第9話
シュイン、シュインと左右に揺れる海賊の船にありそうな重り。
バレバレの罠だったが、殺傷能力は抜群だろう。
ここまで来るにも、何度も落とし穴に会い、迫る壁に潰されそうになり、降り注ぐ大量の針が付いた重りに串刺しにされそうになったり。
他にも沢山。
2層、罠が多いと聞いたが予想以上だ。
「そろそろ5分立つ。また来るぞ」
三連撃の転がる岩は5分事に丁寧に正面から来る。
この目の前にシュインシュイン揺れるこれがあろうとも来る。
すり抜けて来る。
無機物だからか、進む度に、罠に会う度にシェロの顔に青筋が増えている気がする。
整った顔が、今ではバキバキである。
「クソッタレがあああ!」
シェロの嘆きの叫びと共に振るわれた戦斧は罠を破壊し、出現した岩を破壊し、何となくで壊されたであろう左の壁を壊した。
したし、左から覗いたのは3層に行くであろう階段だった。
俺とシェロは抱き合って泣いた。
ようやく、ようやく罠の地獄から解放される。
もう、数時間は2層をさまよっていた。
壁を破壊して次に進んでもそこに罠があるから進めない時もあって、正規ルートを頑張って進んでいた。
宝箱が出て来ないからワクワク感もないし、ほんと長かった。
そして、ようやく俺達は次の階層に⋯⋯行けなかった。
階段? うんなもん落とし穴に変わったよ。
「ゴミが! 永遠に眠っとけぇ!」
シェロの怒りが頂点に達して、壁を粉砕して、迫り来る罠も適当に破壊する。
巻き込まれないように気をつけながら進む。
手加減? そんなものもう、関係ない。
景色が変わらないのに、ずっと歩いている。俺、もう疲れたよ。
ようやく3層に到着し、迫り来るスライム。
今のシェロは生物ってだけで少しだけ怒りが収まり、壁を少し削る程度の手加減をしてスライムを戦斧で粉砕した。
3層は案外すぐに終わった。
ボス部屋をすぐに見つけたのだ。
階段の所から右に一直線に進むんだらすぐに見つかった。
破壊した壁は何十枚だろうか?
ただ、問題はそこにあった。
数人の人間。
「よぉう。お嬢ちゃんとお兄さんよぉ?」
1番顔の悪いおっさんが話しかけて来た。
不思議と、俺は言葉を出す事が出来た。
「ボスに挑まないのか? 先に来たのはそっちだ。奪う気は無い。挑まないのなら、俺達が行く」
「おいおい? 初心者でも分かってんだろ? 俺達の事がよぉ? ここから引き返すって言うんなら、アイテムも奪わず生かしてやるよ」
おい待て武器は奪うのか?
今シェロは移動を楽にする為に戦斧をしまっている。
そもそもシェロの戦斧で他人に渡せるのか?
それに、俺の短剣は腰の鞘に入っている。
こんなナイフが欲しいのか?
ハンター狩りが?
ハンター狩り、ハンターを狩る人の事。
ハンター同士の争いはご法度だ。
だが、ダンジョン内部は無法地帯。
こう言う人は普通にいる。
悪い奴だと、簡単に人の命を奪う。
Bランク以上になるとダンジョンに住み着くのは危険らしく、Cランク以下くらいにしか出現しないらしい。
ハンターがハンターを殺っても経過値は手に入らない。
通称、ハンターキラー。
「聞こえねぇのか?」
「嫌だね。何時間も掛けてここまで来たんだ! 引き返せるか!」
ここまでの苦労を知らないのか!
「あぁん? 確かに罠は多いがだいたい20個だろ? それに壁際を歩けば発動しないし、全て分かりやすいように地面の色が違うし、それに既に攻略情報は回って2層はずっと左に曲がれば着く筈だろ?」
シェロと俺は無言で目を合わせる。
こいつらは何を言っているんだろう? 俺達には分からない。
俺達は5分事に岩が転がって来て、数百個くらいは罠に引っかかったが?
