第8話

 シェロが来てから、シェロを捕まえて階段をさっさと登って逃げた。

 流石に気まずい。


 2回に上がったら雑貨屋の方に向かう。

 雑貨屋でバックパックを発見して購入する。

 バックパックを使うハンターはFとEくらい。


 次に武器屋である。

 安めのなら買えると思ったからだ。

 中に入り色々と確認していると、シェロが小さめのナイフを両手で持ってプルプル震えていた。

 何かなと思い、開いている武器情報ウィンドウを覗き込むと、分かった。


 推奨ステータス、筋力10


 俺の筋力数値は10まで届いていない。

 だが、これは使用条件ではなく推奨なので扱える。

 推奨はステータスだけの数値を考えての物だと考えられおり、ステータスはあくまで肉体を強化する物だ。

 ナイフくらいステータス無くても振るう事は可能だ。



 バックパック3万円、ナイフ1万円を購入して次のダンジョンに向かっている。


「バックパックの容量は30キログラム、魔石1個おおよそ0.5キログラム、60個は手に入るから、2000かける60で120000で、税金によって108000かな?」


「ポッケ含まなくても10万は超えるな」


 サクサクダンジョン攻略していたので、一日で4つ回る事を可能と判断した俺達は、昼に2つのダンジョンを攻略する事に予定を変更した。

 人気のFランクダンジョンをハンター協会で調べる。


 この後知る事になるのだが、ハンター用のスマホアプリがあり、そこからでも情報はチェック出来るようだった。PC用もある。

 基本中の基本で一般認識されていた事により、情報に疎い俺達は知らなかった。


「ふむ、ここだな」


「主流のモンスターはスライム、か。3層まであって2層は罠が多め、か」


 まぁ、行くか。


 到着してゲートを通過し、中に入る。

 このダンジョンは2層に罠が多く進むのが面倒くさく、宝箱の平均出現率も少ない事から人気がない。

 勿論、もう俺は宝箱が俺の前に現れてくれる事なんて諦めているので特に問題ない。


「うっわキモ! ゴキブリやん!」


「いや、スライムの方が可愛いだろ? マスター戦ってみる?」


「は? え、無理よ? 何を隠そう我が人生、包丁すら握った事がないのだからな!」


「威張れる事か!」


 懐かしい。

 調理実習で俺の手が汚い、と誰かの女子から言われ、その女子はスクールカースト高位だったようで、俺が調理実習に加わる事は無かった。

 どっかの社長令嬢だったのか、先生すらも下手に出ていたな。


「スライムはスライムの核を破壊すると簡単に倒せるが、魔石が落ちないようだ。シェロ、核を壊さないようにスライムを倒してくれ」


「⋯⋯相手は脆いんだ。私の力でそれが可能だと思うか?」


 ⋯⋯ん〜。

 無理だな諦めよ。

 スライムの数はパッと見20体は居ると思うがジリジリと滑って近づいて来ていた。

 ぴょんぴょん跳ばないんだな、と呑気に考えている俺。

 ぶっちゃけ俺勝てる気しないし、ステータス上げて戦うならともかく、あんな液体の塊であるスライムの核を破壊しないで倒すのは凄く時間が掛かる。

 そう、基本本に書いてある。


「あ、なら」


 シェロが何かを思いついたらしく、近づいて手を高速で動かした。

 動かした右手にはスライムの丸い核が握られていた。

 核が無くなったスライムの液体はバラバラに崩れて地面に染み込む。

 核はその形を変えて魔石へと変わった。


「よっと」


 バックステップで俺の下へも帰還したシェロが魔石を差し出して来る。


「核外したら倒せるな」


「問題ないのか?」


「いや、消化液だなこれ。前にあった魔石回収出来ないし楽を求めて普通に倒したスライムとは違ってこっちはマジの溶かす系だ。私の服ってオシャレの服だから溶けたらヤイバな。気をつけよ」


「おいおい、それって問題ないのか? 酸って事だろ?」


「あぁ。相手のレベルが低いからか、ちょっとピリって来るくらいで実害はないぞ。多分忍耐の数値の影響だな。マスターがやったら骨になるんじゃね?」


「いや、それはないだろ? だってFランクのスライムだぜ?」


「どうなんだろうね? ま、ここは私が核抜きをするよ。マスターは私が投げた魔石をキャッチして」


「おけ」


 ただ、スライムの数が多くバックパックは満タンになった。見た目は変わらないが、もう入らない。

 ポッケにもしまい、ジャラジャラだ。

 ポッケ合わせて90個以上の魔石が手に入る。

 あれ? このダンジョンとても旨いんじゃね?

 ここで大富豪に成れるんじゃね?

 別にランク上げる必要なくここで沢山稼いで人生謳歌出来んじゃね?


「マスターここで楽して稼げる、だからランク上げる必要ない、ダンジョン行く必要ないって考えるなら私は手を貸さないから」


「すみません」


 そうだよな。シェロは自分の力を本気で振るいたい。その為にはある程度の強さのモンスターが必要。

 その為にはランクを上げるしかない。

 無理して勝手に高ランクのダンジョンに入ったら俺が死ぬかもしれない。

 身の丈にあった事をしないとな。

 魔石が回収出来なくなったら、後は戦斧でスライムは全部ぶっ飛んだ。


「壁を破壊しないで敵を倒す、これぞ私の手加減」


「まぁ、魔石いっぱいだし、今はそれで十分だな。現実の物体の強度とダンジョンの壁の強度は違うからな」


「分かってるよ」


 壁を破壊しながら進み、2層を発見した。

 そして、俺達は知る事になる。

 罠の面倒くささと言う奴を。

 そして、グタグタとしたダンジョン攻略を。


 最初、階段を降りたすぐに正面から3つの道を埋め尽くしゴロゴロと転がってくる綺麗な球体の岩。

 後ろには下がれば簡単に躱せるが、シェロは何時ものとは違う戦斧を召喚する。

 ハルバート型の戦斧を投げ槍の構えをし、放った。

 高速で直線的に岩へと接近して、岩を粉々に砕いて貫いて行く。


「今のってどれが発動条件だった?」


「分からんな。俺達が入ったすぐに来たもん」


 それからはストレスの塊だった。

 俺は寄生して楽して進んでいるから何とも思わないが、正面切っていたシェロはストレスが溜まりに溜まっていた。

 モンスターであるスライムは出ないし、3メートルくらい進んだら矢が飛んで来て、戦斧を正面で回転させて防いだ。

 次に落とし穴のトラップ。

 落ちた先には槍があり、即死級だった。


「て、あの槍取れない? 折角なら武器とかにも出来ると思うんだけど?」


「試してみる」


 斧を壁に練り込ましてぶら下がっていたシェロを覗き込み、頼んでみる。

 シェロは斧を離して落下して行く。

 キックを放って槍を弾き壊し、着地し、槍に触れる。


「お、抜けた⋯⋯けど、砂になった」


 ちょっと残念そうなシェロ。

 槍なら腕で巻いて運べるし、新たな売り物になると思ったんだけどなぁ。

 罠に使われた物は持ち運べないのか? 矢も消えたし。

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