第82話
『みんな!ゆめなま所属の現役高校生アイドル、水晶ながめだよ!』
配信が始まってから、ながめは元気よく挨拶をしていた。
今日の配信はながめが最初に挨拶をする流れだったのだが、こんな口上だったか?
少なくとも高校生であることを前面に押し出していた記憶はないぞ。
『じゃあ次の現役高校生よろしく!!』
「どっちだよ」
俺もターバンも高校生だってことは知っているだろうが。まあ普通に考えたら俺か。
「俺は個人勢で現役高校生の九重ヤイバだ。今日は役立たずが1名いるのだが全力でキャリーしていこうと思う」
『役立たず……?もしかして……?』
「違うわ。残りの不登校系現役高校生だよ。ほら、挨拶しろよ」
『お、俺はげげ現役こここ高校生のののグググルルググルルタタターバンででです。よ、よろしくおお願いします……』
「ってわけでド緊張している現役高校生イラストレーターであり、九重ヤイバの生みの親でもあるぐるぐるターバンが役立たずだ。VALPEXの実力自体はそこらのVtuberと比べても高い方だが、全く機能しない前提で見ていてくれ。あとターバン、緊張しているのは分かるが不登校ってのは否定してくれ。お前毎日学校に通っているだろうが」
『し、仕方ないだろ緊張しているんだから』
推しと一緒の空間に居て、さらに配信中だから緊張する気持ちも分かる。
だが緊張していることを自信満々に話すなよ。
「はあ……というわけでこの3人で今日はVALPEXの配信を行うぞ。何かゲームを始める前に話しておくこととかはあるか?」
『大丈夫だよ。話したいことはゲーム中でも話せるでしょ』
「それもそうだな。じゃあ始めるぞ」
というわけで俺はマッチ開始ボタンを押し、ゲームを始めた。
相変わらずターバンは緊張していたものの、流石にキャラピックでミスすることはなかった。
『あの、ターバンさん。ずっと気になっていたんですけど、どうしてヤイバ君をVtuberにしようって思ったんですか?』
そうか。仕事用スマホでDOTTOの交換をしようとしたせいで身バレしたってとこまでは話したが、Vtuberになった理由までは話したことが無かったか。
『と、当時からVtuberの事が大好きで、俺も絵が描けるからVtuberになりたいと思っていたんですけど、中々踏ん切りがつかなくて。丁度身バレした男が居たんでVtuberとして活動してもらおうって思ったんですよ』
緊張しているため上手く話せない事を自覚したのか、ターバンはいつになくゆっくりと話していた。
「いわゆる人柱って奴だな。完全素人の俺がVtuberとして上手く行ったらターバンもVtuberとしてデビューしようとしていたってわけだ」
『実際に見事に成功したからデビューしたんですね』
『そういうことです』
『じゃあヤイバ君はその頼みに応えたってことなんだ』
「まあな。でも当時はVtuberになりたいってよりはターバンが出したVtuberになったらゲーミングPCを自由に使っていいという条件に釣られて始めたんだがな」
『ゲーミングPCを?』
「ああ。それも当時発売されている中でトップクラスの性能の奴をだ。PCゲームにあこがれていた俺としては断る理由なんて無かった」
『高校生が大金をポンと出せる物なんだ……』
「こいつは当時から天才イラストレーターとして人気だったからな。金だけはあるんだと。ゲーミングPCは俺が釣られた理由だが、それ以外の配信機材とか配信用の部屋とかも用意してくれたぞ。初期費用だけで100万くらいはかかっているんじゃないか?」
『今も高校生でデビューも同じってことは高1でそれだけのお金を……?化け物じゃない?』
とターバンの金銭事情に心底驚いた様子のながめ。だが、今のお前も相当お金を持っていることは分かっているんだからな。まあそれを言い出すと俺もそうだから指摘はしないが。
「だとよ、化け物。で今何してるんだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます