第23話
Fランクダンジョンでもシェロのお眼鏡にかなうモンスターは居なかった。
暗やシェロが強くて、俺達のパーティは楽々に攻略してしまうのであまり指名されなくなった。
そして、係の人がとある疑問をぶつけていた。
「なんかモンスターとのエンカウント率が高くないか?」
「何かの以上かもしれんな」
そこでシェロが小声で。
「マスターのクソザコナメクジのリアルラックのせいじゃない?」
「シェロ、俺だって泣くんだぜ」
それから2層、3層と攻略して行った。
罠はすぐさま暗が発見して報告するので罠の心配もない。
攻略して行く程に海のウザ絡みも無くなって行った。
そして4層、ボスとなった。
「ここからが本番だ。君達に全てを任せよう!」
ボスは大きな太ったゴブリンだった。
「トロールだ! 再生能力が高いぞ!」
トロールらしい。
太ったゴブリンと見分けがつかん。
鑑定スキル、さらに欲しくなったな。
ま、再生能力が高かろうが、我々が誇る破壊王の力に掛かれば余裕だろう。
「行けシェロ! ある程度の力を出したも良し!」
「よし来た! シェロ、いっきまーす!」
戦斧を取り出して、高速でトロールに接近した。
「ふぅぅぅ、破壊術式展開」
え、待ってシェロなにそれ?
ちょいとまじで待てやシェロ! 絶対にオーバーキルしちゃうから!
折角の魔石が勿体ないから!
嫌だああああ!
「
戦斧を縦に一閃。
後ろの壁を深く抉り、トロールと呼ばれたボスを粉砕した。
「ふひー、スッキリ」
「おいコラシェロ」
「なんだよマスター⋯⋯頭グリグリしても居なく痛くないぞー」
「お前今まで戦えなかった鬱憤を一撃で晴らしただろ! ふっざけんな! 折角のボス魔石どうしてくれんねんマジで!」
「ケチくっさーケチ! ケチケチ! いいじゃん! もう結構魔石手に入っているし問題ないやん! ええやんええやん!」
よかねぇよ! めっちゃ目立つんだよ!
「お、終わった?」
「こんなあっさり?」
「君達は一体?」
達、にしないで。
係の人2人と海の言葉を無視して報酬部屋に行こうとしたら、問題が起きた。
「じゃ、こっからは僕のターンね」
「え、なに⋯⋯」
「お前なして⋯⋯」
2人の係の人を殺害した。協会の係の人。
暗達の警戒通りだったが⋯⋯俺は暗に目を向ける。
平然としている暗。
暗、お前なら助けてやる事出来たんじゃないか?
「ん? 主様どうかしましたか?」
「いや、なんでも」
もしかしたら暗は俺が言わないと助けなかったのかもしれない。
「うーん。そこのアサシンはいい体だからな。うーん」
そう考えている。
俺は異様に冷静だが、他の人はそうでも無いらしい。
協会の係の人が人を殺したと言う事実に驚愕して動けないようだ。
「海! しっかり!」
「お、お前僕好み〜そこの男死んだら僕の物かな?」
「暗、助けてやれ」
「ん? はーい」
係の人が瞬時に海に接近して武器のナイフを突き刺すが、それを暗がナイフで防いだ。
「なに?」
「動かないでね」
針を召喚して突き刺す。
警戒したのか、係の人はバックステップで離れる。
「速いね」
「ねぇ、貴方は協会の人なんじゃないの?」
「そうだよ?」
俺は様々な疑問を投げかける。
驚愕してる人が回復するように。
「なんで人を殺すの?」
「邪魔だからね。レベル的に負ける事もないだろうけど、抵抗されるのは面倒だ。でも、君達3人は目の前で殺された人が居るのに平然としてるね」
「良いだろそんなん。目的は?」
「楽しむ事? じゃじゃーん」
俺達を最後は殺す予定なのか、全て言ってくれる。
そして、係の奴は1つの首輪を取り出す。
それは鉄製で、魔法陣が刻まれていた。
それに俺、俺達は見覚えがあった。
「奴隷」
「あれ? 知ってるの? そそ。僕は協会の公務員じゃん? でもねー見た目が良くないからモテないのよーでさー、良い人を探している訳? 運良くこんなに良い女が多い! 一人一人試して良い奴を僕の奴隷にする! その為にブゥスと男は殺すんだぁ」
「マスター」
「どうした?」
「こいつ、殺るね」
俺は何も言わなかった。
シェロは戦斧を投げ捨て、拳を固める。
「僕はロリコンじゃないよ」
「黙れゲス、もう生きるな」
地を破壊する程の蹴りを入れて、推進力を上げて接近する。
しかし、暗よりも遅いシェロがいくら最速で動いても相手には見えているようで、ひらりと避けられる。
「幼女は永遠にお眠ー」
アイテムボックスからか、大剣を取り出した。
「じゃあね」
「武器を振るう時、特に大きい時、それは1番の隙である。己の欲望を叶える為に行動する下半身脳のゲスはここで終わる時」
シェロの静かな声が響く。
透き通るようなか細い声、シェロから初めて聞いた。
「破壊技能、
大剣へと拳を突き立てる。
さらに、左側に戦斧を呼び出し、両足を高速で切り飛ばし、大剣を砕いて右腕を弾いた。
「え、あれ? なん、で」
「ゲス、最後に言い残す事はあるか」
「僕は⋯⋯」
「私は短期でね。すぐに言わないから」
戦斧で体を粉々にするシェロ。
モンスターでは無い。消滅しないので返り血がシェロを染める。
銀髪が少し赤くドロドロに染まり、碧眼が少し赤く光る。
「シェロ、おいで」
「うん?」
シェロを近くに呼んで、俺はカバンからスペアのコートを取り出す。
そのコートをタオル代わりにシェロを拭く。
「ごめん。約束守れんかった」
「いいよ。シェロの怒りは分かってる。罪に問われるって言うんなら、俺も背負うよ」
俺にとってシェロは妹、家族のような存在だ。
俺の中で本当の家族よりも大切に思ってしまっている程だ。
だから、俺はシェロの肩を持つ。
「でも主様、死体ないですし、誰も言わなかったらバレなくないですか?」
「その保証がどこにある?」
「この人達、殺せば喋る人も居ませんよ? アチキなら返り血浴びずに⋯⋯」
「おい暗、シェロの事思って言ってんだと思うけど、止めろよ?」
「冗談ですよ。死体、どうしますか?」
「この人達にも家族がいるだろう。持ち帰ろう」
「マスター⋯⋯それって結局自分でこの事話すやん」
確かに。
報酬部屋は、まぁいつも通りだったよ。
人も居るし念の為にランダム召喚は使わないでおく。
ボス倒したのシェロだし、ボスコアは貰っておく。
翌日、俺達は協会に呼び出された。
結局、あの後は海達から話しかけられる事はなかった。
そして、シェロが暗かった。
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