第22話
「終わったぁ」
ケンコブも撃破して俺は会場を後にする。
ケンコブは基本的に横側から攻めて行けば勝てると分かった。
次はシェロである。
目立たないように、超手加減するように言い聞かせた。
言っていて俺は意味ないと思い始めたが、見て見ぬふりをした。
頼むぜシェロ。
◇
「弱そう」
自分の身長よりも倍はありそうな大きな戦斧を片手で構える。
ショートソードレッドキャップゴブリン五体がシェロに向かって走る。
シェロは大きく戦斧を横払いする。
圧倒的質量を前に、軽装の雑魚であるFランク程度のゴブリンでは瞬殺された。
消滅する必要のない程に粉々に粉砕され文字通りの塵となった。
「ぎ、ギジャ」
「おいおい怯えんなよ。折角だし、楽しませてよ!」
シェロは両手で戦斧を構える。
ロングソードレッドキャップゴブリンがとった行動は、全力疾走の逃げである。
ひたすら走ってシェロから離れようとする。
圧倒的強者、圧倒的威圧感、圧倒的絶望感。
様々な圧倒的なモノを感じ、格上から逃げるゴブリン達。
レベルだけならシェロの方が低い。
だが、中身が違うのだ中身が。
「つまんな」
両手で戦斧を横払いし、それで生み出される風圧でロングソードレッドキャップゴブリンの頭が潰れ、消滅する。
シェロは欠伸しながら心底つまらなそうに会場を後にした。
「シェロ、おつかれ」
「そんなに疲れてないよ。退屈だったけど」
退屈する暇は合ったのだろうかと疑問を持つ俺が居るが、そこはまぁ、うん。
次は暗だ。
暗だし全然安心して見られる。
ま、手加減はして貰うけどね。
目立ったら終わりだ。めんどくさいギルド勧誘に会う。2人が。
そして、俺は巻き添えをくらうと。
それは断固拒否したいからな。
行ってこい。ある程度の力を示してゴブリン倒せばお前の勝ちだ暗。
「行ってきマース」
暗はルンルンで会場へと行った。
◇
暗は最初に高速で移動して天井に足を着ける。
逆さになった暗はフードを被っている。
一瞬で姿を消した暗を探すショートソードレッドキャップゴブリン。
だが、気配を完全に消した暗を見つける事は海の底に沈めた宝石と同じように見つけられない。
「これなら目立たないでしょう」
或る意味目立っている行動だと暗は気づかない。
普通天井に逆さに成らない。ゴブリン達が一切見つける事の出来ない状態。
監視カメラだからこそ目視可能だが、一瞬でも意識をズラすと再び暗を見つける事は難しい。
「よし、これで終わり」
ゆっくりと全てのゴブリンに対して首に糸を回す。
後は力を加えて引っ張るだけでゴブリンの首は全て吹き飛んだ。
暗が帰って来た。
暗的には目立ってない行動だろう。そもそも暗殺者だから目立ってはいけない気もするが。
だが、あの一瞬で全てのゴブリンの首を刎ねる芸当はとても目立つ。
次の試験は明日だ。今日は帰る。
他の人の戦いを見るつもりもないしな。
「そう言えば、暗も俺達と同じ部屋に行かなくて良いのか?」
「女性をナチュラル家に誘う行為には目を瞑るとして、アチキはおじさん達と居る方が気分的に楽しいですし、恩返しも終わってませんので、当分はダンボールハウスのホームレスライフをして起きます」
「そっか。連絡とか面倒だから、スマホの契約はしようか」
「スマホ! 良いの!」
「あぁ」
なんか、シェロよりも子供っぽい暗を見ると、実家に居ない妹を思い出す。
久しぶりに連絡してみようかな?
ま、今はいいや。
翌日、指定されたFランクゲートへと来ている。
ここには昨日の実技試験に来ていた人達が数人見られる。
実技試験の人達を数組に分けて1個上のダンジョン攻略を行う。
最終試験である。
協会の監督が3人いる。海と言われたアイツらも俺達と同じ班のようだ。
監督の人の説明が始まる。
「今まで戦って来たモンスターとは強さが違います。いつも以上に警戒を強めて、攻略します。安心してください。危険があっても我々がサポートします。我々の平均レベルは1000です」
成程Dランク中間辺りの強さが。
俺はFランククラスの強さで来ているが、問題だろうか?
監督は前に2人、後ろに1人で進む。
パーティは俺達は前衛の方になった。
ま、前に出て戦うのが多い俺達なので仕方ないのだが。
「同じ前衛としてよろしく頼むよ」
「よろしくお願いしますね。海は肉盾にしても構いません」
「おい!」
「こちらこそ」
海と呼ばれた人のパーティは、海が大盾を使ってのタンカー、巫女服のメイジかヒーラー。シェロよりかは小さい戦斧を担いでいる大男、レンジャーだろうか? 武器は見えるような場所に出していない女が一人だった。
そして気づいた。
俺達めっちゃ浮いている。
巫女服も浮くくね? とか思っていたけど、魔女っ子の格好している人だっているし全く問題なかったよ。
俺なんて渋いコートよ。ナイフよ。
シェロに関しては幼女よ? 暗はフードを深く被ってあんまり認識されてないよ?
「マスター」
「ん? どうした」
小声で話して来るシェロに耳を近づける。
「後ろの左の人間、注意しろ。他の奴よりも手馴れてる」
「ん?」
「シェロさんも気づいていましたか。警戒しておきましょう」
「ええ」
俺には良く分からなかったが、先を進む。
最初に出た来たモンスターは赤色のゴブリンだった。
だが、前のレッドゴブリンよりかは小さいし肌の色も薄い。
目は黄色の赤色のゴブリンだ。
武器は棍棒。
「レッドゴブリンですね。三体います。まずはそうですね⋯⋯無名パーティですか。柊さん達のパーティお願いします」
「はい」
無名、パーティ名どうしよう。
相手は三体のレッドゴブリン、簡単に言えば少し強いゴブリン。
ゴブリンなんて俺達が1番倒した事のある種類のモンスターだ。
一応暗に数の確認をする。
「三体で間違いないです」
「どうする?」
「じゃあ、シェロどうぞ」
「やった! そりゃあ!」
戦斧を召喚からの高速投擲。
幼女からは想像も出来ない怪力で身の丈よりも倍はありそうな戦斧を軽く投げて、レッドゴブリンの体を抉り倒す。
出て来た魔石は緑色だった。
緑色の魔石はSSである。売値は5000とボスの白魔石と同じ値段をしている。
「い、一瞬で」
「昨日も見ましたが、シェロさん、凄いですね。一体どんなスキルを最初から所持していたんでしょうか? それともユニーク?」
巫女さんが考察している。
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