第4話

 ステータスの運気とリアルラックは当然比例しない。


「まさか宝箱1個も見つからず、魔石以外のアイテムは一切出ず、そしてボスまで来たとわ」


「そうだな」


 シェロが何故か俺の方を見るが、宝箱の位置はランダムだ。

 もしかしたら誰かが先に来て宝箱を全て漁っている可能性は⋯⋯ないか。

 ボスコアを手に入れたらダンジョンは消失するから当然ゲートも消える。

 それにこれが出来てから24時間も経ってないし。


 ボス部屋に入る前の扉は巨人が入るのか、と思う程に大きかった。

 まさかニートの俺が幼女とハンターになってボスとも戦う事になろうとは。

 難易度的にシェロのお陰でベリーイージーなんだけどさ。

 俺装備も武器も無いのに余裕でダンジョン進んでるし。


「よし、壊すか」


「うん。折角だし普通に入ろうぜ」


 流石は称号で破壊王を持っているだけはある。

 だけどな。なんかボスが可哀想に見えるんだよな。


 扉を少し押すと自動的に開き、中に入ると勝手に閉じて、俺が死ぬか俺達がボスを倒してここから出る以外に扉が再び広く事は無い。

 ま、ボスコアをとったらダンジョン事消えるんだけどさ。


「くく、微弱な魔素量にレベル1の雑魚が相手か」


 正面に王座の様な物があり、そこにふんぞり返っているでっかいゴブリンが居た。

 微弱な魔素? は俺だろう。俺のステータス弱いもんな。

 で、レベル1はシェロだろうな。

 シェロは素の能力が高いからここでは全然レベルアップしない。

 つか、相手のレベル分かんのかよ。

 鑑定スキルってレベル50から獲得可能なスキルだろ?

 つまり、相手は50レベル以上って事でオーケー?

 いやまぁモンスターと人間を比べても意味ないと思うけど。

 F級って本当に雑魚判定な筈なんだけど、なんでアイツあんなに強そうなの?

 でっかい大剣に筋骨隆々の体。


「楽に死ね!」


 俺から見たら一瞬で接近して来たボスが大剣を俺ではなく、シェロに向けて振り下ろした。

 レベルの関係か?

 シェロは戦斧を持ってない左手で受け止めた。


「⋯⋯あれ?」


「ボスって喋るんだな。あ、悪いけどあれしたいから少し奥に行け!」


 左足でボスを壁の方まで蹴飛ばした。

 体をくの字に曲げて衝撃波を撒き散らして壁を少し砕いた。


「フーー、シェロ行っきマース!」


「それは、セーフか?」


 シェロは再び一瞬でボスに接近した。


「あ、待って! 斧は使うな! 斧は!」


 遅かった。

 壁諸共ボスの腹を切断し、生み出された風圧で肉塊を粉砕。

 粉になった体は直ぐに消滅して魔石がドロップ。

 残った風圧で破壊された。


「え、なんか言った?」


「畜生予想通りボスも粉砕された。ちょっと悲しい。金が⋯⋯。あ、ここはオーノーって言うべき?」


「止めとけ」


 ボスのドロップアイテムは悲しい事に粉砕されたが、報酬部屋の報酬は残っている。

 報酬部屋はボスを倒した後にボス部屋の奥に出現する。

 そこにボスコア、別名ダンジョンコアがある。

 他にも報酬や地上に機関出来る魔法陣がある。


「宝箱、無い!」


「うわ〜運気の意味ねぇ。2人合わせて既に100の運気なのに報酬無しって。あ、1周回って面白く成って来た」


「シャーない。ボスコアをランダム召喚に使って出るか」


「あ、その前にハンターカードに登録しないとな」


 お、忘れるところだった。

 ハンターカードをボスコアへとかざすと、ダンジョンのランクが記された場所の数字がゼロから一になる。

 これがFが10以上になると次のランクに行ける昇格試験が受けられる。

 Fランクが挑んで良いのはFランクのダンジョンだけだ。


「なぁ、シェロ」


「白色のボスコアの価値は7000円だ。ランダム召喚で一発賭ける方が良い」


「そうだな。ランダム召喚! 来い最高レアリティ」


「(どうせ出ないんだろうな)」


 今の最低レアリティはSになっている。

 そして、Sが出て来た。


「こ、これは!」


「マジかよww」


「白色の魔石⋯⋯」


 コイツ、最低価値のクセにランダム召喚ではSに含まれるのか。

 あぁ、錬金術してしまった。

 7000円を2000円に変えてしまった。


「はは」


「泣くな、笑え」


「お前はめっちゃ笑ってんな」


「予想の斜め上言ったからな! いやーどうせ最低レアリティが出る事は確信していたが、まさかボスコア以下になるとは思ってなくてな! あーははは!」


 殴りたい。この笑顔。

 なんだろうか。最初は静かな印象だったのに、数時間過ごしたらとてもフレンドリーだ。

 いや、元々こんな感じだったんだろうな。

 召喚前に何があったのか分からないが、コイツは体に一生残る傷を受けたんだからな。


「あ、もしかして召喚前の事考えている? あぁ、もしかして私の伝え方が悪かった? 別に一生モノの傷なんてないぞ」


「エスパー系のスキルって持ってたっけ? え? でも群がる男って」


「あぁ、あくまで精神的な物だからな性的なモノって。私の傷は腹と背中に残っている人体実験の名残りだけだよ。いずれ治るしな」


 そっか。なんか、良かった。うん。

 さて、帰るか!


「合計で6万円になります」


 やったぜ。


 家に帰るとシェロはそそくさと風呂を沸かしに行った。

 両親達が帰って来るのは3日後だ。

 それまでに、引越しの金を貯めよう。

 もしもシェロの事がバレたら、社会的抹殺を受け、人生ジッエンドになってしまう。


 晩御飯は適当に寿司を頼んだ。

 臨時収入が入っているからな。


「て、シェロってなんでそんな色々な知識を数時間で覚えた?」


「あぁ。器用高いしな。魔法実験の影響で記憶能力は倍増してんだよ。さらに人体実験の脳移植で半分はアカシックレコードドレイクって言うモンスターの脳だからな記憶能力はいいんだよ」


「いや、なんでステータス――ステータスは使えんだろ。一般的に」


「いや。ハンターの武器を作る職業があるだろ? あれって確かにその人の実力もあるけど、実はステータスの器用も作用されるんだよ。器用が高ければ高い程良い武器が作れる」


「え」


「て、ハンター基本本にあっただろ? ハンター関連に通ずる職業はステータスが自動的に作用される場合があるって。それに私は言うなれば召喚獣だ。いざとなれば自分の意思で能力は使える。例え、それが戦争だろうと」


「俺は昨日から兵器を飼っているようだな」


「言い方が気に食わんが、兵器程私は強くないぞ? ハンターランキングソロ総合上位の奴らには負けるだろ? 多分、私の実力は現在のままだとAランク、パーティだとCじゃない?」


「戦犯寄生クソビギナーハンターでごめんさない」


「せめてリアルラックが高ければ!」


 あれ? この子本気で嘆いてない? お、俺だって運が良い時あるんだぞ!

 一番くじでもお小遣い貯めて全部使って箱の中無くしてラスト賞を手に入れたんだからな!

 あれ? 俺も悲しくなって来た。

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