第5話

「今日は普通に寝るのか?」


「まぁ、折角寝れる環境に成ったのに寝ないのは勿体ないからね」


「ベット譲るよ」


「いいよ。まずはマスターが寝て、その中に私が寝る。変なところ触るなよ?」


「悪いな俺は女性の魅力が大きい方が好きなんだ」


「ごめん。遠回しに言っているせいで余計にキモイ。てか、それは私に対して失礼では?」


「そうかもな」


 と、言う訳で同じベットで寝ました。

 敢えて言おう。ラノベとかで『女の子特有の匂い』とか『心臓の音が聞こえないか心配』とかは無い。

 俺は特殊な性癖が無いから幼女であるシェロに俺の中の男が騒ぐ訳ないし、もしもシェロが俺のタイプなら多分俺は気絶している。

 シャンプー同じだし匂いも特に関係ないな。

 ま、唯一心配なのはシェロの寝相かな?

 初めてのハンター業で疲れが溜まっていた俺は、直ぐに意識を切った。


「う、ううん」


 なんの問題もなく起きれた。

 ベットの隣にはシェロが居なかった。

 既に起きているのだろうか?


 そう思い、ベットから降りて着替えようとし、クローゼットの方を向いたらドアが視界に入る。

 ドアの目の前に直立不動で仁王立ちしている立派な幼女がとても幸せな顔で寝ていた。

 うん。立って寝ていた。

 思考停止状態の俺。


「は!」


 数秒経って我を取り戻した俺はシェロへと近づいた。

 ほっぺをツンツンしても柔らかい感触だけで起きる気配は無かった。

 動かそうとしても、大きな岩手も持ち上げようとしているのかビクともしない。

 押しても引いても動かない。


「あ、やばい」


 ドアの前にいるシェロ。俺の力では動かせないシェロ。

 この場合どんな問題があるでしょーか。


 正解、ドアが開けれない!


 冷静になり着替えて再びどうしようか考えた。

 トイレに行ってドアの前で寝たのか? いや、それでも寝方が不思議過ぎるだろ!


「まって、本当に起きて! 俺の下半身のリミットが近いの! 俺起きたら直ぐにお手洗いに駆け込むタイプなの! お願い起きて! 我慢出来るけど結構きついの! お願いします起きてシェロ!」


「スャ」


「寝息を言葉に出すなあ! じゃない! 起きて!」


 その後、ひたすら努力しても起きなかった俺は悟りを開いた。

 パソコンを立ち上げヘッドホンを装着。

 大好きなブイチューバーのホロライブ切り抜きアニソンを聞く事にした。

 やっぱこの人の声好き。


「ふぁ〜おはよう」


 シェロが起きた瞬間に俺はドアを開けてトイレに向かった。


「うん? なんかあったのかな? て、パソコンつけっぱなしだし。電気が勿体ないだろ」


 それから朝食を食べながら俺はシェロの寝方に付いて聞いた。


「手洗いから戻ってもドアの前で寝るなよ」


「ブフ、失礼! レディーに向かって言う言葉じゃない! デリカシーを持って!」


「シェロ。俺の持論だが、幼女はレディーじゃない」


「レディーは女の人って意味も含むから幼女だろうがレディーだボケ。それに、私は排泄物をしない。食べた物は全て消化されて魔法を使うエネルギーに変換される超コスパの良い体に改造されているんだから!」


「え、じゃなんであんな場所に」


「⋯⋯認めたくないが、寝相が悪かった」


「うん。俺の、一般的な認識だと思うけど、アレは寝相って次元じゃない。完璧な門番だったよ。まじで。これからは気をつけてね」


「善処する」


「絶対してね」


 さて、今日もダンジョンに来ました。

 目標は3つのダンジョンを制覇することだ。今日だけで。


「勿論俺は武器を買わない」


「誰に言ってんだ。せめて防具は買えよ」


 ふ、昨日の晩御飯に昨日の臨時収入の大半は消し飛んだ。

 お金の利用は計画的にだ。


「さっさと運気上げてランダム召喚最高にしたいな」


「他のステータスも上げろ。じゃないと今後死ぬぞ」


「もういっそシェロ1人で攻略する?」


「それが1番簡単なんだが、それでお前がヒョンな事で死んだら私は再び地獄に戻ってしまう。多分。だから断る。どうせ見ているだけだし良いだろ」


「まぁ、確かに。で、なんで戦斧持ってんの? Fランクにシェロの武器必要ないだろ?」


「なぁ、マスター。私思うんだよ。手加減を覚えて必要な時に全力を出す、それってカッコイイと思うんだ」


「知らんがな。なるべく目の前の事を考えろ」


「断る! これは私の信念だ! それに、ハンターを続けるなら町を壊さないでモンスターを倒す力は欲しい。殆どのハンターは成長して力慣れがあると思うけど、私はここに来て間もないしステータス自体も高い。手加減の練習は必要だ」


 ド正論で言い返さないよ。


 今回のダンジョンの基本モンスターはウルフ、まぁ狼だ。

 だいたい3から5体のウルフが群れを成して襲って来る。

 大抵シェロの横薙ぎによって吹き飛び魔石事粉砕されているから恐怖は無かった。

 ギリギリ聞こえる魔石の割れる音。

 そして悟るんだ。あ、他のアイテムないんだなって。


「ウルフって素材落とす筈なのに」


「今度は牙を抜き取ってから殺すか」


「ナチュラルサイコパス! それでも、無駄だろ!」


「そうだな。と、次はこっちの壁を」


 シェロ曰く、生物と無機物を斬るのでは感覚が違うらしい。

 ランダム召喚はまだ使ってない。

 ギリギリまでとっておき、運気を出来るだけ上げてから使う。

 しかし、シェロの言い分も確かで、運気ばっか上げても意味が無い。

 強く成れないのだ。


「幸運回避⋯⋯回避するような攻撃もないな」


「そいやっさ〜」


『ガアアアア!』


 無惨に散るウルフに敬礼!


「何してんの?」


「手加減されていない攻撃にさらされる哀れな狼に敬意を示している」


「手加減してるぞ? ほら、壁事壊してない」


 ごめん。そんな屈託のない純粋な幼女の笑みを浮かべられても、魔石事粉砕されているウルフを見ると手加減しているように見えない。


「⋯⋯ボスコアまじで売らないと収益ゼロだぞ」


 うぅ、俺が戦えるように成らないとな。

 その為には技術系のスキルが欲しいな。

 俺の魔素って微弱らしいし、魔法メインってのも無理そうだし。

 いやまぁ正確な魔素量は測ってないけど。


「あれ? 確かあの何故か喋るボスゴブリンは魔素って言っていたけど、一般認識ってなんだっけ?」


「魔力エネルギーだよ。ほい!」


 ドゴーン。

 俺はこうやってゆったりと考え事をしているが、目の前では沢山のウルフが消えている。

 そして、分かった事がある。


「ハンター基本本でFランクって数十分に1回エンカウントする筈なんだけど、なんで3分刻み?」


「マスターのリアルラックのせいじゃね?」


 いやまぁ、ハンター的には旨いんだけどな。魔石が残れば。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る