第17話

 レッドゴブリンに接近するシェロ。

 戦斧を掲げ、大きく振り下げる。

 地面を抉りながら衝撃波がレッドゴブリンへと飛んで行く。

 レッドゴブリンは横にステップして躱し、大剣が紅く輝く。


 シェロに向けて大きく大剣を振るい、それに合わせるように紅き斬撃が飛んで行く。

 シェロは地面に足が少しめり込む程に力強く地面を踏み締め、戦斧を横向きに構え、横薙ぎに振るう。

 斬撃を横から叩き、火花を散らして霧散させる。


 レッドゴブリンは技が意味無いと既に思っていたかのように、すぐにシェロへと向かって突き進む。

 斬撃を2本放ち、シェロに接近するのと同時に跳躍して高く跳ぶ。


 シェロは2本の斬撃を2回のステップで躱し、上から全体重を乗せた振り下ろしの大剣を戦斧の持ち手を横にして防ぐ。

 ガアアン、と大きな音を鳴らし、シェロの足が地面に少し食い込む程の力をレッドゴブリンは示す。

 シェロを中心に地面に亀裂が入り、地面が抉れる。


 速いし、動きが大きく激しい。

 耳に聞こえる音も大きい。

 俺はただ、何も出来ずに立ち尽くしているだけであった。

 シェロは余裕の笑みでありながらも、楽しんでいる笑みを浮かべる。

 シェロの過去は知らない。知ろうとも思わない。

 ただ、シェロは戦いと言うのが好きなのだ。

 破壊を好み、戦いを好む。それがシェロと言う幼女の正体。


「アチキも戦いましょうか」


「大丈夫だよ。シェロは戦いを楽しんでいるようだし、流石に手加減してると思う」


 スキルとか使って、あからさまに強いですよオーラを醸し出しているレッドゴブリンとの戦いをすぐに終わらせるような真似はしないだろう。

 打ち合う大剣と戦斧。

 武器の大きさは同じくらいだが、戦っている者のサイズが違う。


 方や大きな赤色のゴブリン、方や小さな銀髪の幼女。

 大剣が紅いスパークを放ち、戦斧からは蒼いオーラが漏れ出てくる。


 シェロが今まで出して来なかった戦斧術[20]の中に入っているスキルを使う。

 身体能力では手加減しながらも、スキルは使う。

 レッドゴブリンを評価しているからかもしれない。

 何レベルでアレが使えるんだろう。

 ステータスは見れてもスキルの詳細は見れないんだよな。

 シェロが見せてくれたら見れるだろうし⋯⋯そろそろ仲間の把握は完璧にしておきたい。

 ステータスの閲覧会でもしようかな?


 蒼いオーラを放っている戦斧をレッドゴブリンに向けて振り下ろす。

 紅きスパークを放っている大剣を両手で握り、横払いで戦斧と打ち合う。

 紅いスパークが周囲に飛び散り、地面を抉っていく。

 バチバチと火花を激しく散らしながら、レッドゴブリンはシェロを吹き飛ばす。


 クルクルと回転して地面に綺麗に着地するシェロ。

 蒼いオーラは戦斧に纏わり付いて、模様となる。

 地面を蹴り、地面が少し抉れる程の力で前進する。

 その推進力を攻撃に乗せて、レッドゴブリンへと振るう。


 紅いスパークの激しさが増し、両手で握り、シェロ同様地面を抉る程の威力で地面を蹴り前進する。

 その推進力を全て攻撃に変える。

 シェロへと接近して紅いスパークを放ち、刀身も紅くなり、振り下ろす。


 蒼い戦斧と紅い大剣が同時に振り下ろされ、衝突し、大きい金属音と激しい衝撃波を撒き散らす。


「うっ」


「大丈夫ですか?」


「ありがとう」


 その衝撃波によって吹き飛ばされそうになった俺を暗が捕まえてくれる。

 暗の筋力はシェロの6分の1であるが、衝撃波から俺を止める事が出来る程には筋力があるようだった。


「本当に大丈夫ですか?」


「あぁ。ぶっちゃけると俺はシェロのガチの本気ってのを見た事がない」


「?」


「つまり、あれならまだ余裕って事だよ。だから見ててな」


「はい。それと、戦いが終わるまでこのままの方が良いですか?」


「ああ。衝撃波で飛ばされそうだし、壁際まで移動する。手助け頼む」


「はーい」


 暗に抱えられながら俺は壁際に行き、座る。

 これで衝撃波で飛ぶ事は無くなった。


 シェロは戦斧を横向きに構えて、レッドゴブリンに向けてフルスイングする。

 途中で手を離し、戦斧が高速で回転しながらレッドゴブリンに向かって行く。

 レッドゴブリンは大剣の先端を一度自身の横の下に向ける。

 大剣の射程範囲内に戦斧が入って瞬間に、スパークが激しくなる。

 そして、大剣を薙ぎ払う。


 紅い大剣と高速回転している蒼い円形の戦斧と衝突する。

 ジリジリと音を鳴らし、戦斧を吹き飛ばす⋯⋯のでは無く、2秒経ち戦斧が消える。


 シェロは再び戦斧を召喚する。

 シェロは戦斧の先端をレッドゴブリンに向ける。

 レッドゴブリンは右手で大剣を構えて、先端をシェロへと向ける。


「行くぞ!」


「ガアアアアアア!」


 互いに地を蹴って接近する。

 レッドゴブリンは右手で大剣を振るい、シェロは左手で戦斧を構える。

 半円を描くように互いに武器を薙ぎ払い、大剣と戦斧が衝突する。

 ジリジリと互いに押し付ける。


 シェロが手を離し、力を戦斧に向けていたレッドゴブリンは唐突に離された事により、横に体重がズレ、体勢を崩す。

 体勢を崩したレッドゴブリンの隙だらけの顔面に向かってシェロは拳を放つ。


 ドン、大きな音を鳴らしてレッドゴブリンの顎を砕く。

 体勢を直して大剣をシェロに構え直した時には既に、シェロはレッドゴブリンの傍に居た。


 蒼いオーラを纏い、模様となっている戦斧を両手で構え、レッドゴブリンを斜めに切り裂く。

 ズバン、と切れたレッドゴブリンの体は斜めにズルリとズレる。

 最後にはシューと動いて地面に上半身が落ちる。


「なかなかに面白かったぞ」


 スキルを少し使ったちょっとした手加減状態のシェロはレッドゴブリンを破壊せずに斬って倒した。

 それにより、魔石が落ちる。


「お、ボスの白魔石が手に入った」


 近づいて魔石を取ると、違う事に気づいた。

 俺の今手にしている魔石は白よりも1つ上の、緑魔石だったのだ。

 確か、ボスなので1つ7000円となっている。

 これはありがたい副産物だった。

 シェロに粉砕されて今回も魔石は無しになると思っていたのに。

 これはラッキーだ。


「さて、報酬ガチャはどうなるかな〜」


「ガチャ?」


「なんも出んだろ」


「シェロ、少しは夢を持とうぜ」


 結果、ボスコア、ゲットだぜ!

 やったねーランダム召喚でガチャが出来るよー。

 無課金限定のガチャだよーいやー無課金に優しいねぇ。

 確定あるしねー今月終わったけど。

 はは。畜生がああああ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る