだろう。

 そこで提示されるのが、金である。


「望む報酬はお支払いしましょう」


「⋯⋯お断りさせて貰います」


「なぜだ!」


 ナツキが丁重に断る。

 もしも国に仕えたら、この2人の本質が叶わない。

 彼らは本気で助けを乞う人を助ける。

 だから、政府の言いなりに助け、そして金を受け取る。

 それだとただの仕事だ。

 それは2人が望まない。基本は静観する予定だが、ヒートアップするようなら、シェロが出る。

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