第10話

 ボス部屋入室の為に扉を押し、中に入る。

 中に入ると扉は勝手に閉まり、正面にでかいスライムが出現した。

 スライムも大きいので、当然ながら中の核もでかい。

 スライムは自分の体の形を変えて俺達に伸ばして来た。

 先端がとんがっているのでランスのような形に成っている。


「そいやぁ!」


 シェロが戦斧を振り上げて伸びたスライムの体を粉砕する。


「今回も楽に終わるのかな」


 そう、思っていた。

 だが、そう簡単ではなかった。

 粉砕した部分の体が瞬時に復活したのだ。

 それは俺にとっては予想外だったが、シェロにとっては想定内のようだった。

 それに、なんかちょっとワクワクしているように感じる。


「マスター下がっててね! 巻き込まれないように!」


 シェロは地を蹴ってボススライムに接近する。

 ボススライムは自分の体から1本のランスを放ち直線的にシェロを襲い掛かる。

 シェロは一度戦斧を掲げ、振り下ろしスライムの体を破壊し、さらに衝撃波で他の所も破壊して行く。

 だが、スライムはすぐに体を再生させる。


 スライムの丸っこい体の背中から数十本の触手のような物が伸びてシェロに襲い掛かる。

 シェロはバックステップで躱し、スライムから伸びた触手は地面に突き刺さる。

 地面からなるべく足を浮かせないようにしながら、滑るようにステップして触手を躱し、時には戦斧を振るう。

 ここからは泥沼が始まった。


 シェロが戦斧を振るってスライムの体を破壊してもすぐに再生して再び襲いかかって来るのだ。

 シェロは余裕そうだが、体力の関係上いずれ押し切られてしまう。


「おらっ!」


 核に向かって戦斧を振り下ろし衝撃波を放つ。

 地面が抉れ、スライムを粉砕するかと思われた衝撃波は防がれた。

 確かにスライムの体は半分以上が削れた。

 だが、核に届かなかった。

 伸ばしていた触手も全てしまい、一点にスライムの体が収束して、自分の体を盾にして衝撃波を耐えたのだ。

 削れた体はすぐに再生して再び触手になりシェロを襲う。


「チッ」


 チラリとシェロは俺を見る。

 俺に手伝えと?

 無理に決まっている。

 相手はFランクダンジョンのボスで推奨レベルは50からなのだ。

 それがユニークとなれば最低レベルはより高いだろう。

 しかし、そこまでのレベルにも達していないし、他の人よりも初期ステータスは低い。

 さらに言えばユニークスキルはあっても、逆にそれしかなかったのだ。

 初期から俺はスキルを持っていなかった。


 初期スキルが魔法よりなら魔法使いに、剣で戦うのに有利な初期スキンなら剣士に、初期スキルでだいぶ戦い方は変わってくる。

 だが、俺にはそれがないのだ。


 そんな俺がボスとの戦いに参加出来る筈がない。

 いや、そもそもシェロの攻撃に巻き込まれて⋯⋯いや、シェロは俺に危害は加えられない。

 だから、俺に戦えと、手伝えとシェロは考えない。

 なら、何か。

 俺に危害を加えようとすると何かしらが働いてシェロは動けなくなる。

 動けなく、なる。


「そうか」


 シェロはまだ、力を隠していた。

 いや、使えないんだ。

 俺と言う障害マスターが居る限り、俺を巻き込んでしまうシェロのガチの本気。

 もしもそれを使うならば、シェロは動けなくなる。

 俺は、シェロの足枷だ。


「今更か」


 今、シェロはスライムの攻撃を躱して時に反撃、スライムは体を一点に集中して防いでいる。

 シェロの武器は戦斧でかなりでかい。

 細かい動き、瞬時の切り返しが出来ない。

 二連撃を放つ前に体は再生されている。


「⋯⋯魔法」


 だが、初期の方で手に入る魔法なんてたかがしれている。

 ぶっつけ本番なら確実に補正が掛かる魔法が良い。

 だが、それでも、シェロの助けになるような魔法は現状手に入らない。


 ◇

 名前:伊集院柊

 レベル:12

 ステポイント:60

 スキポイント:9


 筋力:6

 敏捷:3

 魔力:7

 忍耐:3

 器用:3

 運気:51


 称号

 ・主


 スキル

 ・ランダム召喚 ・筋力強化[1] ・敏捷強化[1]


 魔法

 ・無し

 ◇


 獲得な可能な魔法とスキル。

 シェロはスライムを殴った感覚は水だと言っていた。

 このダンジョンのスライムの体は液体だが、酸だ。

 火属性の魔法で燃やす⋯⋯最初及び練習も出来ない今では役に立たない。

 他に役に立つと考えたら電属性だが、確か最初の方の電属性魔法は体に纏わせる系だ。

 今はなんの役にも立たない。

 急いで考えろ。


 俺が考えてる間にもシェロは戦っている。

 このままでは、いずれ負ける。

 シェロの破壊力があってようやく戦いになっている現状だ。

 1つの綻びも許されない。

 シェロの体力がどれだけあるかは分からない。

 だからこそ、さっさと決着はつけたい。


「そいや!」


 スライムに拘束攻撃があるか分からないが、もしも捕まって逃げれない事があったら、体が溶かされる。

 何か、ないのか!

 ステポイントの60を使っても焼け石に水だ。

 技術も無い俺がどうやってシェロの助けになれと?


「⋯⋯俺の、出来る事」


 戦いで俺に出来る事はゼロだ。

 控え目に言ってもゼロだ。

 俺が、出来て、俺にしか出来なくて、今の現状を打開に出来る物。

 それが、俺が初期に持っていた唯一無二のスキル、ランダム召喚だ。

 グダグダ悩んでいたが、結局これしかないんだ。

 ステポイント、残していたが、最低レアリティは更新しておきたい。


「最低レアリティSか。まずは無料分! ランダム召喚!」


 目の前に光が出現して魔石が落ちる。

 Sの白魔石だ。


「ボスコアでGO!」


 出て来たのは水色の球体。

 野球ボールくらいの大きさである。

 確認してみると、SS:氷属性のマジックオーブだった。


 氷属性魔法は水属性魔法を得て、水属性魔法のレベルを10にする。

 次に水属性魔法の進化先が現れて、そこに氷属性魔法がある。

 だが、今回はその氷属性魔法が獲得出来るオーブが手に入ったのだ。


「行く!」


 オーブは強く握ると弾け、体内に吸収されていく。

 急いでステータス画面から魔法の確認をする。

 最初の魔法以外内容を確認してないので、氷属性魔法を知らない。


「アイス、ハンド」


 手に冷気を纏わせ、相手に触れて凍らせる魔法か。


 魔法は魔法の能力さえ獲得していたら使える。

 魔力操作と言うスキルを獲得しているのが使う前の一般的な認識だ。

 だが、初期から持っていない場合はレベルを上げて手に入れるかスキルオーブしかない。

 魔力操作があれば、その属性魔法をイメージで自由自在に操れる。

 そして、それが無い場合は魔法のレベルによって増えて行く決まった物がある。

 氷属性魔法のレベル1の場合はアイスハンド。

 イメージ魔法よりも少し威力が高くなり、発動も簡単になる。

 ま、魔力操作なんて当分獲得出来ないだろうがな。


「酸、だけど」


 流石に寄生しぱなっしってもね。

 少しは、俺も役に立たないと、顔が上がらんだろ。


 コートを脱いで手に巻く。

 少しでも防御は上げておかないと。


「ふ、行くか」

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