第2話

「おい、いい加減に喋れ! 話が進まん」


「え、あ、はい」


 さて、俺も状況整理をしよう。

 ダンジョンの特性でゴブリンの死体は消えて魔石となっている。

 魔石……無いな。もしかしてこの幼女の火力がやばすぎて砕けた?


「えっと、俺は伊集院、柊?」


「何故疑問形なんだよ」


 人と喋るの久しぶりなんだよ!


「で、右手首見せて」


 俺は言われるがままに右腕を上げると、裾が下がり模様が見える。

 え、キモ。


「なにこれ」


 いや、何となく分かった。

 これがあれか、ランダム召喚の契約って奴だな。

 幼女の方は左手首を見せて、同じような模様があるし。


「私はシェロ。ULG、破壊王。レベルは1」


「お、俺は、俺はな、俺は!」


「さっさと言えや」


 シェロが急に蹴って来るがあまり痛く無かった。

 手加減しているようだが、幼女に蹴られる男性(25歳)の気持ちを分かって欲しい。


 自己紹介を済ませて、数分間話したら普通に話せるようになった。


「契約ってすごいな。命令を強制させるなんてさ」


「まぁ、あくまで私の能力範囲内ならって話だけどな。性的な命令は無理だぞ〜」


「お前みたいな幼女に欲情するロリコンでは無いわ」


「誰が幼女だ」


 出口を目指して進む俺達。

 途中ゴブリンが出て来るが、シェロの手刀で真っ二つにされて魔石を落とす。

 魔石の回収の為に手刀だ。

 戦斧はどっかにしまっているらしい。

 ゴブリンの魔石は最低レアリティの白色だ。

 ポッケに入る分だけを回収する。


「にしてもシェロは強いな」


「まぁこれでもULGだからな。つか、ステータス見なかったのか?」


「見れるのか!」


「契約の証の模様に触れて私の名前を言えば見えるぞ」


 試して見よう。


「シェロ」


 ◇

 名前:シェロ(ULG)

 レベル:1

 ステポイント:0

 スキポイント:0


 筋力:6000

 敏捷:1000

 魔力:37

 忍耐:902

 器用:4649

 運気:53


 称号

 ・破壊王 ・奴隷


 スキル

 ・戦斧召喚[10] ・戦斧術[20] ・武術[6] ・契約の呪い


 魔法

 ・身体強化[5] ・火付与[3]

 ◇


「つっよ」


 絶対このダンジョンヌルゲーになったよ。

 あれだよ。もしもこれがラノベだったら「ハイハイ何時もの何時もの」で終わるあれだよ。


「魔力低いのに魔法2個もある」


「魔力は魔法等を扱う力であり、エネルギーとは関係ないぞ」


 そうなのか。

 無知って嫌だね。


「ここを攻略したらシェロって消えるの?」


「消えない。召喚したんだから責任取ってくれ」


「何も言い返せない。召喚される前ってやっぱり異世界から来たの?」


「異世界? と言うのは分からんが、私が元居た場所は最悪だったよ。女として扱われず、群がる男達、魔法の実験、人体実験、色々と味わった。時には仲良くなった人が目の前で――」


