第14話

「はーい注目」


 俺はシェロと暗を近くに座らせた。

 俺も座る。


「なぁ暗。暗の暗器ってさ、俺にも使える?」


「アチキの手から放たれるとだいたい2秒で消えるので無理ですね」


「そっか」


「どったの?」


「いやな。このまま行くと、途中で俺って死ぬ気がしてさ」


「ま、だろうな」


「えぇ。なんでですか?」


「⋯⋯私達の力はマスターよりも普通に高い。そしてパーティを組んでいるので第三者からもマスターはそのくらいの力はあると思われる。そして、自分の力に合わないダンジョンに行き、私達も苦戦を強いられ、マスターを守れず、マスターはやられる」


「そう。だから、そろそろ俺も戦おうと思う」


「それは賛成だが今は反対だ。武器、防具は弱いしオーク相手に貧弱のステータスであるマスターはワンパンされる。今回は寄生を続けてくれ。ただ、経験値を稼ぐ為にこれからはナイフを投擲してくれ。その方が貢献した扱いになり、よりレベルも上げやすくなるだろ」


 と、言うわけで次のオークを発見した。

 ナイフを鞘から抜き取って、それを適当に投げた。

 暗のようにヒュ、シュッパ、と言う感じになる訳もなく、ヒュートン、と言う感じになった。

 地面に落ちたナイフ。

 こっちを見るオーク。

 当然ながらオークを挑発しただけで攻撃が当たった訳じゃなかった。

 オークが手元にある斧を持ってこっちに向かって咆哮を上げて、走って来る。


 シェロが前に出てオークの斧を片手で受け止め、片手で戦斧を振るい足を切断した。

 暗は他のオークをサクッと倒してこっちに来る。

 シェロは斧を捨ててオークの両腕を掴んでいる。

 ギシギシと骨が軋む音を鳴らし、痛みに叫ぶオーク。


「主殿。ささ、行きましょう」


 オークの背後に近づいて、暗が大きめのナイフを召喚する。

 暗がクイクイと手首を曲げて来る。

 何となく分かった俺は暗の手を掴んだ。


 女の子の手は柔らかいと聞く。確かに柔らかかった。

 プニプニとした感覚を味わないながらオークに近づいて、暗が手を離した瞬間俺はナイフをオークに刺した。

 それがトドメとなり、オークを倒した。


「これで討伐の時に手に入る経験値はマスターに入る筈だ」


「ズル、今更だな」


「そもそもこのやり方は一般的だぞ。討伐経験値は多いからな。ま、戦闘貢献もあるとより楽にレベルが上がるんだけど」


「だから強い人はソロでダンジョンに潜るんだな」


 わざわざこんな危険な所にソロで挑むなんてバカとか思っていたけど、経験値の事を考えると納得である。

 それからもオークを瀕死に追い込んで、最後に暗の武器を使って倒してを繰り返してレベルを上げて行った。

 ステポイントとかは最後に使う予定である。


「シェロさんずっと何か考えてますね」


「そうだな。どうした?」


「いや。私達って全員の運気合わせてもなんか少ないなって、そして、ダンジョン内部の迷宮に宝箱ってないんじゃねとか、そして、ランダム召喚のシークレットってなんだろうと考えていた」


 まぁ確かに。

 シークレットってどんなレアリティなんだろう。

 ま、月一の確定枠がもう無くなったので来月まで高レアリティは出ないだろう。

 出て欲しいよぉ!


 ボス戦に入る。

 ボスはでっかいオークだ。


「クハハハハ。ニンゲンドモ、ヨクゾキタナ。キサマラハワレノヨウブンヘトナル。カンシャシテシネ」


「ま、マスター! 大変だ! これは大変だぞ!」


「どうした?」


「あのオークがカタコト過ぎて何言ってるか全く分からん! あれだよ! ラノベとかでは全部カタカナで読むの大変で結局読まないあれだよ! 魔物特有のダルい喋り方だよ!」


「し、シェロさんが壊れた」


「シェロってこう言うの好きだよね」


 シェロはアニメとかそう言うのが好きだ。

 当然俺も好きである。

 さて、想定外の反応にオークが硬直している。

 今回は暗の性能テストも兼ねているつもりなので暗に戦って欲しいのだが、シェロがやる気満々に戦斧を構えている。


「シェロ。今回は」


「⋯⋯暗、頑張って」


「はい!」


 凄くネガティブオーラを撒き散らしているけど、いるけども、暗が戦う事になった。


「アチキの暗黒魔法を見せてしんぜよう。暗黒魔法ブラックマジック、ダークネスシャウトアイ! ダークネスシャウトノーズ!」


「ナ、ナンダコレハ! ミエヌ! ニ、ニオイガ、ナイ」


 ボスオークの目と鼻を覆う闇。

 暗の影から出現して、ボスオークの目と鼻を覆った。

 オークは不思議に思い、視覚と聴覚を失った。

 いや、塞がれたが正しいか?


「行きます!」


 暗は高速で移動してざっと30本近くあるナイフをオークに刺した。

 正にリンチである。

 仰向けに倒れるオーク。

 そして、俺は思う。


 これ、魔法使う意味あったのかな? と。


 暗はとても褒めて欲しそうににこやかに近づいて来る。

 暗の身長は160センチくらいあり、当然シェロより大きい。

 全体的に暗の方が大きいが、太っている訳では無い。

 寧ろモデル体型である。シェロよりも色々と大きい。


「⋯⋯⋯⋯」


「シェロ、ごめん! ごめん! 無言で蹴るのやめて! 本当に心の底から反省しているから!」


 ボスが倒れて、数秒後ボスは魔石を落とした。

 初めて見るボスの魔石。

 白魔石(大)である。

 通常の魔石よりも大きく、同じ色の白魔石でも、大きさが違う。

 そして、値段は5000円である!


「大体2倍のサイズなのに5千ってよく分からないよな」


「だね」


「2人は何を言っているですか?」


 まじかよ。

 暗はなんか、無知だな。うん。


 報酬エリアに行くと、当然のようにボスコアが俺達を出迎えてくれた。

 ボスコアを回収してランダム召喚を発動する。


「な、なん、だと」


「ま、魔石じゃ、ない」


「あの、この光ってるのなんですか?」


 出て来たのはナイフだ!

 S、硬いナイフであった。

 今使っているナイフよりも刀身が綺麗で、耐久値も高い。

 だが、攻撃力は同じだった。

 なので、売る事にした。


「はい。合計18万になります」


 そして他にも2箇所ダンジョンを攻略した。

 それからは白魔石しか出なかった。

 今回の収入、48万円。3人で一人頭16万円になった。


「じゃ、俺達帰るわ」


「あの、アチキはどうしたら?」


 暗の戸籍もきちんとあり、ハンター登録もした。


「ネトカフェかビジネスホテルにも止まったらどうだ?」


 ちなみにダンジョンから手に入った物は換金し、10万を超えると銀行へそのまま預ける事も可能に成っている。

 シェロは俺と同じ通帳に入れて、基本はカードを使う。

 暗には現金での換金をしてから現金で渡した。

「きちんと持っておけよ」と言って。


 それから柊達が帰還した後の暗。


「行っちゃった。ネトカフェとかビジ⋯⋯なんだっけ? それなんだろ? ま、適当に寝らそうな場所探そうかな」


 明日の待ち合わせはハンター協会前である。

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