第12話

 ドアノブに手をかけ、押して扉を開ける。


「ひゃ」


「あ、すみ」


 ゆっくりと扉をしてる。

 扉の先に居たのはゆーにーの嫁だった。

 この家には両親と長男夫妻が同居している。

 足音が遠ざかった事を確認して出て、洗面台に向かいシェロの歯ブラシをゲッチュ。

 次に向かうはキッチンだ。

 キッチンとリビングは同じ部屋にあるタイプで、必然的に両親とゆーにーに会った。


「お! 柊じゃねぇか! 外に出るなんて珍しいな! いつぶりだ!」


 金髪爽やかイケメンの長男。

 ヒキニートしていた俺に気さくに話しかけてくる姿はとても、うざい。

 俺は兄弟姉妹の中で1番ゆーにーが嫌いだ。

 全て計算して俺に関わって来るのがその目を見て、分かる。

 両親も喜んでいるように見える。

 前にシェロに言われた事を思い出した。


 ゆーにーはともかく、両親は本当に俺の事を心配してくれていたんだろうな。

 ちなみに家系は両親にゆーにー、もう1人の兄と姉がおり、兄の方は奥さんと子宝に恵まれて暮らしている。確か、ハンターだ。

 姉の方は外国に行き、バリバリの社会人で頑張っていると聞く。

 最後に妹が1人いるのだが、大学生になり一人暮らししている。


「柊、私達がいない間、何も無かった」


「うん」


 めっちゃあったよ。

 ハンターになって、バリバリに外に出るようになって、現在部屋に幼女と同居しているよ。

 はは。言えねぇ!


 それからゆーにーがしつこく話しかけて来たが、無視して、俺の箸を取る。同時にシェロのも。

 そして買っていた適当な物を持って行き部屋へと戻る。

 ふ、完璧だったぜ。

 自分で取りに来た事には疑問を持たれただろうがな!


「あ」


「あ」


 ゆーにーの奥さんに出会ってしまった。

 こんなヒキニートでも心配して、昼飯をきちんと作って持って来てくれるめっちゃ良い子だ。

 確か、俺よりも年下な筈。


「え、と」


 人見知りなんだろう。

 さっさと部屋に戻ろう。

 あ、だけど感謝伝えないと! 専業主婦の奥さん(名前知らない)には昼飯本当に助かってるし。

 多分夕飯も奥さんのじゃないかな?


「あ、りが」


 それしか言えず、部屋に着いてしまった。

 部屋には今でもぐずっりとしていたシェロがゆっくりと目を開けていた。


「う、うんー。わ!」


「⋯⋯っ」


 ドン、と落下したシェロ。

 どう言う原理なんだ本当に。


 頭を擦りながら「いてて」としている姿は本当に小学生なんだがな。

 使う武器は大人顔負けだよ全く。


「起きたか」


「まぁね。さ、朝食行きま⋯⋯もう昼か」


「無理だ」


「なぜ?」


「家族が、帰って来た」


「え、なんで、言わなかったの」


「3日後だと思ってたんだよ!」


「いつから!」


「シェロとあった日から」


「3日前だよ!」


 あ、俺の三日後進展無かったのか。はは。


「取り敢えずシェロの物品は回収して来た!」


「グッチョブマスター」


 互いに親指をピンピンに伸ばす。


「あの、凄い音が⋯⋯」


「大丈夫です」


 奥さんが扉を開けそうだったので、急いで閉める。

 体で押さえ付けて防いでおく。

 トテトテと足音が聞こえたので、もう問題ないだろう。

 今日は休む予定だったが、大変だ。


「作戦会議だシェロ」


「おうとも!」


「(モグモグ)まずはどこに行くか、の前にどうやって出るかだ(モグモグ)」


「(モグモグ)食べるか、(モグモグ)喋るか、(モグモグ)どっちかに(モグモグ)しなさい(モグモグ)モグモグモグモグ」


 食べる事に集中し始めたので俺も食べる事に集中する。

 まず、出る時は自然に、平然に、出来るだけバレないよに、バレても問題ないように自然と出る。


「暖かい」


「俺は冷たい」


 服の中に入って貰う事にした。

 扉を開けて外に出る。

 目指すはダンジョンだ!

 勿論、攻略する予定は無い。

 今日は休む予定だ。ただ、ランダム召喚の毎日無料はやらないと損だろう。

 ただでさえボスコアと言うめんどくさい物を要求されているガチャなのに無料引かないなんて勿体ない。

 適当に近所の公園にあるダンジョンで良いか。

 旅行帰りか、皆寝てるし出る事自体は問題なかった。

 帰る時は夜遅くだな。皆が寝ている頃。


 公園のダンジョンって事で子供はおらず、ハンターの大人達が殆どだった。

 それも数人のパーティを組んでいる。


「俺達の攻略ペースっておかしいよな?」


「まぁ。私と言うレベル詐欺がいるからね。仕方ないさ。本来のFランクでもFランクダンジョンを攻略為に最初はレベリングをする。そのせいであまり稼げない。レベリングするにしても、最初は大変な思いをして、ようやく勝てるんだ」


「ほんと、ユニークスキルに恵まれたな」


「初回限定が良かったね」


 本当にそれな。

 全く言い返せねぇ。


 ダンジョンに入って人気の無い場所に移動してランダム召喚をしておく。


「うっし、二千円ゲットだな」


「ランダム召喚なのにSは白魔石しか出ないのか」


「笑ってくれ」


「プゥクススススス」


 まじで笑われた。


 取り敢えず換金して自動販売機で飲み物を買って適当に2人でブラブラしていると、アルタにとあるニュースが流れていた。


『いやーまさかボス部屋の扉が破壊可能だとは思いませんでしたね』


『そうですね。今は協会の調査班が調査しているらしいですが、ボスが内部で存在して、Sランクでも扉は破壊出来ず、開けれないって状態でしたね』


『そうですね。もしも迷宮崩壊ダンジョンブレッヒェンが起こった場合、どうなるのか』


『もしかしたら起きないかも知れませんね。ネットでも色々と騒がれています』


『確か、もうすぐ他のFランクダンジョンでも試す予定だと、言う事です』


『そんな前代未聞の発見をしたFランクハンターに今回は来て頂きました』


『いやーびっくりしましたよ。なんか開かねぇなとか思ってたら、下の方がこう、ズバって斬られていたんですよ。中を覗いて見ると黒いでっかい獣がいもんで度肝う抜かれましたわ!』


『調査班の調べではユニークモンスターと言われているらしいです』


『もしもハンターがこれを行ったのなら、Cランク以上のランクなのは確実だと、言われております。Cランクのハンターが3個下のダンジョンに入ると言うご法度を犯してる訳ですが、未だにやった人は分かっていないらしいです』


『そうスっね。俺達のパーティがすれ違った人は小さな子供を連れた中年オヤジでしたし、装備も貧相な人だった』


『と、なるとやはり未発見のレアモンスター路線が1番正しいかもしれませんね』


『ボス部屋の扉を破壊する程のモンスター、それは危険ですね。一刻も調査を終えて欲しいものです』


『続きましては──』


「中年オヤジで悪かったな」


「子供で悪かったわね」


「「⋯⋯て、そうじゃない! ニュースになっとる!」」


 確かにシェロの実力は優にCランクを超えている。

 だがな。ランクはFなんだよ!

 ま、疑われる事ないか。

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