「いいからここから帰れよ」
他の人がそう言っているが、当然帰る事なんてしない。
その事を察してか、1人の長剣を持った人が襲って来た。
「レベル1から狙う! すまんな嬢ちゃん!」
鑑定では相手のレベルしか分からないのか。
シェロに捕らえて欲しいと、言うとしたが、遅かった。
「⋯⋯ッ!」
目を見開く。
一瞬で戦斧を取り出して、片手で振るい、上半身と下半身を分けた。
「な、んで」
シェロが、なんの躊躇いもなく人を殺したと言う事実に俺は、驚愕を露わにする。
「マスター、勘違いしちゃならない。私はマスターが生きていればいい。それ以外の人間に興味はない。ここは弱肉強食だ。それに、コレは正当防衛だろ? あっちから殺しに来たんだ。殺される覚悟も当然あるだろ? 私の召喚される前の事は詳しくは言ってないが、私はなんであろうと、有機物無機物問わず破壊して来たんだ。人を殺そうと私は何とも思わない。マスターが死ぬ方がダメだ。マスターを守る為なら、マスターの善意であろうと私は踏み躙る」
シェロ。
だからって、こんな簡単に人を、人を!
「なんでレベル1にレベル300の俺がこんなあっさり負けんだよ! どっからそんなドデカいの取り出した!」
「あっれー?」
なんで上半身だけで血も流さず喋っているのだ。
「えーと、どゆこと?」
「どうして、こうなった!」
おっさん! それはこっちの台詞だ!
それから下半身と上半身をくっつけると普通に直り、話し合う事にした。
この人達はこのダンジョンボスに殺られて、未練で幽霊になったらしい。
「で、ここのダンジョンはユニークで、とても強力だから、自分達と同じような被害者を出さないようにして、自分達ハンターキラーの事が広まれば、ある程度のランクの人が来て、説得してここを攻略して貰う、こんな感じ?」
「そうだ」
「はぁ。ガバガバ」
そもそもハンターキラーの実力が分からないんだから高ランクの人が来るかも怪しいじゃん。
そして、俺達はボス攻略推奨レベルの50から100に到達してないのだ。
こんな低レベの俺達が逃げても、そんな良い人は集まらん。
「なのに、なんでレベル1のか弱い幼女にあっさり切られないと行けないんだ!」
なんで粉砕されてないのかそこに俺は興味が湧いたよ。
「にしてもユニークか。始めてだな」
「マスター何を言っている? 最初のゴブリンは言語解読の力を持った知性の高いユニーク、人狼の方は爪に殺気を感じた。爪から感じた。相手の意思じゃない。意思が無い所から殺気を感じると言う事は私に危害を加えられると言う事だった。多分猛毒でもあるんだろ。多分あの狼もユニークだぞ?」
まじかよ!
ユニークのボス魔石って結構いい値段で売れるじゃん! え、何?
知って居て粉砕してたの?
つーかユニーク倒しても報酬がボスコアだけってゴミやん!
「と、とにかく危険だから⋯⋯」
「知らん! 行こシェロ!」
「おう。Fランクにしては珍しい3層だ! 楽しみだぜ」
「あと、成る可く人の命を軽く奪うのは、止めて欲しい」
「⋯⋯分かった。ま、今回はなんかこいつらから出るエネルギーが気持ち悪くで直感で斬ったんだけどな。まさか亡霊だとは思わなかった。あと、さっき言ったのは私の紛れもない本心。ただ、マスターの意見は尊重するよ」
「ありがと」
「ちなみにさっきの剣じゃ私の服はともなく、体には傷はつけれなかったな」
少し傷ついた剣士。
鑑定阻害のスキルは疑わないのかな?
結構一般的おすすめスキルだけど。
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