「それ以上はいいよ」


「助かる」


 だんだんとシェロの顔が暗く成って行くのを感じ、俺はシェロの言葉を止めた。


「出口が現れない」


 ダンジョンは下の階層に行く形だ。

 だから下に進む階段ってのもあるのだが、それも見当たらない。


「気が狂いそう」


「確かに。折角外に出たのに、仕方ない。試すか」


 シェロは戦斧を召喚して構え、壁に向かって振るった。

 ドゴーン、と轟音がなり、土煙が巻き起こる。

 再びシェロが戦斧を振るい土煙を吹き飛ばした。


「再生されている! 急ご」


 そして、俺達は壁を破壊しながら進み、出口を見つけて飛び出た。

 ゲート出現が認識されて無いのか、ハンター協会が来ていない。


「良かった。よし、帰るか」


「おー」


「え、待ってシェロも行くの?」


「……当然だろ。だって住むとこ無いし」


 どうしよう。

 あ、そう言えば今家族居ないか。旅行中だわ。


 と、言う訳で家に来ました。

 俺の部屋に入るとシェロは一言。


「くっさ」


「うるせぇ」


 シェロはトコトコと歩き、カーテンを開けて、掃除を始めた。

 俺も半強制的に手伝った。


 数時間かけて俺の部屋はびっくりするぐらいに綺麗になった。


「掃除機、洗濯機、この世界は凄い物ばかりだ」


「こっちから見てら魔法の方が凄いけどな」


「魔法は体内のエネルギーを使うからな。外的エネルギーで済む機械は凄い! 機械の仕組みを知る機会があると良いな」


「わざと?」


「何が?」


 なんか、この子無知っぽいな。

 パソコンの使い方を教えて俺はリビングに向かいブルーレイを見る事にした。


 風呂はシェロと俺の順に入り、俺は寝た。

 案外すぐにダンジョンから出たように見えるが、結構時間が掛かった。

 それにダンジョンに入ってステータス手に入れたから、一応ステータス獲得証明書を発行しないといけない。

 しなければ犯罪になるんだよな。はぁ、めんどい。

 隠しておこうかな? いや、怖いし止めとこ。


 俺はビビりだ。


 翌日、カチカチと音が聞こえてパソコンの方を見ると、シェロがパソコンをいじっていた。


「1日中してたのか!」


「まぁな。契約に寄ってであるマスターが寝ていれば私も寝ている判定になるんだ。あれだ、ご都合のアレだからツッコミは無しな。なんでステータスの恩恵ないのに契約の恩恵はあるんだよってツッコミ」


「いや、それは、契約は体質のような物だからだろ?」


「あ、分かったか」


 ランダム召喚はスキルだが、契約の証は体質のような物でステータスとは関係ない。

 ステータスはここでも確認出来る。


「そして、分かった事があるクソニートマスター」


「クソニート言うな」


「生産性の無い親の穀潰しをクソニートと言わずに何と言う?」


「余計な知識を」


「まぁ、結構な問題があるんだ。私、戸籍がない」


 戸籍がない。

 それは人権が無いのと一緒。日本人じゃないと同じ。

 ま、銀髪碧眼で日本人は難しいけど。

 そうか、戸籍無いのか。


「見た目的に少年法で守らているけど、戸籍無いと言え、マスターと私って似てないから下手したら誘拐扱いになるのでは? この場合何と言おうともマスターが悪になる」


「それは早急に何とかせねば!」


「あぁ! 衣食住揃ってんのに! 役所にGO!」


 俺達は急いで役所に向かう事にした。

 一晩でかなりの情報を集める事が出来たシェロは素晴らしいな。

 流石は器用4649だな。


「戸籍作ったらハンター登録だな」


「え、なんで。ステータス獲得証明書だけでいいやん」


「クソニートから脱出させる。私が基本戦うから気にするな」


 それはそれで気になるんだが。


「美味い飯を食いたいし、自分の部屋も欲しい。そう考えるとどうしてもこの見た目だと不便なんだよ。ネットで知識は手に入っても分からない事はあるし、それにハンターは上手く行けば稼げるぞ。マスターのユニークスキルは素晴らしいからな。多分。ゴブリンの魔石は1個2000円。ハンターは簡単に稼げるんだ」


 その分、命の危険性はあるし、大量にゴブリンと出会う訳じゃないだろうに。


「それに資格も学歴も無いマスターは所詮働いても日雇いが精一杯だろ? 勉強もしてないしな」


 否定できない!


「それだったらハンターで一山当てる方が夢があるだろ? それにそっちの方がオタ活しやすいぞ」


「だな。さっさと行くか」


「チョロ」

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