どうして、エリファスを殺したんだ
俺は反論した。「この寮は俺達にとっても大切なものだ。それに、俺はお前が信用できない」
「なぜだ!?」
ジャックが叫ぶ。「お前はエリファスを殺しておきながら、平然とした顔で俺の前に現れた。そんなヤツを信用できると思うのか」
「そんなことは関係ない」
ジャックはかぶりを振った。「俺はただ『悪魔』として、当たり前のことを行ったに過ぎない」
「『悪魔』として?」
俺は疑問に思った。「『悪魔』って何なんだ?」
「悪魔は悪魔さ」
ジャックは肩をすくめた。「『悪魔』は人間の欲望につけこんで、それを叶える代わりに魂を奪う存在だ。人間にとって都合の良い存在ではない。むしろ、害悪をもたらす者だ」「だから、エリファスを殺したのか?」
俺は核心を突いた。「そうだ」
ジャックはあっさりと認めてしまった。「俺はエリファスの願いをかなえるために、彼女の魂を奪った。そして、彼女を蘇らせるために、この学園にやってきた」
「そんなこと、できるはずがないだろ」
俺は呆れて言い返した。「エリファスは死んでしまったんだぞ。どんな魔法を使ったとしても、死者を復活させることはできない」
「できる」
ジャックは言い放った。「『悪魔の書』を使えば、俺はエリファスを生き返らせてみせる」
「『悪魔の書』だと?」
俺は眉をひそめた。「お前は、あの女に何をするつもりだ?」
「俺の望みをかなえるために必要なことだ」
ジャックが答える。「あの女の協力がなければ、俺の夢をかなえることは不可能だからな」「夢だと?」
俺は問い返した。「いったい、何の話をしているんだ?」
「俺は『悪魔の書』を使って、エリファスを復活させてやると言っているんだ」
「はぁ?」
俺は思わず聞き返してしまった。「お前、頭大丈夫か? エリファスはもう死んでいるんだぜ」
「そうだ」
ジャックが同意する。「だが、俺は『悪魔』だ。不可能を可能にする力を持っている」
「なんだよ、そりゃ」
俺はため息をついた。「お前の言っていることが、全然理解できないぜ」
「そうか」
ジャックは少し考えるような素振りを見せた。「だったら、実際に見せてやろう」
そう言って、ジャックは立ち上がった。「ついて来てくれ」
ジャックは歩き始めた。俺は慌てて追いかけようとした。だが、ハルシオンが俺の腕をつかんだ。
「どこに行かれるんですか?」
ハルシオンは不安そうな顔をしている。「あいつについて行くつもりですか?」
「まあ、そうだけど」
俺は正直に答えた。「でも、放っとけないだろ」「危ないですよ」
ハルシオンが心配する。「あの人、普通じゃないです」
「そうかもしれないけどな」
俺は言った。「俺には他に方法はないんだ」
「えっ……」
俺の言葉を聞いた途端、ハルシオンの顔が真っ赤に染まった。「私、ずっと先輩のそばにいますから」
ハルシオンは決意に満ちた表情で言った。「何があっても離れません」「そっか……」
俺は照れくさくなった。「ありがとう」
俺は礼を言った。「じゃあ、行こうか」
俺は立ち上がって、ジャックの後を追った。
2 ジャックに案内されてやってきたのは、旧寮の最上階にある一室だった。
「ここは?」
俺は尋ねた。「エリファスの部屋だ」
ジャックが答える。「ここに来るのは久しぶりだな」ジャックは懐かしむように言った。「お前がエリファスを殺した時は、まだ、ここに住んでいたのか」
「ああ、そうだ」
ジャックがうなずく。「エリファスは俺が殺したんだ」「お前が?」
俺は驚いた。「どうやって?」「魔法だよ」
ジャックはあっさりと答えた。「エリファスが殺された時、彼女は俺の目の前にいたんだ。だから、俺はエリファスを殺すことができた。魔法をかけて、エリファスを眠らせたんだ」「眠りの魔法か?」
俺は聞いた。「ああ、そうだ」ジャックがうなずいた。「俺は眠っているエリファスの身体を抱きかかえて、窓から飛び降りた。そして、そのまま旧寮を離れた」
「エリファスの死体はどうしたんだ?」
俺は質問した。「お前が旧寮に運び込んだのか?」
「いいや」ジャックは首を振った。「エリファスは俺が殺した後、すぐに死んだんだ。だから、死体は見つかっていないはずだ」「それなら、どうしてエリファスの部屋にお前がいるんだ?」
俺は尋ねた。「俺が運んだんだ」
ジャックが即答した。「俺はエリファスの遺体を旧寮の庭に埋めた。その後で、俺はこの部屋に戻った。エリファスの遺体は土の中で腐り始めていた。このままでは、俺の望む結果が得られなくなってしまう。だから、俺はエリファスの遺体を掘り出して、蘇生の魔法をかけた。その結果、エリファスはこうして生き返ったというわけだ」
「エリファスは本当に死んだのか?」
俺は尋ねた。「エリファスは自分で死を選んだんじゃないのか?」
「違う」
ジャックは否定した。「エリファスは自ら命を絶つような真似はしない。彼女は自分の意志で行動するような人間ではなかった」
「どういう意味だ?」
俺は尋ねた。「エリファスは誰よりも優しい女性だった。俺が彼女に近づいた時も、彼女は俺を受け入れてくれた。彼女は俺のために、様々な便宜を図ってくれた。そんな彼女に対して、俺は愛しさを感じていた。だからこそ、彼女は俺を愛してくれるようになったし、俺も彼女を好きになったのだ」「つまり、エリファスもお前のことを憎んでいなかったってことなのか?」
俺は確認した。「そうだ」
ジャックが肯定した。「しかし、彼女は自分が死ぬと分かっていても、自殺を選ぶような人間ではない」「それは分かったよ」俺はうなずいた。「だけど、エリファスが自殺したというのは嘘なんだろ?」
「エリファスは自殺した」
ジャックが断言した。「あの女は俺が『悪魔の書』を手に入れて、エリファスを復活させることを望まなかったんだ。エリファスは俺と『悪魔の書』が接触することを恐れた。だから、自ら命を断った」「それって、エリファスが死んだ原因と関係あるのか?」
俺は尋ねた。「ああ、そうだ」
ジャックはうなずくと、話を続けた。「エリファスが死んでしまった以上、『悪魔の書』を手に入れても、俺は何の意味もない。だから、俺はエリファスの願いをかなえることにした」
「それが、あの幽霊騒動か?」
俺は尋ねた。「そうだ」
ジャックはうなずくと、言葉を継いだ。「エリファスの望みは『悪魔の書』を手に入れて、その力でこの学園を支配できるほどの力を欲していた。だから、俺は『悪魔の書』を手に入れるために、エリファスを利用した」
「お前が『悪魔の書』を手に入れたら、エリファスの願いをかなえるつもりだったのか?」
俺は尋ねた。「そうだ」ジャックがうなずく。「エリファスの願いを叶えた後は、俺の邪魔をする奴は全員殺すつもりだった」「なんでだ? どうして、そこまでして『悪魔の書』を手に入れたいんだ?」
俺はジャックに問いかけた。「どうして、エリファスを殺したんだ?」「エリファスが邪魔をしたからだ」
ジャックが即座に答えた。「エリファスが俺の計画を妨害しなければ、俺は『悪魔の書』を手に入れることができていただろう。『悪魔の書』さえ手に入れば、エリファスを生き返らせることもできたんだ」「それで、エリファスを殺せば、エリファスの望みをかなえられると思ったのか?」
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