ランチェスター戦略の応用

 最初にこの作品で書いた野村克也氏のプロ入り時のエピソードですが、その構図というのは、まさに、現在では経営理論のひとつとなっているランチェスター戦略というものの基本的な考え方と一致しているのです。

 それは、要するに、こういうこと。


弱者は、競争相手の多い場所では戦ってはいけない。

勝てる場所で、確実に勝つ。

そもそも、強者とまともにぶつかっても、勝てるわけがないから。

だからこそ、競争相手の少ない場所で、やるべきことを特化して取組む。


 まあ、こういう感じかな。

 私が小説を書こうと思ったのも、基本的には、それ。

 ラノベなんか読みも書きもしないし、何だ、転生物が流行っているらしいが、そんなことは一切見向きもしません。

 競争相手も多く、私自身がそんなもの(失礼だけど)に興味もないし、書きたいとも読みたいとも思わんからな。それもあるけど、流行っているということは、「競争相手が多い」こと以外の何物でもない。

 ならば、そうでないところで勝負しないといけない。


 以前述べた通り、鉄道紀行にしても競争相手は多いし、私自身の独自性をと言っても、それを鉄道知識と自分の経験云々で賄っていけないこともなかろうが、それで支持され得るかどうかはまた別物。地方在住というのは必ずしも悪いとは言わないが、それは実際、ハンデにもなることではある。さらには、ノンフィクションに至っては、以前にも述べた通り、関係者への取材やら何やら、書くこと以外の仕事が多くなり、とてもではないが、読むのはともかく、書く方はというと、おいそれと参入できるとも思えない。かなりハードルが高いなということ。実際こちらにも、競争相手は多くいますからね。その人たちと伍してやっていけるかと考えたら、そうそう甘くもないし、こちらはそれこそ、地方在住がハンデとなるのは間違いない。


 ということを総合して、小説に入ったわけだけど、恋愛ものとか何とか、そんなものはこれまた競争相手も多いし、わし自身好きでもねえから、書けんわ。

 となれば、わしの経歴上、これというものがあるかと言えば、ないわけでもない。

 それが、「養護施設出身者」という肩書ね。そして、それを裏写する経験。

 これは、そうそう誰でも書けるわけじゃない。養護施設(現在の児童養護施設)という場所は、ある意味「異世界」の要素も持ってはいるが、根本的にこの世のものではないというほどの「異世界」でもない。

 それなら、書かない手はないだろう。

 そして、それをシリーズ化して、その内部だけでなく、外部との接点も含めて書いていくことで、独自の立ち位置ができるではないか。


 それが、今書籍化している「小説養護施設シリーズ」ってことなのね。

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