27 ゴブリンキング
最初に見たレッドキャップ達の大きさは120㎝程度の大きさだった。それが、今や2mと大きくなってルークの背丈ぐらいになってしまった。姿が大きくなっただけでは無い。パワーもスピードも最初の頃に比べると比較にならないほどだ。
『何だか厄介な相手のようだな。ってかオーガクラスの強さじゃねぇか』
「アザエルよ。余裕をかましているのも今の内だぞ。そいつは、進化する。どれだけ進化するのか楽しみだな。ふふっ、はははっ」
何だコイツは、進化するのか? 進化するのは何かが乗り移るかのようだ。しいて言えば、コイツの仲間を倒すと倒した相手の力が乗り移っているのか?
斬ると分散するタイプの逆バージョンかも知れない。どうやら偶数だと倍になるように強くなってしまう。厄介だ。厄介過ぎる。
ミノタウルスの野郎、こんな厄介なモノをどこから見つけて来やがったのか?
『面倒なヤツだ。まさかゴブリン如きに俺様のギヤを一段階上げるとは思わなかったぜ。いいだろう、目障りな奴は早めに倒して、後ろのミノタウルスの野郎をぶん殴ってやらないとな。掛って、来い!』
するとルークは、グレーな体から真っ白な体へモードチェンジした。頭のてっぺん、髪の毛から肌の色まで真っ白に変わってしまった。体には白く薄い
しかし、背中の翼の色は漆黒の黒。違和感丸出しだ。
ルークは悪魔としての第三形態に姿を変える。
その姿にミノタウルスと進化したレッドキャップ達は、驚きを隠せない。
「ほぅ~堕天使の姿になったのか。その姿を見るのは久しぶりではあるな」
『
呟くミノタウルスを他所に、ルークは右手を上げる。
右手を上げた瞬間、何も無い空間から取り出すように握られていたのは、燃えさかる長剣。魔剣レーヴァテインだ。
すぐさま身近にいた一体のレッドキャップに、ルークは斬りかかる。
燃え盛る炎を帯びた斬撃が襲い掛る。
その様子を見ていた、もう一体のレッドキャップが、仲間を庇おうと大鎌を振り上げ飛び込んで来た。
ルークの放った炎の斬撃の軌道上に、二体の進化したレッドキャップが並ぶ。
『
「「ギュ、グワッ……」」
成す術もなく二体のレッドキャップは、炎の斬撃に包まれ消えてしまった。
それを見ていたミノタウルスに、笑みが浮かぶ。
残りの二体のレッドキャップの頭上に、又何かが降り注いで来た。
すると、更に二体のレッドキャップ達に異変が起こる。大きさは変わらないが、身体に血管が浮き上がる様になり、筋力も大幅に変わる。
その姿は少し前にオーガが
更に二体のレッドキャップの持つ大鎌の色が紅く変わる。ルークの持つ魔剣ほどでは無いが、黒から紅に変わると存在感が大幅に上がる。
『――チッ!しまった。コイツ等は又進化しやがった。ってか、あと二体か。同時に斬らないと又、進化するのか』
レッドキャップの数が四体から二体へ減った事で、更なるパワーとスピードアップとなってしまった。
ルークのように翼を持っていないが、大鎌を振りかざし襲い掛かる速さは、最初の頃と比べると雲泥の差だ。
『チッ!やはり長剣で無くて槍のほうが良いのか?レーヴァテインを魔槍に変えた方がいいのか』
ルークはそう言いながらレーヴァテインを長剣から槍へと姿を変えた。
二体の大鎌を持つ進化したレッドキャップを相手に、槍に変化したレーヴァテインを縦横無尽に振り回す。リーチが伸びた分だけ攻撃力が上がる。
『そこだ――!』
ルークの槍と変化したレーヴァテインが、二体の進化したレッドキャップを同時に貫こうと迫る。
それを邪魔するかのようにナニカが魔槍の前に飛んで来た。
「危ない、危ない。寸での所でお楽しみが消えそうであった」
『クッソ、邪魔するんじゃねぇぞ』
ルークの魔槍の攻撃を危惧してミノタウルスが戦斧を投げつけたのだった。
かろうじて突きの軌道修正を行うが、狙った場所と勢いは変えられてしまった。結果、一体のレッドキャップのみを串刺しする。
「ギュ・・・ウ・・・・・・ワ・・・ゲゲ・・・・・・」
『――ッチ!二体同時には行かないか。面倒だ。全く面倒だ』
突きに炎の魔槍の威力を乗せて、腹を突かれたレッドキャップは、大きな穴を開け前のめりに崩れ落ちる。
そして予想通りに倒れたレッドキャップから何かが立ち上がり、生存している一体のレッドキャップへと舞い降りていく。
「――ヴォォォオオ――――!」
雄叫びをあげると身体が又変化する。
背丈は3mになり、雰囲気はガラリと変わる。全身は光沢のある赤銅色の筋肉マッチョ。両肩から腕が生えてある。四本腕になってしまった。
その四本腕にはそれぞれ大鎌が握られている。
更に特筆する箇所はもう一つある。進化する前のレッドキャップ達は額に小さな一本角を持っていたが、最終進化したこのレッドキャップは額の一本角は大きく伸び、更には二本の角が直線上に並んで三本の角がある。まるでモヒカン刈りの様に連なる三本の角。明らかに多数の角持ち。なんだ、コイツは? オーガですら二本角なのに、これはかなり上位種の鬼だ。
「ハハハッ……。遂に最終のゴブリンキングまで進化したか。というか、本来の姿に戻ったと言う方がいいのかもな。そいつはオーガよりも強いぞ。
……んっ? 肌の色が黒じゃない。なんだ、どうした……?」
レッドキャップの最終進化に歓喜した様子のミノタウルスであったが、何か違和感を感じた。
おかしい、何か違う? 肌の色が漆黒じゃ無くて赤銅色だ。何だ?本来の姿になにか違和感があるな。まぁ、いい。どうにかなるだろう。
四本腕にそれぞれの大鎌を持ち構えルークに迫るゴブリンキング。
ルークは魔槍レーヴァテインを構え相手に向かって飛び込んでいく。
四本腕からの同時攻撃を掻い潜り、魔槍レーヴァテインで突く、薙ぎ倒すように払う。そして絡めとるように動かし、隣の大鎌にぶつける。0.001秒のほんの僅かな一瞬の時間で攻撃と防御を行っていく。
するとゴブリンキングは自らルークとの間合いを取った。
数歩後ずさると、腰を落とし大鎌を構えた。
両肩の上に生えた左右の腕の大鎌を、ルークに対して前に回転するように外側に振り回す。普通に生えている両腕の大鎌を逆回転の様に内側に振り回す。
すると四つの竜巻が発生し、それぞれが牽制しながら猛烈な回転を起こす。
それはレオンの起こす爆炎の竜巻より、かなり凶悪な竜巻だった。
ルークを飲み込まんと勢いをつけて襲い掛かる――。
『厄介な相手だ……。まさか、ゴブリン如きがここまで強くなろうとは……。
侮っていたら苦戦しそうだ。
チッ、仕方が無い。ここで出し惜しみをしてたら決着が長引きそうだ。
ルークは腰を落とし魔槍レーヴァテインを構え、襲ってくる竜巻に向かって突くのでは無くて、石突き辺りを両手で掴み振り抜いた――。
戦いのステージは益々ヒートアップしていく。
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